遊楼可丹<ゆうろうかたん>エピソード02 信じた仲間
視点:リアム
パーティメンバーと話しをしました。
厳しい言葉や辛い言葉を掛けられると思っていたのですがーーー。
「オレはお前が皆を護ってくれるって信じているから前に出ていけるんだ!」
「わたしだってそうよ! それにリアムがずっと頑張っていることを知っているもの!!」
「ミィも一緒だよ」
いつも励ましてくれるメンバーだった。
だからそれが当たり前のように感じていたのかもしれません・・・。
離れて、弱音を吐いて、それでも同じように励ましてくれるみんな。
だから僕はみんなが好きで。
守りたくて。
だからこそ魔導も頑張って覚えようとしてたのに。
ああ、懐かしいな。
子供の頃にみんなと一緒に丘で見た景色。
その中でもひとつだけ咲いていた名も知らない白い花。
そうだよ。僕はこんなところで止まってなんていられないんだ。
早くみんなの元へ帰らなきゃ。
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みんなとの楽しい時間を過ごした翌日。
僕は改めてお師匠さまを訪ねにいきました。
「うん、とってもいいね。それがあなたの本当の顔だわ」
お師匠さまはいつもの笑顔で迎えてくださいました。
「悩みはなくなりました! これからもご指導お願いします!!」
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これまでの修行が嘘みたいに僕の魔導は成果を上げていきました。
ただ物理的な干渉はいまだ到達できずに悩む日々を送っています。
「ここまでは順調ね。あとは深度を下げる練習をしていきましょうか」
「深度・・・ですか?」
魔導に深度という言葉は聞いたことがありません。
魔導とは神から送られた言葉をお師匠さまが弟子に合わせた言葉を選んで授けるものだと聞いています。
だから魔導士はその言葉を読み解き、追及することで干渉力を上げるのだと教えられてきました。
「それも間違いだとは思わないけれど、それでは最初の師以外は魔導の真髄には至る道は見えなくなると思うわ」
お師匠さまがおっしゃるには授けられた言葉の意味ではなく、自分自身を表す言葉を生み出すための最初の言葉としなさいというのです。
「いまのあなたは当時のあなたではないわ。”いま”を表す言葉を探すことで望む結果が得られるはずよ」
いつもお師匠さまは難しいことをおっしゃいますが、今日はさらに難しく感じます。
”いまの僕”を表す言葉とはなんでしょうか。
日記を見なさいと言われたのですが、本当にただの日記です。
できたこと、やりたかったこと、褒められたこと。
それを書き出しているだけでした。
そもそも”いまの僕”とはなんでしょう。
宿に帰って仲間達と相談しましたが、一向に解決に繋がりません。
ベッドで横になりながら過去の自分を思い浮かべます。
あの頃の僕はずっと黙って、誰にも迷惑をかけたくなくて、嫌われたくなくて。
それでもどこかで、誰かに言って欲しかったのかもしれない。
”君はここにいていい”って。”頼られているんだ”って。
いまもそんな僕だろうか。
きっと変わってないだろう。
でも一つ言えることは昔からの友達は、そう、信じ合える仲間ってはっきり言えることだ。
こんな僕を見てくれて、いつも励ましてくれる自慢の仲間だ。
もしも僕があの頃に見た小さな花だったとしても。
風に散ってしまうような心ーこえーだとしても。
それでも、いまのみんなとなら・・・。
お師匠さまだって僕をちゃんと見てくれてる。
出会ったときから優しくて、いっぱい褒めてくれて本当に大好きです。
自分を褒めてあげなさいって言われ続けたけど、僕はーーー。
そうして僕は考えごとをしているうちに深い眠りに入っていった。
打ち解けたようで良かったわ。
いまは悩んでいるようだけど、きっと答えを見つけられる。
あなたはもう得難い絆を得たのだから大丈夫よ。