第一章 幕間
本当はこの時、すごくドキドキしていた
でも勇気をだしてよかったって
そう思ってる…
入部届を提出した私たちはそのまま帰宅することになった
ほんとは一人で帰るつもりだったけど真凛さんも同じ電車なので一緒に帰ることに…
しかも綾乃さんも駅までついて来るって言われて……
私は今、二人の間に挟まれていた…
「まさかほんとに入部することになるとはね~」
「だね~ まあ私ははじめから入るつもりだったけど… 真凛ちゃんと蓬ちゃんも良かったの?」
「まあ私もほとんど決めてたし」
「えと 私も はい……」
二人の会話に置いて行かれないように相槌を打つので精一杯だった
「それより バンドどうする?」
「あ~ それ アタシもほんとどうしよっかなーって思ってた」
あれ? 私と綾乃さんと真凛さんで組むんじゃないの? もしかして残酷な陽キャジョークだったりする? 陰キャをハブる的な ヤバい泣きそうになってきた
「ドラムと」
「ベース」
交互に二人が囁いた
あ、よかった~ そっちか~ 残りのパート決まってなかったもんね~
「でも他の子たちバンドとか興味ないらしいし…」
「まあそこは追々じゃない? てかさ今更だけどどーせバンド組むなら呼び捨てタメ口にしない?」
え? 流石に呼び捨ては…… 今まで呼び捨てにしたことあるの弟だけだし…
タメ口もハードル高いな…
「それもそうだね じゃあ今度から真凛と蓬って呼ぶね」
「アタシも綾乃と蓬って呼ぶから」
順応性高いな!? さすが陽キャというかなんというか
「蓬は? アタシたちのことなんて呼んでくれるの?」
じっと真凛さんが見つめてくる…
「このまま綾乃さんは寂しいかな…」
綾乃さんまで見つめてきた!?
「あ、えと 真凛……さっ 綾乃……さ ……ん」
「まだ固いな~」
綾乃さんじゃなくて綾乃がジト目で見つめてくる…
そんな風に見つめられてもな… なんかまた心拍数が上がるし…
「うーん まだ距離がある… ね、二人とも明日はヒマ?」
真凛さんじゃなくて真凛が何かひらめいたように問いかけてくる
「ヒマだよ~」
綾乃即答… 用件も聞かずに言えるあたり凄いな… 用件が気乗りしなくても断れるんだろうな…
「私は……一応、予定はない…です。」
「あーほら敬語になってる~」
「すみません…」
「いや 謝らなくていいんだけどさ、やっぱアタシたちなんとなくまだ距離が遠い気がするから一度、距離を縮めたいと思って…」
これ以上どう距離を縮めろと!? 心の中で叫んだ
「だから明日、三人で出かけない?」
「あ、いいね そうしよー」
またも即答する綾乃…… もはやその決断の速さが怖い
「蓬も良い?」
「えと あ、はい 私なんかで良ければ… お願いします…」
「じゃあ時間と場所は後でLINEするね」
真凛がそういい終ったタイミングで電車が来た
私と真凛は駅の改札を通ろうとして・・・振り返って綾乃に手を振る
「また明日ね!」
「えと また・・・明日・・・」
綾乃の声にこだまするみたいに声を返した
「んじゃまた明日! ダブルデートよろしく!」
真凛は笑顔でそういった
ん? デート? デート デート デート デート デイト デート デート
こうして私の人生初デートは幕を開けたのだった




