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語られた未来

 ガラスが割れた。


 いつも母さんがきれいに磨いていたショーウィンドウが右から左へと音を立てて粉々に。


 『ボヌール・ココン』の看板が勢いよく落ちる。


 ところどころの建物がけたたましい音を出し、沈んでいく。


 闇に侵略されていく様子をただ息をのんで見ているしかできない。


 逃げろ、逃げろ、とあちらこちらから金切り声が上がる。


 悲鳴が上がり、響き渡る泣き声が地獄の絵図を物語っていた。


 その生き物たちはなにがそんなに面白いのか、奇妙な声を上げ続け、慣れ親しんだ街を危機として崩壊し続けていた。


(やめて……)


 黒い影達は笑っている。


 姿は人間なのに、どこまでも開く口角を上げて。ゲラゲラと笑う。


(やめて……やめてやめて……)


 わたしたちの街のシンボルだった時計台が崩れ落ち、絶望の色とともに少しずつ少しずつ砂埃が辺り一面を染めていく。


 世界の色が失われていくのが目に入った。


 嫌な色がこちらに迫っていた。


『………』


 声にしたくても、声が出ない。


 わたしは、ここにいないキャラクターだから?


 わ、わたしは……


『我が名は美琴。神に仕えし巫女である。大地の神よ、我に力を与えよ』


 突然、頭上から澄んだ声が聞こえた。


 凛としていて、まっすぐその声は響いていた。


『闇を祓え、雲を祓え、悪しきものを葬れ! シャイニング・バリア!!』


 濁った空にまばゆい光が走る。


 そこからシュッと音を立てるようにして、霧が晴れ、空の色を青く染めていく。


 それは、希望の色だった。


(ああ、あなたが……)


 踏ん張れなくなって足から崩れ落ちる。


(待っていた)


 目の前に立ちはだかり、素敵に笑った少女を見て、ぐっと拳を握ったら涙がこぼれた。


(ずっと、待っていたの……)


 あなた(巫女)という存在を。


------------------------------------------


「来たぁぁぁぁあ〜っ! 美琴ぉぉぉお!!」


 ぼんやり残る記憶の中で、同じように愛理がガッツポーズをして盛大に喜んでいる姿が浮かんだ。

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