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鋼の種族は花嫁が欲しい  作者: ザイトウ
第五章 同じ阿呆なら踊らねば損
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■46■ オルガン編 第9話『先輩庭師からの突然の提案』


 冬を前にして冷え込み始めた頃、先輩庭師の一人であるオルトと料理女中のトラティナとの結婚が決まった。使用人同士の婚儀であったがイリーシャン侯爵家からもお祝いが送られた。オルトの両親は帝都にいるので結婚式の参列にも問題なかったが、獣人族であるトラティナは、両親が獣人族の山岳集落にいるので手紙の返事がくるのでさえ半月はかかるという。

 その返事がついに来たのだ。

 結婚を喜ぶトラティナの両親は、雪で道が塞がる前に集落を出て向かう予定だという。

 オルト達も帝都にある教会に相談して結婚式の準備を行っている。


「オルトも結婚かぁ」

「よかったですね」

「まぁ、うん」


オルトと同期にしてオルガンの指導役でもあったマルクマンはなんとも微妙な表情をしていた。同期のオルトが結婚し、オルトと入れ替わりに領に戻ってしまったアルバガッドという男も既婚者、同期の半分以上が結婚しているという事態に、マルクマンも思うところがあるらしい。


「なぁ、オルガンは気になっている子とかいねぇの?」

「はぁ、よく、わかんないです」

「……その前に、そういえばお前、そもそも仕事以外でうろつくことってあるか?」

「あんまり、ないです」


そもそもこのオルガン、無趣味で仕事以外の時も庭木の勉強しているくらいの真面目な青年だ。多趣味で学術も武術もなんでもござれのクロウの対極であるし、一時は子育てまでしていたグレネットとも色々と異なる。

 趣味云々がぴんときていないというのもあるが、今の庭師という仕事が楽しくて仕方ないらしく、他の事まで考えていないというのもあるが。

 そうなると、交友関係は限られる。イリーシャン侯爵家の関係者だ。


「じゃあギネヴィアちゃんはどう?」

「えっと、使用人の後輩ということもあり、よく、してもらっています」


子守り召使ナースメイドのギネヴィアは侯爵家三男ラズフォードの専属召使である。

 今年3歳になったばかりの末っ子であり、庭でしょっちゅう遊ぼうとするラズフォードと共に庭師達と関わることも多い。

 年齢は16歳。父が執事の一人で、子供の頃から屋敷勤めをしている編み上げて後頭部でまとめたブルネットは美しく、可愛らしい面立ちの子である。


「あとは、前に来られていた、ほら、エルフの」

「そんな、あの方は侯爵家のお客人ですよ。たまさか同族にお知り合いがいる誼でお話したことがあるくらいで」


エブリン・ダワーナ。帝国政府の外部協力者で、白銀の髪と白い肌というまさにエルフといった外見の御仁である。帝国領地に住む各種族との間で連絡役を担っている者の一人であり、花卉栽培に際して技術者としてエルフを雇うイリーシャン侯爵家とも関りが深い。

加えて、オルガンが鋼の種族であることを察した数少ない相手である。

 たまに屋敷に訪れた際に会話をすることはあるが、関りがそもそも薄い。


「あとは、衛兵のなんとかって人?」

「ラクシャさんですか? そういえば、町であってもお声がけしてくれますね」


そう言って、オルガンはたまに町で顔を会わせる女性の事を思い出した。

 ラクシャ・アルバイン。南方出身で褐色の肌に涼やかな藍色の目をした御仁だ。

 出会いというか、関りは屋敷への襲撃事件がきっかけだ。

 イリーシャン侯爵家襲撃事件が市井にも大きな衝撃をもって広まった頃、治安維持を目的に、しばらくイリーシャン侯爵家にも当主および奥方に帝国騎士団から護衛、屋敷には警邏隊からの衛兵が派遣されることとなる。

 そのうちの一人が警邏隊所属の衛兵であるラクシャであった。

 衛兵として屋敷の周辺警戒を行う中、庭師でありながら適時周辺警戒を行っているオルガンに気付いたラクシャは、何かあればいつでも警邏隊に入隊できると賞賛し、好意的に接してくれるようになった。襲撃者撃退を担ったことも察した節さえある。


「まぁ、とは言ってもそんなに関りがあるわけでもないですし」

「そうか。つっても、関りなんて自分から深めていくもんじゃないのか?」


どきりとした。

 確かに、仕事と、住処とを得て、そこから先がどうにも描けていない気はしていた。

 そもそも、人ともっと深い付き合いを作るって、どうしたものなんだろう?

 例えばマルクマンは信頼する先輩であり、少なくとも友人と呼ばせてもらって差支えがないだろう。だが、それが女性になると?

 口説く? 誘う? 講じる?

 どれもしっくりとこない、というかどうすればいいのかさっぱりだ。

 他の二人はどうしているのかと想像し、グレネットについては考えるのをやめた。あの人は下手したら女性側がほっとかないので、あまりにも不適切だ。

 じゃあクロウは? あの人も変なところで要領というか、運がいいからなんとかしてそう。

 悩む。


「なぁ、オルガン、お前も思うところあるなら、参加しないか?」

「参加?」

「そう、つまりだな」


真面目な顔のマルクマンが声を潜める。


「合コンだ」



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