第1話 ルルーブ王国へ
無事にギルド長室に入り、適当に座わると、一枚の紙が机に出された。
「なんだこれ……」
「ふふふ、これはルルーブ王国の王族が直接依頼してきた依頼書だ。そして報酬は100万マルだ」
「ひゃ、ひゃくまんっ!?」
その報酬額に俺は疑いを持った。
100万マルは3か月間、働かなくても暮らしていける金額だ。王族が依頼してきたとはいえ、貴族の出した依頼の信ぴょう性は極めて低い。ここは冷静に判断すべきだ。
「え~と、依頼内容は…………魔王軍のスパイが潜伏しているシェリー遺跡の調査?」
「ああ、どうやら、少し前にルルーブ王国内で魔王軍のスパイが見つかったらしくてな。捕まえることもできず、逃がしたが、その逃がしたスパイがシェリー遺跡に身を隠している情報が届き、現在に至るというわけだ」
「なるほど…………普通に危ない依頼じゃないか」
「そうだ。しかしだ、よく読んでみろ。ここに書いてあるだろ。もし魔王軍のスパイを捕まえれば、追加報酬で100万マル支払うと、しかも一人あたりだ。これはルディーにとって稼ぎ時じゃないか?」
「でもな、俺、冒険者ランクEだし、流石に受けても王族が許さないと思うんだが」
当然の疑問だ。たしかに、報酬額は巨額で、あくまで調査であるから、見つかったとしても逃げればいい。それだけでも、100万マル貰える。
すごくおいしい依頼であることに間違いはない。
ただ、これだけおいしい依頼を俺に持ってくるアバンがあまりにも怪しすぎる。これはきっと裏があるな。
「おい、アバン、俺に言っていないことを言え。あるんだろ?」
「な、なにを言ってるんだ。内容はこの依頼書に書いてることがすべてで」
すると俺は思いっきり机に脚をのっけて、威圧する。
「アバン、俺はお前の性格をよく知っている。これ以上、白を切るなら、お前の奥さんに、秘密で通ってる、あの店のこと…………言うぞ?」
「なぁ!?なぜ、ルディーがそれを!?」
「さぁ、アバン、どうするんだ?」
渋々な表情を見て、俺はため息を漏らした。
「はぁ、それでも言いたくないならいい。その依頼、受けてやる。こんなにおいしい報酬は中々受けられないからな。ただし、これはかしな」
「ルディー…………さすが心の友だっ!!」
「抱きついてくるなっ!!」
しかし、アバンが渋るなんて、どれだけ上から圧力がかかってんだよ。この依頼、思っている以上にやばいかもな。
上からの圧力で依頼がくることは結構ある。貴族のわがままの依頼や、誰かをはめるための依頼。ここの冒険者ギルドはまだましなほうで、他はもっとひどい。下手にひどいところだと、完全に貴族の奴隷になってしまっている冒険者ギルドだって、存在する。
「それじゃあ、この依頼書は持っていく」
「ああ…………ルディーっ!」
「うん?なんだよ、アバン」
「俺がかける言葉じゃないと思うが、気をつけろよ。これは年長者の言葉だ」
「何が年長者の言葉だ…………でもまぁ、心にとどめておくよ」
こうして、俺はめんどくさい依頼を受けることになったのだが、一つ問題があることに気づいた。
「俺、今、金がないんだった」
半月間、ひたすら依頼を遂行していて、お金がない。遂行したい依頼料を受け取れるのは明日だから、結局、今日は動けない。
「こういう時、お金貯めておけばよかったなぁって思うんだよな。まぁ無理だけど、とりあえず、今日は休んで、明日行くか」
久しぶりの宿に泊まると、依頼書の確認を始めた。
どうやら、依頼は俺一人ではないらしい。しかも、集合場所はルルーブ王国の正門。
ルルーブ王国はここから5キロ先にある。さすがに歩いて行く距離じゃない。
「仕方がない。目立つのもあれだし、馬車で行くか」
明日に向けて、いろいろと準備進めていき、気づけば、次の日を迎えていた。
「…………そういえば、馬車って予約が必要だったな」
無事に報酬を受け取り、2週間ぐらいは何をしなくても生きていける金額を持ってきたものの、馬車が全く見当たらない。
「失敗したな…………仕方がない、歩くか」
結局、俺は歩いてルルーブ王国へと向かうことになった。
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