イライザ視点:取り違えた世界
わたくしは、ずっと思っていたの。
どうして、お姉様ばかりなのだろう、と。
エーデルシュタイン家の子どもは、みんな同じ血を引いている。
なのに、生まれた順番が違うだけで、すべてが決まってしまう。
伯父様は兄だから侯爵になり、
お父様は弟だから子爵になった。
ただ、それだけのことで。
お姉様は侯爵令嬢で、わたしは子爵令嬢。
そんなのずるい。
幼い頃から、その言葉が頭から離れなかった。
お母様も、先生も。みんなが言った。
「リリアーナ様を見習いなさい」
でも、同じ口でこうも言うの。
「子爵令嬢なのだから、わきまえなさい」、と。
おかしいでしょう?
お姉様を見習えというのなら、わたくしにも同じものを与えてくれればいいのに。
きらきらしたドレス。
丁寧な教育。
周囲の賛辞と、惜しみない期待。
素敵な婚約者だって。
全部、お姉様ばかり。
本当に、不公平だと思った。
だって、頑張ったところで、お姉様と同じものなんて、最初からもらえないんだもの。
それなら、どうして努力なんてしなければならないの?
わたくしは、そんな世界が、どうしても許せなかった。
ある日、王家からの使者を名乗る人が、子爵家にやってきた。
お姉様を王子妃にしたいから、お父様に協力してほしいと。
代わりに、わたくしを侯爵令嬢にする手助けをすると。
お父様はとても嬉しそうだった。
「私が長男だったら、今頃侯爵だったのに」
「お前が男だったら、後継に推せたのに」
それが、お父様の口癖だったから。
その日、こう言われたの。
「イライザが女でよかった」
その瞬間、胸が熱くなった。
初めて、わたくしのことを必要とされた気がしたの。
お姉様の代わりに、侯爵令嬢になる。
そう思ったら、苦手な勉強だって我慢できる気がしたわ。
せっかくの王子妃のお話だったのに。
伯父様は断ってしまった。
理由は、王子妃のお役目が重いから。
……意味が分からなかった。
でも親族の皆は言うの。
王子妃の打診があったこと自体が名誉だ、お姉様は素晴らしい、と。
王子様と同い年で、侯爵令嬢で。
だから、声をかけられたんじゃないの?
お姉様って、存在だけで褒められるのね。
わたくしとは大違い。
修道院に行かされると聞かされて、ありえないと思った。
わたくしは間違っていないのに。
おかしいのは、みんなの方なのに。
祈りの場所で、一生を過ごすなんて、嫌。
だから、一生懸命に他の道を探したの。
その時思い出したのは、ミレーユのこと。
お姉様の側近を選ぶお茶会で、あの子は騒ぎを起こした。
「妹じゃなくて、わたくしを選んでください!」って。
大問題になって、実家から勘当されたと聞いたけど。
後で聞いたらあの子、養女縁組して今は子爵令嬢になってるって。
……そうよ。
わたくしも、どこかに養女にして貰えばいいんだわ!
伯父様でも、手を出せない家格のところに。
それならば、やはり、公爵家。
わたくしは、迷わなかった。
ヘーゲル公爵家へ行くことを、決めたの。




