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第11章 その20 潜入!となりのガッコウ!?

その20 潜入!となりのガッコウ!?


「ファラファラ?あなた、なんだってこんな服を持っているのですか?」

 

 ファラファラは、パントネー魔法女学園の薄い緑色の制服を着て、ニッコリです。


 そのユルカワな仕草に騙されるのは、おバカな男子だけで十分なのです。


「ふふ~。これはねぇ・・・ファンのみんなに学校を特定されないためなの~♡」


 学校を特定するファン?


 わざわざそんなのを探る人はファンというより、ストーカーさんではないでしょうか?


 そもそもファンってどういうことですか?


「レンは・・・そんなファラの痛いファンなんかは、見たくもないの。」


 同室のレンのおかげで、ファラファラが他校の制服を複数所有しているという貴重な情報を入手出来ました。


 これは僥倖というものです。


「戦隊長・・・私はこれでいいんですか?」


 デニーはやせすぎで、ぱっと見、男の子に見えなくもありません。


 白に近い灰色の髪も、短いし。


 そんな彼女はクレオさんにお願いしてこっそり入手した、エクスェイル教官殿の現役時代・・・つまりエスターセル魔法学院、当然男子校・・・の制服を着ています。


 寸法を直すのはリルがやってくれました。


「デニー、うちの制服より似合ってるよ~。」


 ってリルに言われたデニーの情けない顔は、当分忘れてあげません。


「クラリスぅ~、ヘク女の水色も似合うね~♡」


 そ、そうでしょうか?


 水色の髪のレリューシア王女殿下にエリザさん、オルガさんの三人に合わせてわざわざ作られたという制服です。


 赤毛のわたしでは、どうなんでしょう?


 そう思っていることが顔に出たのか、ファラファラが「これ貸したげる~♡」と言って


 わたしに水色のウイッグをかぶせます・・・って、なんでこんなものまで準備しているのでしょう、ファラファラは?


 おしゃれ用?


 それとも、これもファンの目を欺くための?


 聞くのが怖い気もします。


「メガネもナカナカお似合いです!」


 デニーは、余ってるからと言って、わたしに赤いフレームのメガネを押し付けたのです。


 ホントに度が入ってない・・・あの子は何の為に眼鏡をかけてるのでしょう?


 この子に限っては、おしゃれでは絶対にありません。


 デニーはいつもの黒縁メガネではなく、シルバーのフレームです・・・あれでも変装のつもりでしょうか?


 レンはファラファラに髪を三つ編みにされて、いつも以上に幼く見えます・・・それだと、かえって子どもに見えて怪しまれるんじゃあ?


 そんな不安を抱えながら・・・。




「では・・・突入します!」


「閣下・・・潜入です。突入は目立ち過ぎです。」


 そうでした・・・どうも調子がでません。


 ここはパントネー魔法女子学院・・・あの性悪陰険腹黒女ジェフィの通う学校です。


 今日、わたしたちは同じ魔法街にある他校の情報収集のため、やってきたのです。


 戦いには諜報活動が必須!


 ましてあの謀略女と対等に戦うには、最低限でもここで優位に立っておきたいのです。


 「敵を知り己を知らば百戦危うからず」です!


 そこで、いくつかのルートから情報を入手する手はずをつけたものの、直接各校の雰囲気を知りたい、と思ってしまいました。


 そこに丁度良く、ファラファラが他校の制服を持っている話を聞き、一気に突入!


 いえいえ、潜入することになったのです。


 ファラファラはパン魔女、デニーがエス魔(男装)、わたしがヘク女(眼鏡にウイッグ)、レンはそのままエス女魔の制服(ただし三つ編み)で、校門外に並びます。


 今は放課後ですが、パン魔女は課外授業で、うちより一時間多い実質六時間目の授業とか。


「いいですね?わたしたちは対抗魔術戦を取材するため市内の魔法学校が合同で編成した特別取材班です。」


「あのね~、その設定、ムリあると思うの~♡」


「でも、エス女魔だけで来るよりは、まだ言い訳には聞こえますよ。もっとも「真実検知」使われたら困りますけど。」


「そんな捜査系の術式、一応は軍の息がかかったパン魔女で覚えないんじゃない?あなたじゃあるまいし。」


 探偵気どりのこのメガネは、軍の制式魔術なんかに興味を示さず、もっぱら「探知」「検知」の捜査・捜索系ばっかり覚えて・・・趣味に走りすぎなのです。


 クラスメイトの中では、きっと一番叔父様とウマが合いそうです。


 二人が趣味に興じた話をしているところを想像し、デニーから押し付けられた赤いフレームのメガネに、水色のロングのまま、額を抑えたい気分です。




 しかし、いきなり第一関門。


 校門には立派な体格の教官が見張っているのです。


「うちと違って、閉鎖的ですね?パン魔女って・・・来る者を拒んでるっぽい感じです。」


「まぁ、考えてみれば、軍学校のうちの方があんなに緩くていいのかって気もします。」


 それでも外部からの魔法は魔法障壁で防がれていますけど。


「そう~?ファラはエス女魔は開放的だからいいと思うの~♡」


 ・・・確かに何を考えているかわからないこの子や、探偵気どりのデニーがいきいきしていられるのは、うちの校風なのでしょう、創立一年目ですが、こんなに自由な軍学校っていいんでしょうか?


 ・・・いえ、いいんです! ビバ、エス女魔です!


 なんて密かに考えていたら、ファラファラが一人校門に向かい、慌てるわたしたちを尻目に


「こんにちは~教官殿♡ わたし転入生なの~。今日は手続きに来たの~♡」


 と身分証まで出して、そのまま中に入っていったのです。


 え、ほぼ素通り?


 一連の流れに違和感はまったくなく、校門に居た怖い顔の教官はおろか、その正体を知っているわたしたちにすら、自然です・・・オソロシイコ、なのです。


「ええっと・・・いきなり段取りと違うんですけど・・・どうします、閣下?」


「とりあえず・・・閣下は禁止!」


 はっと気づけば、今さらですが、なんでみんなで、いろんな制服を着て、ゾロゾロ潜入なんかしなくちゃいけないんでしょう?


 潜入する学校の制服を着た生徒一人で充分なのでは?


 そう思ってしまたのが運のツキなのか、そもそもこの計画に無理があったのか、単にわたしがウソが下手なせいか・・・当初の計画を思い出し


「・・・わたしたちは対抗魔術戦を取材するため市内の魔法学校が合同で編成した特別取材班です。今日は貴校の取材に来たのですが・・・。」


 そう話しかけたものの、一音発するごとに、すごい速度で教官の表情が悪化していきます。


「身分証は?」


「・・・忘れました。」


「わたしも。」


「・・・。」


 他校に変装している手前、エス女魔の身分証を出すのはアウト。


 エス女魔の制服を着たレンも、この流れでは出せません。


 ファラの身分証って、どうなってたんでしょう?


「真実検知!」


 ウソ!


 問答無用ですか!?


 術式を簡易詠唱した教官を前に、わたしたちは大慌てで走り去ります。


「人をあそこまで疑うなんて・・・なんて教官ですか!」


「いや・・・閣下、あれは仕方なのでは?」


「でも・・・校門に見張りとか、いきなり真実検知の簡易詠唱とか・・・レンはなんか息苦いって思うの。」


 待ち合わせ場所・・・もしもの時に備えて・・・の喫茶店で、ケーキセットを食べるわたしたち三人です。


 デニーはアップルパイ、レンはショートケーキ、わたしはチーズケーキです。


 お茶はみんな紅玉茶。


 とは言え、デニーもレンも、大都市ヘクストスにいながらこういうお店にはあまり入ったことがないそうです。


 今日はわたしの「おごり」ということで、怖気づく彼女らを半ば強引に店に入れました。


「ホントにいいんですか?ごちそうになって・・・。」


「二人には日頃お世話になってるし。デニーには昨日の作戦案のご褒美。レンには一日早くルームメイト解消のお別れのあいさつ・・・そんなところです。」


 一応、班長としての立場もあるのです。


 二人と比べれば、軍属としてのお給料も自由に使えるわたしですし、これくらいは。




 そんなこんなで、わたしたちはさっきの失敗談やら、パン魔女の印象やら、自分たちの学校のことやら話します。


 気が付くと・・・


「しかし・・・ファラファラ、遅いですね。」


「何かあったんでしょうか?」


 もう一時間はたちます。


 少し心配になったわたしとデニーですが


「・・・ファラなら、きっと平気なの。」


 半年以上ルームメイトのレンは全然気にしていません。


 それは信頼というより、単に何かを諦めてるって感じの言い方なのです。


「やっほ~♡」


 杞憂だったのか、案の定だったのか、結局その後ファラファラがすぐに合流し


「あたしは・・・チョコケーキ♡」


 ちゃっかりわたしにおごらせるのです。


「ねえ、ファラファラ。さっきのは打ち合わせと違うんだけど?」


 そうデニーが言い出すと


「あら~でも、みんなと一緒じゃ100パーセント失敗しそうだし。実際にそうだったでしょ♡」


 ぐうの根も出ません。


「そうです。それはあなたの判断が正しかったのです。ですが・・・・」


「なぁに♡」


 ・・・・この小首をかしげる愛らしいしぐさに騙されるのは、おバカな男子と堅物の教官だけで充分なのです。


「あなた・・・ひょっとして、最初からみんなで潜入なんてムリ・・・そう思っていたんじゃあ?」


 わたしの追及に驚くデニーですが、意外にレンは平然としてます。ファラファラに至っては・・・。


「そうよ~♡ だって、みんな違う制服なんて不自然だし、メンバーがウソの言えない人たちばかりだし♡」


 ぐさ、です。


 作戦ミスに人選ミス。痛い指摘です・・・。


「わかっていたらそう言ってよ~」


 デニーが情けない顔で言うのも当然です。


 悪知恵参謀の二つ名がすたる、というところでしょう。


「ええ?だってえ♡」


 眉を顰め、首を左右に振る仕草を見れば、まるで追及するわたしたちが悪人になったようなのです。


 なぜか罪悪感すら感じます。それは理不尽なのです。


「・・・どうせ、みんなで変装するのが楽しかったんでしょう?ファラ。」


 ぼそっとつぶやくレンの声。それはまさか、なのです。しかし、


「さすがルームメイト♡ レン、かわいいのぉ♡」


 そう言いながら、レンの三つ編みにした髪をナデナデするファラファラ・・・あきらめ顔のレンを見ながら、わたしは憮然とするのです。


 今日一日、わたしたちはカノジョの趣味に付き合わされていた、ということなのですか!?


 そのユルカワな雰囲気に騙されたのはおバカな男子だけではなかったのです!


 すっかり頭を抱えるデニーとわたしを見て、ファラファラは


「でも、次のヘク女は、みんなで入れるよ~。LET‘S GO♡」


 かわいらしく微笑むのです・・・これ、信じていいんでしょうか?


 


 反省します。


 わたしは、ジェフィの謀略に敗れ、あせっていたのでしょう。


 そんな気持ちを、ファラファラにつかれて、最初からこうなるように誘導されていたように思います。

 

 こういう謀略戦は、以後、ファラファラにもかなわないことを自覚しました。

 

 しかし・・・この子、ジェフィほどの腹黒さはありませんが、考えが全く読めません。


 できることなら、今度ジェフィと「タイマン」で謀略戦やって欲しいって思っちゃいます。

 

 どちらも笑顔ですが、お腹の中はかたや真っ黒、かたや空っぽ・・・それは暗黒対空虚というか、ゴジラ対ガメラというか、ブラックホール対世界の深淵というというべきか、いずれにしても恐ろしい勝負になりそうです。


 その場にいたいような、いたくないような・・・。


 


 結局、ファラファラの言う通り、ヘク女は校門どころか内部もフリーで行動出来ました・・・これはこれで自由過ぎて問題では?

 

 どうも厳格なパン魔女に対し、自由過ぎるヘク女といった感じです。


 一通り諜報活動を終えたわたしたちは、早速学園に戻り、集めた情報を分析し、まとめる作業に入りました。


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作者:SHO-DA 作品名:異世界に転生したのにまた「ひきこもり」の、わたしの困った叔父様 URL:https://ncode.syosetu.com/n8024fq/
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