もうやめて。これ以上、僕を苦しめないで。僕の心にナイフをつきたてて、遊ばないで。
もういいかい。まあだだよ。
もういいかい。まあだだよ。
もういいかい。まあだだよ。
もういいかい。。
こうやってね、お母さんは僕を捨てたんだよ。
返事は遠ざかり、聞こえなくなりいつしか、夜になり。
戦火の跡の、
貧しさか。
恵まれぬ子との離別か。
いっそ、産まずしてこの現実に向かわない選択肢を与えたもうと願うこともあった。
先の大戦で孤児になった僕は、死ぬ選択はなく生にすがる。
かっぱらいからはじまり、火事場泥棒、強盗、人攫い、薬の売買、、、、
そうしてでも生にすがりたかった。
今日も今日とて、生き抜いた。
こんな稼業だから恨みを買う。リンチにも合う。
何度も半殺しに合う。
この救いなき生にすがるは、ひとひらの希望の為。
この世で一つの家族。妹がいる。
妹と一緒に捨てられた。妹には立派に育ってもらう。飯も着る物も住むところも、学校も何不自由なく過ごしてもらう。
妹には、罪のことは伏せて飯を食わしていく。
そんなこんなで妹は一流の教育を受けて、国を動かす仕事に着いた。
妹は稼ぎを僕に分け与えてくれた。今まで苦労をかけた兄貴に、楽させてやりたいと。
妹には婚約者がいる。気さくな男で、どこの馬の骨ともしれない僕を兄と慕ってくれる。
妹は結婚し、子どもも産まれた。
妹家族と旅行に来た。
山間の静かなペンションだった。
かくれんぼしないか?と、妹の子どもを誘う。
子どもは家族全員でやりたいという。
みんなでかくれんぼをした。
『もういいかい?』子どもが鬼だ。
『もういいよー。』3人声を揃えていう。
『お母さん、お父さんみっけ!』
『おじちゃんいないねー。』
『お兄さんどこへ行かれたのか。』
『お兄ちゃーん!』
僕は誰にも見つからなかった。
なぜならこのおとぎはなしから隠れてみることで、
本当の時間に気づくから。
♦︎
『はーい、今日もお注射の時間ですよー。』
毎日、僕は頭をお花畑にされる。だってこんなの都合のいいおとぎばなしだから。
なんか、たぶんなんだけど、
幼い僕にとって妹は、ただの穀潰しだったからすぐに殺しちゃったみたいなんだ。