■55■ 閑話3『それは呪い』
世よ爛れよ。全ては灰燼と闇に墜ちろ。
そう願い祈り、ぶちまけられた怒りと怨嗟は世界を焼く為に機関を回していた。
量子次元回廊機関。
そんな名前を知る者は既にこの世界にいないはずだった。
巨大な、それこそ星々を渡ると呼ばれる古代の舟に積まれていた動力炉は、神性を帯びた数々の亡骸がくべられたことでその機関を最大稼働させている。そうしなければ分解し、エネルギーに転換するはずの存在によって炉が侵食されてしまうのだ。
巨人の亡骸、神に連なる狼の遺骸、大いなる意志を秘めた武器。
それらを集積し、採掘し、それこそ滅ぼせるだけ集めたのだ。
幾つも。
幾つも幾つも。
幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも。
それこそ、気が狂うのではないかと思った。いや、既に狂気に陥っているのだろう。
この世界が壊れるその瞬間を見る為にこんな真似をしているのだから。
おそらく、この書が発見される時、既に全ては手遅れだろう。追う者は我を見つけられず、知るものは我に敵うことはない。そういった神性による異能もまた、この身を糧に振るったのだ。魂を削り使ったのだ。
我はかつて偉大なる母を亡くした者。
そうして繁栄した世を嫉む者。
我が名は黒き装鱗大母たる龍イグロンの子。名をアカーシャ。
世を監視し、世を見限った存在。
龍は復権を、世の権益を得ることを諦め、巨人達は異界に逃げ去った。
残るのは脆弱で傲慢な人と、その亜種と嘯く亜人達。
人、エルフ、ドワーフ、獣人を始めとした異種ども。
この世界のあらゆる形は、母の血と肉と、同族達と築いた神代を元に出来ているというのに。
それを忘れ、この世を謳歌する者達よ。
貴様等を我は許さぬ。
そう、これは逆恨みに他ならないのかもしれない。
だが、そんなもので滅ぶなら、その程度のことだ。
私の死をもって神性を集めよう。
さぁ、虚空が降り注いだ時、なんとするか、最期をどのように生きるか。
足掻いてみせろ。




