限界まで戦い抜くこと
勇者に頼らなくても自信を持って生きていきたい。
あの日から、いろいろなことに興味を持ち、可能な限り挑戦を続けてきた。
近い将来、ひとりで立ち上がれるようにならないといけないのだから。
何もかも大きな芽が出るわけでもなく、失敗に失敗を繰り返した。
仕立て屋として働いていくこと、メイクアップアーティストとして女性のきれいを応援すること、わたしにできそうなことは前向きに向き合ってきたつもりだ。
魔力を使うことは悪ではない。
だけど、わたしの場合は制限がある。
王族を巻き込んで大きな問題にも発展しかけたし、いつまたそんな状況になってしまうかは定かではない。
力の使い分けができるわけでないこのタイミングで無茶なことをするのは褒められたことではないとわかってはいたけど、何かをしていないと自分の心が絶望とともに潰れてしまいそうだった。
いえ、もうわたしの心はすでに壊れかけていたのかもしれない。
自分だけの時間が得られると、取り憑かれたように封印されていない少量の力を使って自分にできることを考え続けていた。
それでも元々才能自体がないのか、どれに対しても飛び抜けた能力があるわけでもなく、中途半端で未だにひとりで何かができる状態ではないことに気付かされたのは努力を始めてすぐのことだった。
ぐっと力を込めると手のひらの中で紅のケースがきゅっと音を立てた。
さすがに今日は力を使いすぎたのか、左手が赤くなっていた。
帰って薬草でも塗って眠ろう。
なんだかんだで、わたしの限界なんてこんなものだ。
小さく落胆し、振り返ったわたしの目の前に、だらんと開いた大きな口がだらりとよだれを垂らしながら待ち構えていた。




