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短編のお部屋

ボックスルームシンドローム

作者: スタジオ めぐみ

僕は今まで普通に生きてきた。

朝がきて普通に会社に行き、夜がきて普通に家に帰る。

それを毎日毎日飽きるほど繰り返していた。


寒いある冬、僕は部屋から出られなくなってしまった。

部屋から出るのが怖いのだ。

理由はわからない。

だけど、部屋から一歩でも出ると酸素がなくなったみたいに急に息ができなくなるのだ。


心配した母が病院に行こうと僕を連れて行こうとするが、部屋から出るとひどい息切れをしてしまうので病院にはいけない。

部屋の隣にあるトイレに行くのも一苦労だった。

不思議なことに自分の部屋では息切れはしなかった。

普通に過ごせるのだ。


そのまま、もう3日経ってしまった。


部屋から出ると吐き気も出るようになってしまった。

息切れと吐き気は部屋に戻ると不思議と落ち着くのだ。

部屋から出るのがすごく怖い。


引きこもりとは全く違う。

…いや、同じか。部屋から出られないのだから。


母が家に病院の先生を連れてきた。

先生は僕の部屋に入る。

どうしたの?と先生は僕に聞いた。


僕 :「この部屋から出たら、息ができなくなるんです。」

先生:「お母さんから話は聞いたよ。これは、ボックスルームシンドローム。大変だ。」

僕 :「ボックス、ルーム、シンドローム、なんですか?」

先生:「あなたは、この部屋からもう出られないのです。一生をここで終えます。」

僕 :「なんでそんなことに…」

先生:「あなたが強く望んだからですよ。」

僕 :「え…僕が?」

先生:「もう外に出たくない、もう人に会いたくない、もう働きたくないと望んだのでしょう?そして、心が限界になって、次に体が限界になった。そして、この部屋はあなたのテリトリーで安心する場所だ、この部屋から長く出ると息ができなくなり、死にます。それがボックスルームシンドローム。」

僕 :「先生、これは治らないんですか…?」

先生:「あなたがまた強く望めば治るかもしれません。私は治った人をまだ見たことがないけれど。」


人にも会わず、働かない日々。


僕は強く望めるだろうか、外の世界へ行くことを。

この部屋から出ることを。

この箱のような部屋の中で。

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