表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鋼の種族は花嫁が欲しい  作者: ザイトウ
第五章 同じ阿呆なら踊らねば損
53/59

■52■ クロウ編 第24話『巨人より産まれし神狼への信仰』

 かつて巨人の子にして狼とした産まれた者達がいた。

 母なる女巨人の名は神話において残っていない。ただし、その時代の記憶をもつクロウについては別の祖をもつ同じ巨人族、親戚くらいの間柄でありグラキュイエという名も知っていた。森の大樹と同じほどの身長を備えた肝っ玉かあさんという相手であったが、彼女の名のかわりに、息子たちである神狼達の名はかなり有名である。

 天空で太陽を追うスコル、月を追うハティ、そして一族で最強というマーナガルム。

 特にマーナガルムは、すべての死者の肉を腹に満たし、月を捉え、天と空に血を塗るとまで言われている。その為に太陽が光を失ってしまい、世界は闇に包まれると。

 なるほど、吸血鬼が信奉するのであればそう珍しい話ではない。


「確かにあの聴かん坊が騒いだら、太陽の影響くらい一時的に無くしてしまうくらいは出来るだろうが」


眉根を寄せるクロウに対し、対面のミュシャは乾いた笑みを浮かべる。

 やはり、目の前の相手は神話存在なのだ。神性を備え、その身は一つの世界に匹敵する規模の力を秘めたこの世の原初より続く真祖、または神の直系にあたる血族。何があろうと敵対してはいけない存在。その知識といい、どれだけの期間を生きているというのか。

 その彼に話したのが、マーナガルム信仰を掲げる吸血鬼極右派とも呼べる集団のことだ。

 さきほどの二人も、クロウの顔を見ただけで顔色を真っ青にして内情をべらべらと喋ったので間違いないだろう。

 帝国への武力侵攻、およびに特定のダンジョンの占拠。

 そしてそのダンジョンの深部に眠るというマーナガルムの遺骸、その一部の入手。

 遺骸を元に何をしようとしていたかは、さしもの実行役でしかなかった二人もしらなかった。


「真祖としては?」

「介入の前例を作るともっと騒ぎが広がりますし、帝国も刺激することになります。高位の冒険者を募り間接的な関与をするくらいしか」


クロウは短く考える。

 場所さえわかれば端から半殺しにして黙らせることも出来る。しかし、吸血鬼は夜の存在。身を隠して影から影へ行動されると、全員を捕まえるまでどれだけかかるかわかったものではない。そのうちに主要な参加者が目的を達するだろう。

 乱暴な方法なら吸血鬼全部を空間ごと叩き斬るという手段もあるがそんな真似をすると周辺がとんでもないことになる。対象物を選んで斬るような真似もできないこともないが、逆に相手がわからないと無差別割断事件になる。

 面倒くさい。

 こういったことは出来る相手にやってもらおうと立ち上がる。


「貴重な話に感謝する。それでは、失礼させてもらう」

「今後、どうするおつもりで?」

「敵対するなら、まぁ、戦うが、そうでないなら、それなりに」

「そう、ですか」


色々なことが終わった気がするが、行動を誘導するなどもってのほかであるし、何かを願える立場にはない。刺激しないことが一番なのだ。視線を向けた瞬間にはバラバラにされていてもおかしくないような相手なのだから。

 去っていく背中を見送り、その姿が完全に見えなくなったことでやっとミュシャは肩から力を抜いた。

 

「最悪の日だわ………。とにかく、他とも相談しておかないと」


浅慮な若手があの二人だけとは思えない。

 それに、命令か、それとも扇動をした相手を考えると早急にまとまる必要がある。

 他の真祖か。それとも。

 鉛でも飲み込んだような気分だった。胸の奥が渇いたような、ひどく億劫でだるい。

 それでも、一族を守らねばならない。

 あんな神代の生き残りと戦うなんてもっての他だ。何百回死んでも勝てる気がしない。

 他の真祖達に連絡をとる為、ミュシャは準備を始めた。



 

 







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ