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「私の顔になんかついてる?」
「いえ……美人だったので、つい。」
「うわぁ、そういう事面と向かっていうタイプなんだ。死んだ目してると思ったらチャラいんだね」
子供みたいに笑う人だ。キャッキャと笑うっていうのを初めて見た気がする。本当にキラキラしている、青春ド真ん中って感じの人だ。
「お兄さん今何してんの? 休憩?」
「いや、何も出てないです。友達もここにいないんで。暇してたって感じです」
「あんなに目死んでたのに? なんで来たの?」
ニコニコと屈託ない笑顔で聞かれると本当に自分がなんで存在しているのかわからなくなる。本当に心をえぐってくるものってキラキラした善意なんだよな。俺みたいなドラキュラ的な奴には明るすぎて、浄化されそうになる。
「なんか、青春したいなって思って。でも来たはいいけどなんもやることないなって」
「そりゃお祭りに参加して青春だぁってなれる人なら青春したいなんて思わないでしょ。もう勝手に青春して気持ちよく生活してるよ」
「えぐってきますね、ちょっと笑って返せそうもないっす」
「えぐるっていうか事実そうじゃない? 青春したいなぁって思うなら、なんかにのめりこみなよ。なんか作ったり、みんなで目標にむかってーみたいな」
「それはそうですね。俺もなんかやらないとですね」
「『やらないとですね』だって。絶対やらないじゃん」
本当に心から楽しそうに笑う人だ。浄化されたというか心は軽くなったのだろうか。やっぱり美人の笑顔って癒されるもんなんだな。偉いおっさんが囲いたくなる理由がわかる。
「私は君みたいなかっこいい男の子は青春し放題だと思うけどねぇ」
「なんかだいぶ年上みたいなこと言いますね。三十路超えてるんですか?」
「はぁ? まだまだ三十路には程遠い二十歳ですよ! なんですか? ババアって言いたいんですか?」
「三十路はババアじゃねえだろ……というか青春し放題っていったって現にできなかったからどうしようもなくないですか?」
「現にって何年生か知らないけどまだ半年は確実にあるじゃん」
「まあそれは間違いないけど」
けど、俺にそんな資格ないよ。俺に青春を謳歌する資格なんて。俺はいろんなことに水を差すだけの人生だった。人の楽しみに冷や水をぶっかけて楽しんでたような奴が今更自分のために楽しもうなんて虫のいい話があるわけがない。
「ねぇ、お兄さん」
今までの笑顔が嘘みたいに真剣な表情になって、今までのが嘘みたいに真剣な声色でこういった。
「しようよ。私と。青春」