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遊楼可丹<ゆうろうかたん>エピソード04 リアムの完全詠唱<アーク・オーヴァチュア>

視点:リアム

魔導を世界に干渉させるためには自分の意思をしっかり持つことが大前提なのだと言われました。


だから僕たち魔導士は魔導を発動させる前に深い眠りのような世界に意識を落とします。

その時間の流れはゆっくりに感じたり、早く感じたりと人それぞれだとも聞きました。

僕はきっとゆっくりなんでしょう。


だってモンスターも仲間も、僕以外は止まって見えるぐらいだから。


こわい。

守りたい。


いやだ。

逃げて欲しい。


逃げたい。

生きたい。


気持ちがてんでバラバラでとても魔導を使える状態じゃないみたい。

それでもいつもの世界を見れているのだから、きっと成長した結果なんでしょうか。


思えば僕はいっつも自分の気持ちに蓋をして周りに合わせていたように思う。

でもいまはそれでいいと思えるのは、きっと自分の気持ちを受け入れてくれる仲間たちに会えたから。


だからかな、こんな状態でも驚くほど落ち着いて魔導を発動できるのはーーー。


うん、最後に見せてやろうよ。

こんな僕だって最後までみんなを守れるってことを!!


いまならできる。

お師匠さまがおっしゃっていた物理干渉もだって思いのままだ。

できると言われたのだからできるはずなんだ。



  心のままに、すべてを 塗 り か え ろ !!!



============================


<開門>

心とは、閉ざすものではない。

感情とは、隠すものではない。

だが、誰もがいつか、そうせざるを得なくなった。

我が言葉は、沈黙の檻に火を灯す。

我が詠唱は、凍り付いた自分自身を迎えに行く。

これは呪いではない。これは癒しでもない。

これは、存在を許すための革命である。


<序章ー静謐の籠>

幼き頃、僕は誰よりも声を出さなかった。

何を話せば、何を言えば、誰かが笑ってくれるのかも分からなかった。

だから僕は、小さな籠の中にすべてをしまった。

感情も願いも、友達になりたかった誰かの名も。

籠の扉には鍵がかかっていた。

でも、その鍵をかけたのはーーー他の誰でもない、”僕自身”だった。


<展開ー記憶干渉>

聞け、記憶よ。目覚めよ、感情よ。

もう君たちを、恥じなくていい。

怖がらなくていい。見捨てられないように嘘をつかなくていい。

あのとき感じた孤独、胸の奥で誰にも気づかれなかった震え、

それらすべてが、”いまの僕”を作っているのならーーー

僕はそのすべてを、否定しない。

涙を知っていたから、優しくなれた。

孤独を知っていたから、誰かの声に耳を傾けられた。


<核ー自己再定義>

僕は、ずっと自分を許してほしかった。

誰かに”それでいいんだ”と言ってほしかった。

でも、いまなら、分かる。

誰かに認められる前に、自分が自分を抱きしめなければならない。

それが、存在するということ。

それが、生きるということ。

それがーーー魔導士として世界に干渉するということ。

だからいま、僕はここにいる。

名もなき花が咲くこの丘でーーー言葉を放つ。


<終章ー呪文顕現>

開け、小さな籠。舞え、白き花弁。

我が想いを、世界よ。受け入れろ。

存在そのものが呪文となる。

この呪文は、”僕”という存在の行程である。

逃げてきた僕を、受け止める力である。

誰の真似でもない、僕だけの言葉で、僕を赦す。

それが、それこそが僕の魔導。


===========================


『 完全詠唱<アーク・オーヴァチュア> 真名発動 幽籠花譚<ゆうろうかたん> 』


僕という存在を視ろ 誰よりも小さく 大きな存在を感じろ

自身を閉じた鍵は いま 盾へと変わる

開け 伸びろ 拡がれ 雄々しくそびえ立て

悪意を跳ね除け 閉じ込め 活路を創れ

その未来<さき>に 僕たちが望む 世界がある!!


===========================


僕の前には大きな白い花弁を模した模様が浮かんだ。

それはモンスターを押し返し、僕たちを守るように広がっていく。


ああ、これが魔導なんだ。

これこそが術式展開だったんだ。


お師匠さま、僕は少しでも貴女に近づけましたか?


みんなは見てくれてるかな。

やっと自信をもってみんなを守れると言えるようになれたよ。

もうみんなから逃げたいなんて言わないよ。


ーーーでも、さすがに つかれ た かな。

あの子がーーーリアムがっ!

わたしの可愛い一弟子を失くしてなるものですかッ!!!

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