第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第五十五節
そして 魔女の口づけは夢への誘い
お風呂からでた後、私は大きな広間に案内された
ちなみに今着ている服は脱衣所に用意されていたものだ
坂本さんが選んでくれたらしいけどサイズもぴったりだし着心地も良いしなによりかわいかった
ファッションなんて碌に詳しくない私でも分かるような高級ブランドのタグが見えた気がしたけど見なかったことにした…
「お待たせ致しました」
数回のノックのあと坂本さんが新幹線の移動販売みたいなカートを引いて入って来た
それから私の目の前に料理が運ばれてくる
「あ、ありがとうございます…」
サラダかな…
とりあえず見たこともないし名前も分からない料理に困惑する
けどいいにおいがするしすごく美味しそう…
私と向かい合うよに座っていたメイリンちゃんにも同じ料理が運ばれている
「さ、頂きましょうか」
「え、あ、うん… いただきます…」
すぐそばに置かれたナイフとフォークを手に取る
どこからどうみても純日本人の私にはこういう場所での作法とかテーブルマナーとか分からなくて胃が痛くなりそうだったけど…
昔、少しだけナイフとフォークの使い方を教わったことがあったからその記憶を辿ることにした
「おいしい…」
ド緊張で味も分からなくなるかと思ったけど意外にも味覚はしっかりしてた
静かにそして丁寧に食べ進めるメイリンちゃんと対照的に思わず料理の感想を口にしてしまい恥ずかしくなる
それをみたメイリンちゃんは
「蓬に喜んでもらえてなによりデス 坂本の手料理は一流のシェフにだって引けを取らないですからね」
「坂本さんが作ってくれたんですね すごくおいしいです」
坂本さんなんでもできるなと関心してしまう
けれど坂本さんは一礼して痛み入りますとだけ言った
それからテーブルには順番に料理が運ばれてきた
スープやパン、ハンバーグみたいな肉料理から魚料理にデザートまで
見たこともないような料理のオンパレードに戸惑いながらもどれも本当においしくて…
全て食べ終わる頃には満腹になっていた
「それでは私はこれで失礼致します」
「ええ、ご苦労さま 気を付けて帰ってね」
「はい お嬢様も何かありましたらすぐにお呼びください」
食器を片づけた後、坂本さんはホテルを後にした
メイリンちゃん曰く坂本さんはこの近くのマンションから毎日通っているらしい
二人きりになった空間は改めて見るとずいぶんと広く感じた
「そろそろ寝ましょうか?」
「あ、うん…」
時刻は二十一時、明日は土曜日で休みだしもう少し夜更かしするものだと思っていた
「今日はありがとうございました」
寝室に入るとベットに横になったメイリンちゃんは呟くように言った
全身から力が抜けたような彼女も瞼は重そうでどうやら本当に眠そうな様子だ
「ううん こっちこそありがとう その…ごはんとか」
メイリンちゃんに毛布をかけながら声をかける
目を閉じて意識も虚ろな彼女の顔はとても愛おしくて
「メイリンは… 蓬に会うために… 来ました…」
「うん…」
「蓬は メイリンのコト… やっぱり忘れてたケド… それでも優しくしてくれて」
「それは… ごめんね」
まるで寝言みたいに囁く彼女に私は答える
思えばたった一日で色々なことがあったと思う
いきなりメイリンちゃんに結婚しようなんて言われた時は驚いたけどこうして一緒に過ごしてみると色々私とは違う所も多いけどその本質はどこにでもいる普通の女の子で…
「っちょ メイリンちゃん!?」
一つしかない大きなベットに入るべきか悩んでいるとメイリンちゃんは私の腕を掴んで引き入れた
「蓬… 大好きです…」
耳元で囁いた彼女は私の身体を掴んで離さなかった
そして
左の頬に口づけをした…
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ」
それから声にならない声を押し殺してベットの中で悶々とした時間を過ごす
気が付いたときには深い眠りに落ちていた




