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遊楼可丹<ゆうろうかたん>エピソード01 僕のお師匠さま

視点:リアム

14歳の少年。

自身を含めて男女4名のパーティの一員。

魔導を勉強しているが上手く使いこなせず周りに迷惑を掛けていると思い悩んでいる。

僕にはお師匠さまがいます。

とてもキレイでかわいい人なのですが・・・。


「リアム? 瞑想中に余分なことを考えるのはいただけないわね」

「は、はい! すみません。お師匠さま」

「よろしい」


そういってお師匠さまは机の上に置いた本に視線を落としました。


瞑想といっても日記をつけるだけなのですがこれが魔導に繋がるのでしょうか。

僕は一刻も早くパーティに復帰して活躍しなければいけないのに。


そんな焦りがお師匠さまには見抜かれていたのでしょうか。

ため息をされたあと、今日は帰りなさいと言われてしまいました。


「すみません。帰って反省します」


頭を下げる僕にはお師匠さまの金髪の長い髪しか見えませんが、きっと呆れられているのでしょう。

いままで師事してきた方々も・・・。


「反省なんてする必要はないわ。それも一つの経験だもの」

「えっ」


顔を上げるとお師匠さまの碧色の瞳が見えました。


「だから反省はしなくて良いの。これもまた知識であり魔導に繋がることよ? あなたはまだ若いのだから反省するほどのことなんて何もないわ」


そうおっしゃって笑顔を浮かべていました。


「ただ何を考えていたのかは気になるわね。良かったら教えてくれるかしら」


少しからかいの色を感じさせる視線で優しく聞いてくれます。


でもーーーお師匠さまのことを考えていたなんて言えないよ。


だから僕は別の話題に切り替えられるように話しをします。


「あの僕の魔導について悩んでいたんです」

「ふむ、遊楼可丹<ゆうろうかたん>のことよね」


そう、僕の魔導は遊楼可丹<ゆうろうかたん>。

対象を勇気づけて恐怖に打ち勝つ魔導。


最初のお師匠さまからは育てれば精神的な作用だけでなく物理的な干渉もできるのではないかと言われていました。


「あなたにとっては相性が悪い魔導というわけではないと思うのだけど、そう感じていないということよね」

「そう・・・ですね。僕も攻撃するより皆を守れる魔導が欲しかったので相性は良いと思うんです」

「いまの魔導では思い描いたような事象を引き起こせていないということかしら」

「・・・はい」


いまだに精神高揚以上の干渉ができていないんです。

僕は皆を守りたいのに守れていない。

それが僕のパーティの評価で、僕がいまのお師匠さまに師事している切っ掛けになっています。


本来、お師匠さまは僕のお師匠さまというわけではないのですが、悩み抜いてパーティを辞めようとメンバーに伝え、引き留められていたところで声を掛けられたのです。

そうしてこれでダメならパーティを辞めさせて欲しいとメンバーとの話し合いの末に師事することになり、いまに至るというわけなんです。


「なるほどーーーそれでは演習場にいきましょうか」


え? なんで急に・・・。


「このまま帰っても明日もまた悩んでしまうからよ。何か一つ切っ掛けを見つけないとね」


お師匠さまは僕の視線に合わせてふわっと笑う。

それに照れてしまうのは仕方ないと思うんだ。だってお師匠さまはきれいなんだ。


お師匠さまに連れられて演習場に着くと、お師匠さまと僕だけになるよう天幕を作る。

こうすることで他の人の視線を遮って、お師匠さまと二人だけになることで干渉力を上げることができるのだとおっしゃっていた。

理由は大きくなったら教えてくれるとのことだったけど、子ども扱いされているようで少し不満を感じている。


「それではいまから行う干渉について説明していきましょう」


お師匠さまから干渉内容を指定されて少しほっとしました。

内容は軽い恐怖を与えるからそれを耐えられる術式を作れとのことだったから。

これならいままでもやったことあるし、僕でもできそうだった。


「いきます!」


気合を入れて術式展開を行う。


============================

完全詠唱<アーク・オーヴァチュア>発動。



弱さは悪ではない。

怖く、立ち止まり、それでも立ち向かった。

だから目を背けず、己が精神を高めた先に求めたものがある。

誰かを守るための力になることを。

============================



『 守護結界術式 遊楼可丹<ゆうろうかたん> 』



「発動しました!」

「そう、ではいくわね」


お師匠さまは腰に吊るした片手剣を勢いよく僕へ向ける。

普段ならきっと悲鳴を上げて逃げようとするけれど、いまは術式展開を行っていることで恐怖は感じていない。


「よくできているわ。さすがね」


そう褒めてくれるのは嬉しい。

僕も唯一できることだから自信を持って返事ができる。


「はい! ありがとうございます」

「ふふふ、先ほどよりよっぽど良い顔をしているわ」

「は、はい!」


お師匠さまはこうやっていつも褒めてくれるから、僕はとても尊敬しているし、その・・・好きだ。

これまでのお師匠さまより早く会えていたら良かったのにといまでも思う。


「では、そのまま術式を展開したままにしていてね」

「分かりました」



ーーーリアムはこれまでもパーティで役に立ってないと思っているわね? だから捨てられると。




え?




心の奥がずきっと痛んだ。

術式展開をしているはずなのに。


「それがあなたの枷。まずはパーティメンバーと美味しいものでも食べてちゃんと話し合ってきなさい。明日は一日しっかり休んでね。翌日にでも場所を整えてあげるから全部打ち明けちゃいなさい」


そう、お師匠さまはおっしゃって天幕から出ていってしまった。

皆は思った以上にあなたを見てくれているわ。

ただ少し他の子達とも話しておきましょうか。

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