第5話 シェリー遺跡に住まうアンデット
2日目、道の途中、魔物に遭遇したものの、勇者一行が瞬殺、俺が出る出番はなかった。森の中を順調に進んでいくと、開けた場所に出た。
「やっと、ついたね」
「ここが、シェリー遺跡ですか」
「思ったよりも、大きいですね」
予定より少し早く、1日半で無事にシェリー遺跡に到着した勇者一行とルディー。
シェリー遺跡は、森の奥にあるため、誰もなかなか近づかないうえに、すでに探索済みのことから、お宝も一切ないため、冒険者すら探索しない遺跡。
昔は練習場として使われていた時代もあったらしいけど、ここまで来るのに時間がかかるから、自然と来なくなったと言われている。
「それじゃあ、早速、探索を始めようか、構成はいつも通りで、ルディーは後方支援に回ってほしい」
「わかった、任せておけ」
「うん。それじゃあ、行こうっ!!」
シェリー遺跡内に入ると、いきなり驚きの光景が視界を埋め尽くした。
この遺跡の内部は光る鉱石で覆われており、本来であれば、七色の光で満ちていなければならないのに、中に入ってみれば、真っ暗。
どこ見ても、ほとんど光はなく、まるで洞窟内にいるような雰囲気だった。
「これ…………表面上だけ削り取られてるな」
「こんなこと、魔法でもできません」
「……………」
「勇者様?どうかなされたのですか?」
カナリアだけがアストレアの異変に気付き、声を掛けた。
「感じるの。とても嫌な気配を…………」
アストレアはずっと遺跡の奥のほうを見て、睨んでいた。滲み出る武神のオーラ、この先に何かいるのは間違いないようだ。
「奥へ進もう。もしかしたら、魔王軍のスパイかもしれない」
「そうね、進みましょう」
俺と勇者一行は奥へと進んでいった。
「ザコは消えなさい【獄炎魔法・ヘルファイヤー】」
アーカシアが詠唱を終えて、放った魔法は、魔物たちを一瞬のうちに灰と化した。
「す、すごいな」
改めてアーカシアのすごさを認識するルディー。もちろん、魔法の知識から技術もすごいけど、やっぱり、魔力量が勇者に匹敵しているのがすごすぎる。
獄炎魔法・ヘルファイヤーってもう少し火力は抑えめのはずなのに、なんで、魔物が灰になってんだよ、おかしいだろ。
伊達に、勇者の仲間じゃないな。
「すぐに浄化します。【神聖魔法・クリアエクスキューズ】」
灰となった魔物が次々と光の粒子となって空へと飛び立っていった。
「すげぇな」
魔物にも慈悲を与える聖女。なかなかに異常だが、だからこそ聖女なのかもしれない。
「どんどん、前に進むよ。時間は待ってくれないんだからっ!」
迫りくる魔物たちを次々と倒していく中、ようやく最深部の扉を俺たちは見つけた。
閉ざされた大きな二枚門。全長4メートルほどあり、とても大きかった。
「ここだな」
「じゃあ、開けちゃうよ」
勇者にためらいなんてない。ただ突き進むのみ。
さすが、勇者様ってことか、でも、この奥からすごく嫌な感じがするんだよな。
そう思っている間に、アストレアは大きな二つの門を軽々と押し開けた。
門が開くと目の前に広がったのは大量のアンデットの大軍だった。数は100を超え、この部屋の隅々まで埋め尽くされていた。
そんな中で、ひときわ目立つアンデットが石を加工して作られた椅子に座っていた。
「よく来たな、勇者どもよ」
「あれも、アンデットか」
「俺の名はデスナイ———」
「【剣聖・瞬閧】っ!!」
剣の勇者、アストレア・レイスが問答無用で切りかかった。アンデットの大軍をいとも簡単に切り裂き、一瞬のうちに近づき、剣技を振るった。