第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第四十九節
みつけた…
「ちょっとまった!」
真凛の叫び声が部屋中に響き渡った
「真凛!?」
「蓬… よかった…」
飛び込んできた真凛はそのままの勢いで蚊帳ノに飛びついた
思わず後ろに倒れるけどすぐそばのソファーに受け止められた
「ま、真凛…」
「…」
「心配かけて、ごめん…」
真凛に声をかける
それからしばらくして真凛は顔を上げて言った
「バカ… スマホぐらい持ってってよ… 連絡できないと心配になる…」
「ごめん…」
「…うん」
自分の薄い胸に真凛の顔が押し付けられる
メイリンちゃんの時と同じ状況だけど自分より背の高い真凛は力も強くて起き上がれそうにない
「なんか、アイツの匂いがする…」
「あ、えと… それは…」
「それはもちろん メイリンのことを蓬が慰めてクレたカラです」
感動の再会も束の間、二人の会話にメイリンが入ってきた
「慰めてもらった!?」
「なんですか? 別にメイリンと蓬はナニもしてませんヨ」
なぜか顔を真っ赤にして問いただす真凛に対しメイリンちゃんは言った
「てかアンタ、なにしれっと蓬と付き合おうとしてんの!?」
真凛はメイリンちゃんへの(物理的な)距離を詰めて叫ぶ
真凛の突入で忘れかけていたさっきまでのやり取りを思い出して我に還った
よくよく考えたらノリと勢いでとんでもないことを言おうとしてたことに気が付いて赤面する
そんな蚊帳ノをよそに二人の口論は止まらない
「嘘だとしても先に恋人になろうとしたアナタには言われたくないデスね」
「それはアンタが結婚とか言いだしたからでしょ!?」
「結婚の約束はずっと昔からしてマシタ」
「蓬が忘れてたんだから無効でしょ!」
二人のやり取りを見てたおかげか変に冷静になってきた…
「あのー二人ともとりあえず落ち着いて…」
とりあえず二人を落ち着かせようと声をかけるけど聞こえていないみたいだった…
私が一人であたふたしてたら真凛のスマホが鳴った
「ヤバっ 廻兎からだ…」
真凛は慌てた様子で電話に出た
「もしもし あーうんとりあえず蓬には会えた… え、ああうん…」
電話の相手は天城くんらしい
真凛はさっきまでとはうってかわり落ちつた様子で電話している
「あー分かった じゃあすぐ戻るから」
「電話、大丈夫?」
スマホをポケットにしまった真凛に声をかける
真凛は私のほうを向き直すと
「あーうん なんかそろそろ帰らないとみたい…」
「そうなんだ じゃあ」
私もと言いかけた途端、メイリンちゃんに腕を捕まれた
「蓬はまだ残りマス!」
「はぁ!?」
「へ!?」
メイリンちゃんの放った一言に私と真凛が同時に叫んだ
「あのー メイリンちゃん?」
「蓬のことはメイリンが送って行くからダイジョブです!」
メイリンちゃんは胸を張ってそう言った
もちろんここでメイリンちゃんの好意を無碍にするのは大変心苦しいけどこのままホテルに留まることになったらどうにかなりそうだった
メイリンちゃんの一言に再びスイッチが入ったらしい真凛は一歩前に出ると
「大丈夫って… 時間も遅いし蓬の家もここから遠いからアタシが送って行く」
「そんなこと言って大丈夫なんですか? 車の広さとか」
「っ…」
一瞬、嫌味にも聞こえるメイリンのその発言は的を射ていた
桂木さんの運転する車には色々な機材が積まれていて廻兎と真凛を乗せたら定員ギリギリだった
そんな状態で蚊帳ノまで乗せられる可能性は始めからゼロだったのだ
「あ、えと…」
「ごめん蓬、よく考えたらアタシたちの車定員オーバーだった」
俯きながら呟いた真凛はとぼとぼとエレベーターのある扉のほうに向って行く
「あ、ちょっとまっ…」
「蓬の荷物、おいてくから じゃあまた学校で…」
呼び止めようとした声も届かず真凛を乗せたエレベーターの扉が閉まった




