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第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第四十七節

想いは擦れ違う

「……」

「……」

「…真凛ちゃんてさ」

車内に流れた沈黙を破るように桂木さんは声をかけた

「はい」

「廻兎君とはほんとに付き合ってないの?」

「ええ、まあ」

本人がいる前で大げさに否定するのもどうかと思ったので静かにそう言った

「ふーん ほんとに付き合ってないんだー」

桂木さんはどこか残念そうに言った

空気が悪いから恋バナで流れを変えるつもりだったのかそれとも同じバイト先の廻兎の弱みでも掴みたかったのか

いづれにしてもどうして桂木さんがそんなことを聞いたのか分からなかった


「桂木さんは… 廻兎とはコスプレ仲間…なんですか?」

真凛も沈黙は苦手だから話題を振ってみる

それと単純に二人の関係に興味があったのもあった

「んー そうだねー もともと廻兎君とは共通の知り合いがいてね コスプレイヤーとして活動してると変なストーカーとかアンチが付くことがあるんだけどその子に相談をしてたんだよね」

「共通の知り合い…」

「そうそう 探偵…というよりはスパイに近かいかな ストーカーとかの対応にも手慣れてて色々相談にのってもらってたんだー」

桂木さんは懐かしそうに語っている

真凛からしてみればコスプレもストーカーもましてや探偵やスパイだって現実離れしてる

でも桂木さんの口びりからして冗談や作り話には聞こえなかった

「んで、ちょっとトラブルに巻き込まれて大きめのコスイベをすっぽかしそうになった時に代打で廻兎君に出てもらったってわけ」

「廻兎がですか!?」

「そう! 最初はめっちゃ嫌がられたんだけど最後は引き受けてくれてさ そしたらびっくり!なんかバズって気が付いたら私より人気でたんだよねー」

意外過ぎる廻兎の過去に驚いたけど廻兎ならやりそうだなとも思った


「桂木さんのためにコスプレするなんて廻兎らしいですね」

「そうだねー 惚れた?」

「惚れませんけど!?」

一々くっつけようとしてくる桂木さんの思惑は謎だ

でも本気でツッコミを入れた私を見て桂木さんは冗談だよと言いつつ

「だって真凛ちゃん、他に好きな子いるでしょ?」

そう言った


「なっ」

「なんでわかるかって? まあ今までの表情とか見てればなんとなくねー 今探してる子かな?」

言葉にならなかった真凛の問いを引き継ぐようにして桂木さんは言った

「会ったばかりなのにそこまでわかるなんて…」

「ふーん やっぱそうなんだー」

桂木さんの言葉で気が付いた 彼女は鎌をかけていたのだ

始めから確証があったわけではない

確証がないから探りを入れられていた

手のひらの上で踊らされてるみたいで癪に思いつつ後部座席の廻兎はヘッドフォンをしているから聞こえていないみたいだからヨシとした


「でもまあ 廻兎君の言う通りか…」

「え?」

「なんでもない こっちの話だよ」

桂木さんの表情まではよく見えなかった

どれからしばらくして廻兎が口をはさんだ

「次の信号、右で それから国道に入って下さい あ、車線は左でお願いします」

「了海、そのあとは?」

「道なりに進んで三つ目の信号を左折、その先でリムジンが停まってるみたいです」

「オッケー 飛ばすよ!」

そう言った途端、車の速度が上がった

たぶん規制速度を大きく超過してるはずだ

「大丈夫ですかこれ!?」

「大丈夫、大丈夫! 次、捕まったら免停だけどまあ捕まらないっしょ}

謎の自信とドヤ顔で応えながら車のスピードは加速する

まるでアトラクションのような勢いで車は車線を交互に変えながら進んだ

そして

「せーのっと」

大きく回したハンドルと連動して車体が大きく右折する

スピードを落とすことなく車は直進、一つ、二つと信号を過ぎて行く

「もういっちょ!」

さっきよりも大回りの軌道とハンドル操作で左折、それから車は猛スピードで直進した

「その先にあるバカでかいホテルです」

「りょ!」

廻兎が示したホテルの前に急ブレーキ気味に車が進入

そしてようやく停車したのだった…





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