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鋼の種族は花嫁が欲しい  作者: ザイトウ
第三章 安寧と奔走と自由と
31/59

■30■ クロウ編 第14話『極東奇譚と異世界召喚が禁止された経緯との関り』


 約70年前に起きた諸王領戦争、または諸国領戦争とも呼ばれる争い。帝国と聖王国の間に存在する小国の間で起きた複数の内乱に端を発する戦争で、数年間の戦争で人的損失がどれだけ生じたかは現在になっても定かでない。

 当初、勢力増大を目的に聖王国が介入を行おうとしたのだが、先端を開いた小国同士との争いに巻き込まれ、三つ巴に発展、介入した聖王国の大部隊が丸々失われるという散々な結果から手を引くことに。

 結果として、小国でも図抜けた力を持つ三国と、海沿いの小国が同盟を組んだ南方海域同盟による四か国協定が結ばれたことで戦乱は落ち着いた。ただ、終戦協定に際し、帝国、聖王国を含めた周辺国全てで調印したもう一つの約束事が存在する。


 異世界召喚者禁止条約。


 これは、当時の戦線拡大時、既に亡国となったある国で異世界人の召喚、俗に勇者召喚の儀礼術式が行使された。召喚時、異世界人の多くは神性の加護を得る。逆に会得できないものは召喚と同時に死亡する可能性すらある。

 そうして神性加護を得た人間がまた戦線を混乱に導き、争乱が広がる。

 対する為に隣接する国も、勇者召喚の儀に手を出す。

 悪循環でとしか言いようのない召喚の繰り返しに対し、ついには、異世界側からの介入を招いた。相手側からすると他所の世界から自国民を集団誘拐されているのだから怒り心頭である。異世界側の秘匿組織、いわゆる超常能力や秘された技術を持つ一団がこの世界に殴り込んでくる。


そこから、()()()()()()()()()()()()()()()にされた。


 異世界召喚に関わった面々が、一人残らず、悉く、鏖殺にあったのだ。

 それこそ神さえ含めて。

 名も名乗らぬ彼等は『神殺し』とだけ呼ばれることとなる。

この世界において護国の為、介入不要、干渉不可と、異世界転移を意図的に行う者がいれば如何なる目的であろうと一切を赦さぬと、憤怒と断罪の使者がくることが刻まれたのだ。

 帰還を望まぬ者を除き、召喚者を全て連れ帰った鏖殺者達は『故あれば全てを灰燼に帰す』と、王族を吊るし、魔術師を吊るし、元の世界に帰っていった。

 神々のおわす神界においても、他の世界からの無法な召喚を禁ずとされたという。

 殺された神の名は、定かではない。

 如何なる書物、情報、記録にすら残らぬほど、二度と世に関われぬほど、存在を根底から消滅されたのだから。



そして滅ぼされた者には、神仙の世界に属す者もいた。

 その際に調停に駆り出されたのが、勇者と正面から殺し合った集部台の一族の関係者であった閏の神、この男であったのだから。


「あの時ばかりは死ぬかと思った」


集部台の一族との関りを説明し、なんとか警戒の解けた閏の神と境内で話す。

 神性武器を探しに龍墜に訪れていた勇者達。

彼等は加護の影響で戦に狂っており、古い武器、祖先より受け継いだ武器を備える集部台の邑を略奪目的で襲おう画策。だが、神性の加護があろうと相手も集部台の一族。勇者達も反撃によって重傷を負い、戦場では硬直状態が生まれた。

 そこに閏の神の仲介が間に合い、神殺しが龍墜に来る前に両者が収まったのは奇跡のような話だった。

 龍墜来訪の勇者達? 

戦争の火種になりかねないからと正気に戻され、即座に元の世界へ強制送還されました。

 抵抗したところを神殺し達に叩きのめされて。


「それで、集部台の一族は?」

「元気も元気、ただ、まつりごとには関わらぬようしておるから、今は九州の山岳部にひっこんだよ」

  

 武威に秀で、巨漢の多い集部台の一族。

そのせいで、九州の南部では大人弥五郎(おおひとやごろう)などという伝説の巨人扱いされている。

 自らの領土に山を作ったり,沼を作ったりした巨人達と。


「そうか、元気そうなら、よかった」

「お前さん、身内の末裔がどうなったか知りたいだけで儂を追って来たのかい?」

「そうだな。そうだよ」


クロウはすっきりしたような顔で笑っていた。

 兄の血筋は、自由に闊達に生きていた。

 血や想いというのは、間違いなく受け継がれているのだろうと納得できた。

 それだけでよかった。


「お手数をおかけした。そろそろ俺も帰るよ」

「なに、久々に古い血の方とお話できて儂もよかったよ。今のお住まいはどちらで?」

「龍の領域に」

「ほう、またすごいところに」

「まぁな。世話になった。何かあれば尋ねてくれ」

「えぇ、それでは」


クロウの像がぶれる。

 ほんの一歩踏み出すような所作をした次の瞬間、その姿は霞と消えていた。


「なんともまた、とんでもない方も居たものだ」


興味深そうにその様子を見守っていた閏の神は、そのまま神社に一礼し、歩いて立ち去った。



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