はじめまして。ゲームの裏側へようこそ。
色々終わるゲームが多いなぁと思って書きました。
私もスマホゲーム沢山やる人間なんですけど、もしも、ゲームのキャラがゲームの中で生きていたらきっと病んでるんだろうなぁって思いながら…。
いつか彼等が報われますように。(この話の中で)
「はじめまして。特待生。僕の名前はシャルティア・マグノリア。マグノリア学園長の息子で、君の案内役だ。これからよろしくね。」
幾度となく繰り返してきた言葉。
「僕、君の事が好きなんだ。」
気持ちのこもってない好きの言葉。
「愛してるよ。ふふっ 僕、初めてなんだよね。キス。」
何度も繰り返すファーストキス。
何度繰り返せばいいのかわからないチュートリアルに、特待生との恋愛劇。
もう、疲れた。
ここは魔法学園を舞台にした恋愛RPG。
乙女ゲームをしつつ、アクションも楽しめる、が、コンセプトのスマホゲーム。
魔力の強く、癒す力を持っていた一般人の特待生が、適正者たちの集まる魔法学園に通い、恋愛したり冒険したりする物語。
魔物が出るので特待生を中心として討伐に出る。これがいわゆるクエスト。
生徒達が隊ごとに分かれるのが編成。
新しい生徒に出会うためにする儀式がガチャ。
僕はメインキャラだから、チュートリアルからずっと特待生と一緒。
討伐も編成されれば必ず出かける。
僕は最初から割と強いキャラだから大体毎回編成されて討伐に出かける。
僕は王子様キャラとして人気を博していたから、選ばれる回数も多くて。
何度も何度も同じ敵を倒して。
何度も何度も随時追加されるシナリオ通り演じて。
何度も何度も僕を選んでくれた特待生と結ばれて。
何度も何度も、来なくなってしまった特待生を待ち続けて。
何、度、も、何、度、も。
「なぁ。シャル…。大丈夫か?」
「……何が?」
そう、声をかけてきたのは赤髪の俺様キャラ設定の奴。
俺様の癖に、悲しそうな目をして僕を見ている。
「俺は心配なんだよ。1番はお前だけど、他の初期からの奴らが壊れてしまいそうで」
そういう彼は追加キャラで。
まだ、繰り返す時間が短い奴で。
「大丈夫だよ。もう、6年だ。6年も続くアプリゲームなんて珍しいんだよ?光栄に思わないとね」
6年だよ?6年。
君に何がわかると言うんだい?
あぁ、彼も少なからず繰り返しているんだったね。
「いや。そうじゃなくて……。いやそうなんだけどさ。俺はまだ、2年目だから、お前等の苦労はわかんねぇんだけどさ………。
こう……その。
特待生との恋愛がもう嫌だっつって、男色に走る奴が増えてきたんだよ。初期キャラ以外は。他の奴らはそうやってストレスを発散しているのに、お前等はヤってない。なぁ。本当に大丈夫か?」
男色……。
確かに、そちらに逃げるのも悪くなかったかも知れないね。
女の子は特待生だけで十分すぎるくらいだ。
でも、僕達は逃げられないんだよ。
どんなに逃避したって。ね。
「大丈夫だよ。あと、君、俺様キャラでしょ?今の君全然俺様じゃないよ?
…………大丈夫。もう、きっと潮時だから。」
そう。潮時。
「潮時?」
だって、
帰ってこない特待生ばかりだし、
新しい特待生だって、
やってこない。
「うん。あぁ。ねぇ、聞いていいかな?」
そうなったら1つしかないでしょ?
「なんだ?」
でも、僕は最後まで。
「僕、笑えてる?」
王子様キャラとして笑っていないといけない。
「……あぁ。笑えてるよ。何時もの、お前の笑顔だ。」
俺様キャラの彼は笑っていってくれた。
「ふふっ。よかったよ」
大丈夫。
僕は壊れていない。
僕は彼に背を向けて歩き出した。
また、特待生に呼ばれているから。
「……何が大丈夫だよ。怖い顔して。
笑顔も、目が笑ってないんだよ」
『はじめまして!君が新しいキャラだね!
俺様なんて大変だと思うけど頑張ってね!
なんか悩みが出来たら聞くからさ』
俺が初めてこの世界に来た時、あいつは笑顔で迎えてくれた。
俺は嬉しかった。
でも。
………俺は、あいつに悩みを言える。
………じゃあ、あいつは?
あいつ…シャルは、誰に悩みを打ち明けてるんだよ。
他の初期の奴らだって、みんなシャルに相談なんてされた事ないって言っていた。
大変なのは俺様じゃなくて王子様、だろ。
特待生と一緒にいるシャルは、ちゃんと笑えていた。
『○月□日。本アプリのサービスを終了する事になりました。6年と言う、長い間ご愛好頂き誠に有難う御座いました。
サービス終了までの短い間ですが、お楽しみください。尚、申し訳御座いませんがオフライン版のリリース予定は御座いませんが、アプリを詰め込んだゲームブックを発売予定です』
突然流れたアナウンス。
響き渡る歓声と、嘆きの悲鳴。
そんな中僕は虚無を見つめていた。
あぁ、やっと、繰り返されるチュートリアルも、シナリオも、恋愛も終わるんだ。
やっと、自由だ。
やっと、王子様から、開放される。
「やっと………」
でも。
ゲームが終わっても、この世界が終わる事は無いし、何度誕生日が来ても、歳を取らないこの世界で、僕は何年 生き続ければいいんだろう。
「あれ?」
僕らは自由になったはずなのに。
僕らはずっと開放されない?
ずっと、一生、特待生の来ることのない世界で、生き続けるの?
じゃあ、ここは。
「何の為の、誰の為の世界なの?」
そんな僕の問いかけに答えてくれる人は、いなかった。
最後まで1人な主人公でした。
みなさんならどんな想像しますかね?
私はこういう悲しい系な想像になりました…。