第一章 閑話
ボクはアンタたちのことを絶対に許さない
なにがあったとしてもね
桜水高校では学年ごとにうち履きの色が分けられている
一年生が赤、二年生が緑、三年生が青、そして学年が上がる度にこのうち履きをその学年の色に変えるのがある種の伝統となっている
さて蚊帳ノたちが音楽室に着いた少しあと生徒会室には二つの人影が伸びていた
一人は赤いうち履き、もう一人は青いうち履きである
これはある種当然のことだこの日、二年生は選択授業の説明会で他の学年よりも一時間長く授業を受けている
本来この生徒会に集まるのは三年生のみ…それも会長以外全員が他の部活と兼任しているためこの日の活動はないはずだった
そして入学したてで部活の入部もまだな一年生がいるのか
留年? 違う 呼び出された? 違う 生徒会の体験? これも違う
彼女は入学早々に生徒会に所属した
理由は詳しくは話さなかった
しかし任せた雑務は的確に行ない、会計や書記の仕事まで手伝い始めた
入学から一週間どころか三日も立たずにその頭角を表した
そして彼女は一日前、音楽部と生徒会の言い争いのあったあの日
生徒会側としてたしかにそこにいたのだ
雛鳥詩草それが彼女の名前である
「これは?」
現生徒会長、大道寺司は手渡された写真を片手に難しい表情をしていた
「一年生の生徒が数名、音楽部の体験入部に行ったみたいですね~」
A4のコピー用紙に雑に印刷されたその画像には確かに三人の生徒が写っていた
「だがこれだけでは証拠のならんぞ」
「たしかにそれだけだとフツーに言い逃れできちゃいますねー でもこの音楽室の鍵の持ち出し記録、使用目的が音楽部(体験入部)ってなってるこれってあきらかクロじゃないですかー?」
どこでくすねたのか用務員室の鍵の持ち出し記録のコピーまで待っているとは
生徒会長としてやや引いている…
「それで? どうしろと?」
「やだなー 女の子の口からそんなこと言わせるんですかー?」
特に反応はなかった
「はあ… 音楽部の活動停止ぐらいできませんかねぇ~」
ため息まじりに呟かれた
「できないことはないだろう だが・・・」
「なぜそこまでする?」
入学してまだ日が浅い、そんな彼女がなぜ音楽部を敵視するのか分からなかった
正直、彼女はそこまで正義感が強いようにも見えない、風紀や校則にも無頓着
なぜそこまで…
「まあボクはまだ自分のことを話すつもりはないですよ」
先ほどまでの軽薄な口調や態度は消えどこか冷たく語った…
それはまるで〇〇〇のようだった




