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-Unhappy Commute- Part Final

      ※   ※   ※




「といった感じですが如何ですかAGSの皆さん。

 何か力になれましたか?」


会社の応接室でシベトリはコーヒーを飲みながら白髪の山羊の獣人とその飼い主に話しかけた。


「間違いねえ!

 そいつは俺達が追いかけてる奴らだ。

 な、そうだろ?」


「落ち着けルフトジウム。

 まだそうだと決まったわけじゃないんだ」


 水色と緑色の混ざったような色の瞳を携え、頬には山羊を示すマークが張り付けられている片方角の折れた山羊の獣人……ルフトジウムと呼ばれた獣人は嬉しそうにはしゃぐ。全身をほぼ青系の服で身を包んだ彼女が戦闘用獣人であることはAGSに所属していることから明白だが、胸の大きさと体のむっちり具合は金の掛けるところを間違えているのでは、とシベトリが逆に心配になるレベルだ。

 飼い主の男はというとサングラスとマスクでしっかり顔を隠し、真っ黒なスーツで身を隠していた。人間だからこそ顔がばれるのがまずいということなのだろう。世間一般では“重工”の遠隔操作型自立戦車の暴走と騒がれた事件から二日後のことだ。シベトリは警察にもそれ以外にも喋るな、とハルサに釘を刺されていたにも関わらずベラベラと喋ってしまっていた。


「詳しい特徴は私の視覚データを明日吸い出して提供させていただきます。

 そちらでよろしいでしょうか?」


「ああ、助かる。

 提出用のアドレスはのちに送らせてもらうぞ」


「それで、あの……お礼のお金の方は……?」


「ああ、指定された通りに振り込んでおく。

 確認しておいてくれ。

 AGSは諸君らの協力に感謝する。

 それじゃあ……帰るぞルフトジウム」


山羊の獣人と、その上司の男が立ち上がって部屋の外に出ていく。


「ご協力感謝するよ。

 これで俺はあいつらを追いかけれるってワケだ……。

 待ってろよ犬っころ……!」


「ああ、コーヒーおいしかったですよ。

 ありがとう」


帰っていく二人をそっと見送り、シベトリはソファーに再び座り込んだ。


「警察でも聞かれまた聞かれるとは思いもしなかったな。

 いやーしかしいい金で売れるもんだな。

 警察とAGS同時にデータを送ればいいだろう。

 うまいこと行けば退職金の五倍いや六倍もの値段が……」


「あーあ……。

 やっぱ黙ってられないんスねえ……」


シベトリが座っているソファーの後ろから聞いたことのある声が聞こえる。慌てて振り返ろうとしたシベトリだったががっちりと何かに捕まれて首を回せない。


「お、お前は――!」


「残念っス。

 さよならっスね、人間さん」


ゴキンと何かが砕ける音とともにシベトリの視界がゆっくりと消え始め、今まで聞こえていたすべての音、感覚が消える。最後にシベトリが見たのは三本の尻尾を持つ狼の獣人が天井裏に消えていくその姿と人間を完全に見下しきった瞳だった。






                    -Unhappy Commute- End

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