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第12章 その5 奮戦!そして・・・

その5 奮戦!そして・・・


みんなの声が収まると同時に最初の指示。


「みんな、いいですね・・・集団魔術戦用意!レン!」


「うん・・・精神結合マインドリンク!」


 学生杖ワンドを一振りして唱えたレンの術式は・・・わたしたち20名の精神の表層を接触させるはずです。


 ですが、心を合わせるためのこの術式は、相手を信頼していないと発動しないっていう、おおいに矛盾した術式でもあります。


 表面とは言え、相手の心に触れるんですから、抵抗するのが当たり前。ですが・・・


「みんな・・・聞こえるわね。」


 思念波を送ります。


「・・・成功よ、クラリス。」


 わたしたち全員、うっすらと白銀色の光に包まれています。


 光でつながってるみたいです。


 レンは当然っていう感じです。


 ですが2班の5人だけならともかく、クラス20名で。


 練習はしていたものの、実戦ですぐ使えると言うのは、やはりすごいことです!


 きっと、ガクエンサイのためにみんなで苦労した時間が、わたしたちの団結を一層高めたのでしょう。


 あの苦しく、とても長く感じた日々も無駄ではなかったのです。


「・・・アントともミライを通して今、通信くらいは。」


「なんでアントと?・・・とくに話すことはないけど・・・ムリしないでって言っておいて。」


「クラリスこそムリしちゃって。」


 レンのくせに。


 今はいちいち動揺できないのです。


 みんなと共有している部分があるんですから。




「戦隊長閣下!」


 左から20名くらいの市民の集団と、それを追ってくる小型巨人3体。


「あそこには中級魔術師の教官たちが十分に布陣していますわ。」


「うちらが手出しせんでも、安心やろ。ほっときぃ。」


 一瞬で伝わる思念の流れで、デニーの観察力に「探知」、シャルノの判断力と指揮能力、エミルの直観と計算・・・今はみんな、わたしにつながっています。


「右からは・・・8名と手負いの中型巨人!」


「行こうぜ!」


「まだ早い。教官たちが足止めしてから。」


 敵を見て、燃える闘志はジーナ。


 冷静な戦意はリト。


「足止めなんか、幻覚イリュージョン一つで十分よ。」


「ファラのフォースで転ばしたら簡単だよぉ~♡」


 アルユンの「幻覚」にファラの「加力」も今は自由に使えます。 


「まだです。みんなの魔力はすごいけど、それでも限界はあります。ちゃんと待ち伏せの人に分担してもらって。」


「クラリス、あなた、自信ないんじゃない?」


「アルユン!あたいはクラリスを信じてるよ・・・って口で言うほどアルユンも。へへぇ~。」


「バカ、何言ってるのよ!」


 明るく前向きなリルと、ちょっとネガティブなアルユン。


 意外に仲良しさんなんですね。


 新鮮です。


「あのねぇ・・・脇役がいるからファラたちがもっと目立てるって思うの~♡」


 自己チューなモノの言い様ですが、役割を理解しているようです。


 一周まわって、でもいつも正解を出すファラファラは、どんな頭の中なんでしょうね?


「ですが・・・敵前でこんなに落ち着いているわたくしたちは・・・。」


「なんか、百戦錬磨って気分やな。」


「ん。同意。」


 学生にしては経験豊富。


 乙女としては残念な経験ばかりですけど。


 でも、そんなに戦い慣れてるって程でもないとは思いますが?


「・・・それは・・・クラリスがいるからなの。あなたの「想い」がみんなに伝わってるから。みんな安心して戦いに集中できるの。」


「レン・・・それはわたしが「度胸担当」ってことですかっ!?」


 それは乙女としては大いに問題なのです。


 洞窟の中じゃ肉体労働担当だったし。


 叔父様に顔向けができないのです。


「なんで、リンクしてるのに、そんな誤解するかな、クラリスは。なんかのトラウマ?」


 むかっ、です。


「はいはい、閣下。来ましたよ、大物です。と言っても」


「中型ですけど。はいはい、メガネさん。」


 わかってますよ、です。


 あなたともリンクしてるんですから。


 東側から、ワグナス教官が市民の集団を誘導。


 それを追って中型巨人・・・6体!待ち伏せしている教官方が早速迎撃と足止めを開始していますけど、市民の集団は老人子どもを守っていて・・・このままでは追いつかれます!


 さっきの二群の巨人たちは教官とパン魔女に任せます。


 若くて火力のあるわたしたちは遊撃隊・・・機動戦力の役割です。


「救援に向かいます!」


 まずは接敵。


 わたしたちが接敵する前に、近くの教官方が「魔力槍」などの攻撃呪文、「泥生成」などの足止めで、援護しています。


 きちんと距離を保ち、巨人から見えにくい場所からの術式です。


 巨人たちは傷つき、遅れ、市民との距離が少し開きます。


「俊足!(ダッシュ)!」


 ・・・こんなマニアックな術式なんて使えたんですね、アルユン・・・。


 まぁ今は助かりますけど。


 リンクしている間は、誰かが覚えている術式は共有できます。


 そしてその術式を増幅するのもいつもよりずっと低コスト。


 わたしたち20人は一団となって駆け付けます。


「みなさんは、そのまま直進してください!学園は安全です。」


 お礼を言って走っていく市民の皆さん。


 かならず守ってみせますから。


 ・・・もう射程距離です!


 「各班、魔力矢!合図で斉射します!」

 

 4つの大きな「魔法円」が浮かびます。


 そして少し遅れてできた白銀の巨大な4本の矢。

 

 特訓の成果ですね、わたしたち2班の魔力矢が一番・・・それとも経験済みだから?


「クラリス!分析は後にして!」


「ゴメン!アルユン!」


 うっかり漏れてました!


 しかし、よくわたしの心を読みましたね、あの子。


「用意・・・まだよ・・・溜めて・・・放て!」


 1体の巨人が教官方の援護射撃に耐えかねて遅れ、もう1体が「泥沼」にはまって遅れます。


 残った4体めがけて、わたしたちの「魔法矢」が飛んでいきます。


 きれいな白銀のラインを残して飛んだ先で、額や心臓など致命的な部位を射抜かれた巨人たち大きな音を立てて倒れていきます。


「続いて残った2体にシャルノとファラファラは「火撃」を連続詠唱!リルは「魔力供与」!」


 二人の「火撃ファイアショット」は、火属性の精霊魔法です。


 一撃の威力は「魔力矢」を上回るのですが、対象との相性によって威力が増減します。


 ですから、軍では一般には「魔力矢」のほうが使い勝手がいい、と教えられます。


 ただ、シャルノもファラファラも、この「火撃」に熟練していて、簡易詠唱でも充分に強力なのです。


 そして連続射撃して消費する魔力はリルを通して、わたしたちから少しずつ集めて二人に補充されます。


 結果的に全員で「魔力矢」をつくるより消費する魔力は抑えられるのです。

 

 数秒で黒焦げになって崩れる2体。


 ここまで焦げくさいにおいがきます。


 みんな、うえっ、です。


 やはり使い勝手は「魔力矢」の方がいいかも。


「対抗魔術戦の切り札だったけど・・・どんどん使っていくわよ!」


「はいっ!戦隊長!」


 本当は、ガクエンサイのための・・・それが少し残念。


 でも、今は、みんなを助け、街を守るために使えるんです。


 そう言い聞かせて、わたしは次の目標を探します。


 



 出陣してから、かなりの敵を倒し、数えきれない市民を学園に誘導しました。


 わたしたちの魔力も残りわずか。


 今は・・・1722。


 かなり能率的に戦ったつもりでも2時間もたない。


 これが魔法兵の限界でしょうか。

 

 ・・・キーン・・・コーン・・・カラーン・・・鐘の音が聞こえます。


「未だわたしたちの学園は健在です!」


「では一時撤退ですわ。」


「潮時やろ。」


「同意。」


 人影も随分見ていません。


 潜伏して布陣する教官方も交代しています。


 わたしたちも一度学園にもどって休息と状況確認が必要でしょう。


「おっと帰り道に中型1体です。」


 まぁ、1体くらいなら・・・って。


 あれ!?


「ここは西エリアとの境界付近でしたか・・・。」


 飛行して接近するのはメルとアントです。


 見つけたレンやリルが手を振り始めます。


 エミルとシャルノからは微妙な感じが伝わってきます。 


 ところが、上空から中型巨人めがけて、そのメルがいきなり急降下します。


「急降下爆撃なのです!」

 

 って声まで聞こえます。


 そして空中からアントが投下されたのです。


 ポイって。


 ついにニセモノを投棄したんですか!


 どっか触られたとかで、ガマンできなくなって?


 それにしたって無茶苦茶です!


「ええええっつ!」


 って、わたしたち20名が一斉に悲鳴を上げます!


 ですが


「ひゃっほう~!」


 そこに、驚いて心配しているのがバカバカしくなるような、楽しそうな声。


 子どもですか!


 年上のくせに!


 ドグワアッ!


 槍を抱えたアントは見事、巨人の頭頂に突きたてるのです。

 

 ですが中型巨人の頭蓋骨は固くて分厚くて、あの一撃ですら致命傷にはならないんです。

 

 うでを振り回して、暴れる巨人。

 

 その頭上で左手一本で槍にしがみつき振り回されるアント。


 もう見てられないのです!


「みんな援護を・・・」


 言いかけたわたしの視界の隅に


「ニセご主人様ぁ~」


 甘ったるい声をあげてアントに近づくメルの姿・・・なんか、これもわたしの「やる気」を著しく削ぐのです。


 メルが近づくと、アントは槍を手放しメルに抱きつきます。


 その顔がちょうどメルの膨らみかけた胸に抱えられたのは偶然なんでしょうか?


「もう~ニセご主人様のHぃ~」


 ・・・いけません。


 わたしたちの戦意が急速に低下していていくのです。


「あれが・・・本当に・・・その・・・わたくしの」


「うちの・・・マジか?」


 ええ、あなたたちの許婚者の正体ですよ?


 二人ともアントとの接触を避けていてわからなかったでしょうけど。


「え?クラリスの従兄では?」


 事情を知らない、無垢なリト。


 その声を聞くと罪悪感がこみ上げます。


 ですが知らない方がいい、この世にはそういうこともあるのです。


「・・・ははは。そういう設定になってたんですね。」


 デニーがかろうじて乾いた声で笑ってます。


 ですが、今や「戦意」とか「やる気」とか、わたしたちの前向きな意志が限りなくゼロに近づいていきます。


「・・・ほっといて行きましょ。」


 そう言いかけたわたしです。


 が、その前には決着がつきました。


 アントを左手で抱え、右手でメイジスタッフを構えていたメルがその左手を離します。


 左手一本でメルに抱きつくアント。


 メルの左手は、巨人の頭頂部に刺さった槍をつかみます。


 そして!


雷撃サンダーボルトなのです!」


 メルの前の大きな魔法円が雷となって、しかし宙を走るのではなく左手から槍を伝わり、直接巨人の脳に流れ込んだのです!


 槍が火花を散らし、輝くさまは場違いな花火のようです。


 そして、頭頂から煙を上げ、巨人が崩れ落ちるのです。


 でも中級術式で、たった一撃で・・・。




「見たか!必殺サンダーブレイク!」


「メルとニセご主人様の合体技なのです!」


 ・・・目の前の、このとても残念な二人組をどうにかしてほしいんですけど。


 わたしたちを見つけ、空中からわざわざ降りたったアントとメルです。


「基本的に、あなたたちは戦わないって方針ですけど。」


「ごめんよ、クラリスさん。でも僕はだれかと合体技なんてやるの初めてだから、メルちゃんにお願いして一度だけやらせてもらったんだ。」


「いいえ。メルも本当のご主人様とはこういうことができなかったので、新鮮なのです。」


 まぁ、若いせいか、身体能力は高くないくせにアクションシーンが多いのは認めますけど。


 でも、今だって落っこちて、槍を刺して、しがみついただけでしょう。


「それに・・・。」


 ふっとなにかを言いかけてやめたアント。


 ですがわたしは気づいてしまいました。


 そこに生きている人はいない。


 だからデニーの「探知サーチ」には反応しない。


 でも、アントが逸らした視線の先には、かつて人だったものが・・・おそらくは家族が抱き合い、かばい合いながら倒れていて・・・巨人の死体の近くに奇跡的に残っていました。


 そして、ホンの微かに歪んだ、無念そうな彼の唇。


 徴兵された兵士のクセに、本来、殺生を好まない彼なのです。

 

 この子は、こんな人です。


 素直じゃないし、手先が器用なくせに生き方は不器用で、賢いはずなのにおバカです。


 でも、こんな時はとっても・・・・・・かわいいって思うのです。


「あ!」


 リンク!?


 ・・・みんな気づいてしまった?


「・・・大丈夫。アントの正体とか、クラリスの、そのつぶやきとかは。でも、あなたが見たものは、みんなも見た。だから、アントがなんであんな無茶をしたかは気づいてるの。」


 周りに目をやると、さっきはあんなに酷評していたシャルノもエミルも、ちょっと違う目でアントを見ています。


 あららら・・・コホン、三者同盟、覚えてますか?




「とりあえず、北街区の住民は、あらかた避難したと思うよ。学園は市民で「すし詰め」で、満員電車並みになってるかもしれないけど。」


 すし詰め?満員電車?


 よくわからない「例え」に、わたしたち20人は、一斉に首をかしげて「はてな」です。


「うわっ、すごいシンクロ率だ!これが400パーセント越えってやつか!」


 ふたたび意味不明の言葉を繰り返すアントです。


 そんな彼を、ため息をついたメルが抱えて飛ぼうとします。


 わたしたちも学園にもどらなくては。


 大勢の人を助けた、そんな充足感がわたしの、いえ、みんなの胸にあふれています。


 


 ですが。


 あたりに響き渡る「拡声」のアナウンスが、わたしたちに非情な現実を突きつけるのです。


「こちらはヘクストス守備隊観測部である。市の城壁に特大種と大型種が接近中だ。もう長くは持ちこたえられない!城壁付近の北街区の市民は、避難せよ!繰り返す、北街区の市民は避難せよ!」


 なぜ?


 軍の足止めが間に合わないのでしょうか?


 ですが・・・北の魔法鋼像は最強のゴーレムのはず。


 それなのになぜ、巨人が接近するの?


 ヘクストスを守るゴーレムは現れないのですか!?



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作者:SHO-DA 作品名:異世界に転生したのにまた「ひきこもり」の、わたしの困った叔父様 URL:https://ncode.syosetu.com/n8024fq/
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