表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/193

-角が折れた日、初めての出会い- part4

 しかしそのたった五秒の隙を侵入者が当然見逃すはずもなかった。壁に張っている暖房用か何かの太い鉄パイプを壁から剥がし取ると、両手に握り一気にその距離を詰めてきていた。侵入者はカンダロの頭目掛けてそのパイプを振り下ろそうとする。対獣人戦において人間から処理するのは命令系統の破壊という大きな目的がある。基本的にはどの獣人も人間の命令で動いているからだ。


「っっち!

 何だこいつ早すぎる――!」


ルフトジウムの頭の中で一瞬にして沢山の思考が過る。デバウアーを引き抜いて切断するにも遅すぎる。片手を使って骨を覚悟に攻撃を防ぐか?もしそれでこいつの実力が俺を上回っていたら?撃退できなかったらカンダロを死なせることになる。ダメだこれも絶対に間に合わない。手を使わずに弾くには――となれば……!そしてその考えは実行に移された。


「っぐ……!」


とっさの判断でルフトジウムが下した手は自分の角で相手のパイプを弾くことだった。鉄と角が激しくぶつかると同時にルフトジウムの頭蓋骨が揺れ、意識が朧に包まれかける。ボキボキッと何かが折れる音と共に視界が真っ白になり、瞼が引き攣る。


「ルフトジウムさん!!」


しかし、守りたかった両腕とカンダロは無事だ。


「カンダロ……!

 てめぇいいから早く上がりやがれ……!」


カンダロを掴んでいた手から力が抜ける。しかしルフトジウムは決して離さない。ペアを守るのがAGSのポリシーだ。何より人間を守るのが獣人だ。ルフトジウムは歯を食いしばり、消えかけた意識を現へと縛り付ける。痛みは不思議と感じなかった。

 侵入者が追撃を何故かやめて、鉄パイプを利用して別の箱を開けていることも分かっていた。だがそれよりも大事なことは今はカンダロを守ることだった。


「うらぁああ!!!」


力を振り絞り、カンダロの巨体を列車内に戻すとルフトジウムは激しくせき込み、床に崩れ落ちた。頭から流れる血と、折れた角の断面から溢れる血液が床に直ぐに溜まり始めたことでようやくルフトジウムは自分が大怪我をしたことを知る。カンダロをさっきまで掴んでいた手が何か固いものに当たり、それが折れた自分の角だということを咄嗟に理解した。


「無事か……?」


折角綺麗に整えて、磨いて、自慢の角だったのにな……と思うことはあったが、それよりも人間の相棒の無事をルフトジウムは知りたかった。


「はい!

 なんとか!」


ぼやける視界内にカンダロがこちらに近づいてくるのが見える。


「でもルフトジウムさん角が――!

 血が――!!」


アタフタしているカンダロの肩を借りて立ち上がったルフトジウムは壁に背中を預けると次どうすればいいのかを迅速にカンダロに伝える。


「バカ野郎……!!

 俺の事は……いいから早く……。

 早く本部に連絡しろ……!

 急げ!!いいから!」


本部に連絡をして増援を要請するか、この地区を警戒区域として指定してもらえ、と続けようとしたが言葉は出なかった。


「わ、分かりました!!」


そして、逃げようとするカンダロを侵入者が簡単に逃がすわけもなかった。手負いのルフトジウムはもはや相手にならないと思ったのだろう。完全に無視して手に持ったその武器――大鎌のようなものを持って瞬発的にカンダロの首を刎ねようとその刃を振りかざす。


「うわあああああ!!」


しかしそうはルフトジウムがさせない。


「うるせぇ……よ!

 俺に任せて……早く行け……!」


ふらふらになりながらも戦う為だけに作り出された体を、全身を使ってデバウアーを大鎌の刃とカンダロの首の隙間に差し込めた。カンダロはその隙に逃げ出し、別車両へと移る。ぶつかりあった刃同士が火花を出し、その明かりでやっと侵入者の顔をルフトジウムは見る事ができた。


「てめえ……顔見たからな……!」


悪態をつくルフトジウムが見たのはまだほんの子供に見える獣人だった。灰色とワインレッドの髪の毛と大きな犬科の耳。赤と黄色のオッドアイには青色の輪が浮かんでいて、さらにモノクルを左の目にかけている。まるで大富豪の目を楽しませる為だけに可愛く、ありとあらゆる欠点をそぎ落とされて作られたような狼の獣人が、敵意と殺意をむき出しにしてこちらを睨みつけていた。


「っち……!」


あからさまな舌打ちを聞いてルフトジウムはニマリと笑う。


「っは!

 舐めんなよ犬っころ!」


ルフトジウムが幼い獣人に驚いたのも一瞬の事。単体で戦闘用獣人とやりあっている現状、この敵も間違いなく戦闘用獣人だと考えるべきだろう。何よりデバウアーよりも重い武器を片手で扱っているし、所々物凄いパワーを見せているのだから。


「全く面倒くさい事になったっス――!」


侵入者はデバウアーを横に蹴り払うと、お互いに引っかかっていた刃を外して後ろに飛び、ルフトジウムから距離を取った。






          -角が折れた日、初めての出会い- part4 End

ブックマークとポイントありがとうございます~~!!!

頑張って書いていきますのでどうかよろしくお願いします~!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ