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第11章 その6 たこ焼き隊 VS 2班(リトは敵側)

その6 たこ焼き隊 VS 2班(リトは敵側)


 第二回クラス会議の時の計画書は不合格。


 そして今再提出の計画書を見ましたが・・・。


「だめです。ジーナ。こんなずさんな計画では、あなた方の遠征は、いえ、具材調達は認められません。」


行く、見る、勝つ、ついでに焼いて食う・・・こんなの「子どものお使い」ですらありません。


「なんだってぇ・・・いいかい、クラリス。俺たちはもう決めてるんだ。計画性とか安全性とかくだらないもんで足止めしないでくれ!」


「安全性がくだらない!?そんなことを言うから認められないのです!」


「もう船の手配も全部終わってるんだ。資金の援助ももらっちまった。その相手に義理を欠くわけにはいかねえだろ!」


「義理を欠いてもなんでもダメです。相手にはわたしも謝りに行きますから!」


 ・・・まあ、謝るのは叔父様について行って慣れていますし。


 だいたい計画がずさん過ぎなのです。

 

 これではとても認められない、というのは委員の点検担当デニーならずとも思うことです・・・もう一人のエミルは・・・あれ、困ってますね?


「だからぁ、俺たち4人なら、大丈夫だって。だいたい俺一人でも・・・お前自分がレベル5魔術士だからって、俺たちをなめるなよ。実戦じゃ俺はタイマンでお前に勝てるんだぞ!力づくでも許可してもらうぜ!」


 わたしより頭一つでは済まない大きなジーナです。


 ですがトロウル相手に戦った身であれば、今さら人間の大きさなんか平気なのです。


 ならば、腕ずくでも、とも思いましたが、少し考え直します。


「ジーナ。あなたの戦いは、あなたたち4人の戦いなの。一対一ではわからないわ・・・分かりました。そこまで言うなら、あなたたち模擬店部門4人と、2班4人の模擬戦で決着をつけましょう。」


「・・・正気か?それこそ無謀だ。お前との戦い、タイマンなら楽しみだが、リトがこっちに入っての模擬戦?残った雑魚で勝てると思うのか!てか、戦いになるのか?」


「雑魚?2班に雑魚は一人もいません。ではわたしたちが勝てば中止で異論なし、でいいですね。」


「問題なしだ。いつやる。」


「時間がありません!今からでも!」


 ・・・さすがに今からは止められました。明日に決定です。




「班長閣下ぁ~あの4人相手に勝負は無謀ですよ~」


 デニーが泣きついてきます。うるさいのです。


「リルはオッケーだよ。クラリスに任せてるから。」


「・・・レンも。でもリトと戦うのはちょっとイヤ。」


 わたしが魔術士レベル5としても、デニーとレンはレベル2。


 リルに至ってはレベル1。


 総計レベル10は、模擬店一行のレベル総計14と比べると大いに劣るのです。


 しかも、もしも至近距離で遭遇した場合、白兵戦NO1のリトや大きくて「強化」にも長けたジーナがいます。


 もともと小柄で、白兵戦はリトに頼っていた2班は圧倒的に不利です。ですが・・・。


「模擬戦の運営はわたしたちに任せてもらうわよ、クラリス。」


「ボクたち対抗戦部門のいい練習だよ。エミルも手伝ってね。」


 もう後には引けませんし、あの一行の鼻っ柱をへし折ってあげないと、クラーケン退治なんて危なくて見逃せないのです。


 そして翌朝。




「パオオ~ンッ」


 ズシン、ズシン。


 高い!


 視点が高いです!


 いくら海上戦のイメージでも、こんなに高いんですか!


 座っていても、視点の高さはきっと3m以上はあるでしょう。


 それでも歩幅が大きいせいか平地のせいか、思ったほどは揺れには悩まされませんが・・・。


「いいんちょおかっか~!なんでこうなったんですか~!」


 デニーの悲鳴が響きます。


 いえ、悲鳴ならわたしの方こそ上げたいのです。


「きゃはははあ!やっほう~!」


 リルはご機嫌です。


 リルだけは、と訂正します。


 一歩一歩動くごとにリルの胸が揺れていると思いますが、見る余裕もありません。


 でもこの状況で笑えるリルは心強いのです。


 最近ではすっかり2班のムードメイカーです、


「え~ん、え~ん・・・高いよ~揺れるよ~怖いよ~。」


 レンはもう泣いてます。


 本当にごめんなさい。


 まさか、こんなことになろうとは・・・見通しが甘かったという言葉すら足りません。


「はあっははは!いいじゃねえか、いいじゃねえか!クラーケン退治もきっとこんなもんだぜ!」


 大きさだけなら、そうかもしれません。


 敵ながらこの状況で高笑い出来るジーナに脱帽です。


 あの豪胆ぶりはたしかに見習いたい気も・・・するようなしないような?


「意外に揺れない。」


 敵に回ったリトは冷静かつ勇敢。危険なのです。こわいのです。


「・・・。」


 無言でわたしをにらむアルユン。


 わたし、彼女になにか悪いことしたでしょうか?


「あ~ああ~~!一度叫んでみたかったのぉ~♡」


 何か間違ってる気がします。


 ファラファラはいつもの調子です。


 ですがあの無邪気を装う姿に騙されるのは、おバカな男子だけで十分なのです。

 

 ズシン、ズシン・・・


「パオ、パオオオ~!」


 夢なら覚めて欲しいのです。


 ここは学園の室内演習場なのですが・・・まさかこんな設定があったとは・・・叔父様のバカ。




「戦象戦!?」


「そうですわ。本来クラーケン退治を許可するかどうかの戦いであれば海上戦が最もふさわしいのですが、さすがに南方戦線を基本任務としている軍の態勢で、海上戦の設定はまだ未登録でしたの。」


「で、ボクたちが一番近い条件を探したんだ。一行が同じ乗り物に乗って、揺れながら、低速度で移動して戦う・・・この条件で適合したのが、戦象に乗って戦う一騎打ちだ・・・一騎打ちでイイいのかな?」


 一象打ち?・・・いえ、騎乗する動物が象と言うだけの一騎打ちでしょう。


 しかし、よくもまあ、こんな設定があったモノです。


 しかも、演習場にあったのは、大きな四足型ウッドゴーレム・・・背中に騎乗用の台座まであります。これも?


「そうや。フェルノウル教官、ホンマに手抜かりナシや!ちゃんと体感できる乗り物まで用意しておった・・・めっちゃソンケ~するで。」


 こんなところに手を抜かないより、もっと大切なことを優先してほしいと思うわたしの心の叫びは、あの状態のエミルには届かないでしょう。


 そして、実際にわたしたちが騎乗し、魔法装置を起動すると、ウッドゴーレムはまるで本物の象・・・見たことありませんけど・・・のように見え、雄たけびを上げながら動き出すのです。


 もっとも本物の戦象はメスだそうなので「雄たけび」はどうなんでしょう。


 ただし本物の象より、騎手が操作しやすくなってるのだそうです。


 わたしたちの仲間でリルが喜んで騎手を引き受けます・・・確かにちゃんと言うこと聞いているようです。


「クラリス~、あたい、これ欲しい。教官にお願いしてよ~!」


 自家用象ですか?


 さすがの叔父様もそれは許可しない気がします。


 そもそもまだ本人、行方不明ですし・・・?




「では、開戦!」


 ヒルデアの合図で、戦闘開始です。


 意外に広い台座には、人数分の弓、弩、槍、投槍、円盾などがあります。


 それに投げ網?大楯も。


 それと、象の長い鼻は、クラーケンの触手を仮想するため攻撃に使えるとか。


 牙も船の衝角ラムの代わりに使ってもいい、と。


 ゆっくり移動していれば、座った状態で呪文の詠唱は可能な気がします。


 戦い方に、いろいろ幅がありすぎて、急に今考えるのは難しいです。


 まずは常識的にいきます。


 遠距離戦からです!


「リル、左方向に敵を捕らえて、大きく左周りに移動して!」

 

 わたしは「回避ミラージュ」「防御プロテクション」を略式詠唱で発動し、レンとデニーには左側に大楯を備えさせます。


 守りを固めるのです。


 一方たこ焼き隊も同様に左回りです。


 巴戦、という形に似ています。


 が、向こうは攻撃重視。


 早くも弩矢が飛んできます。


 ざっと100mでしょうか。


 ですが、象の上で弩に矢をつがえるのはわたしたちには無理なのです。


 女子の身で、腕力だけで弩に矢をつがえるとは・・・向こうのジーナがやってるような力業は望めないのです。


火撃ファイアボルト♡ウフ♡」


 語尾のハートマークには不似合いな強力な攻撃魔術が飛んできます。


 ファラファラの簡易詠唱です。


 大楯が防いだものの、次も防げるかどうか。


 着弾の大きさが予想以上です。


 少し遅れて略式詠唱の「魔力矢マジックアロー!」です。


 アルユンは象を攻撃しています。


 体力の大きい象ですが、いつまでもつか・・・。


 アルユンは一見地味な攻撃をひたすら続けてきます。


 支援・幻術系の術式が得意だとおもっていましたが、「魔力矢」の威力も強い・・・しかもいつの間に略式詠唱を。

 

 そしてジーナの弩矢が再び!


 ハズレはしますが、怖いです。


 「ゾ~っつとしますね!」


 デニー、意外に余裕あるじゃないですか。ちっ、いえ、舌打ちはしませんが。


 互いの軌道がつくる円弧が次第に小さくなり、近づいてきます。


 象は体表の皮が分厚く、さらにわたしの「防御」もあり、アルユンの「魔力矢」がつぎつぎ飛んできますが、まだ元気です。


「がんばれ!象さん!」


「・・・がんばれ~」


 リルとレンの激励がゴーレムに有効とは思えませんが、それを止めたいとも思えません。


 わたしだって叫びたいくらいです。


「火撃~♡」


 ファラファラの何度目かの攻撃でついに大楯が破損し飛び散ります。


「デニー!」


「はい!」


 デニーはすかさず壊れた大楯を放り投げ、用意していた円盾をならべていきます。


 しかし・・・こちらはレンが「魔力矢」を、わたしが弓を散発的に打つだけで、守勢です。


 ですが防御系魔術のおかげで守りはかたいのです。


 攻撃重視のジーナたちとは正反対。

 

 それでも次第に接近する度、敵の攻撃の威力が増すのがわかります。


防御プロテクション!」

 

 威力を拡大した防御です。


 不可視の装甲が周囲に張り巡らされますが、対象が多い上威力拡大・・・かなり集中してしまいました。


 その間にかなり接近され、ジーナの巨体がいっそう大きく見えます。


 象より小さいはずなのに、迫力はそれ以上。


 しかも・・・いつの間にかファラファラとリトが交代してます。


「デニー、リル、来ます。用意して!レンも!」


 リルは、たこ焼き隊の突撃に備え、少しずつ象の向きを変えていきます。


 デニーとレンは、タイミングを計っています。

 

 そして・・・来ます。


「待たせたな、てめえとはサシでやりたかったぜ。」


「クラリス、勝負!」


 接近戦に自信のある二人を擁するたこ焼き隊に突入されたら、小柄な2班は瞬殺されてしまいます。


 ですが、来るのは読めていました!


「リル!」 


「うん!」


 わたしの合図でリルが象さんの鼻を操作して、振り上げます。


「ぽおおおお~ん!」 


 一瞬たじろぐジーナとリトです。そのスキに。


「みんな!」


「はい!」


「おうさ!」


「えい。」


 わたしたちは戦闘しながら密かに用意した秘密兵器・・・っていうほどじゃないですけど・・・四隅に投槍を結わえ付けた投げ網を用意します。


 一人がそれぞれ投槍を投じることで、網は大きく広がり、こっちに右わきを見せていた相手方の台座を包み込みます。


「げ・・・動けねえ。」


「意外にツライ。」


 こちらに飛び移る直前のジーナとリトは動きを封じられます。


「やった!」


 つい歓声があがります。


 ところが


「魔力矢!」


 網にとりこまれながらも放ったアルユンの「魔力矢」が、ついにわたしたちの象の体力を奪い去ります。


 わたしたちの戦象は大きく揺らぎます。


「おお~ん・・・」


「象さん、象さん・・・頑張って・・・ダメなの・・・ゴメンね!」


「・・・うん・・・ごめん。」


 二人の声と共に、思わず、わたしの涙腺まで緩みます。


 これは演習用の幻影です。


 叔父様が状況を設定して投影しただけの・・・・なのになんでこんなに心が揺さぶられるのでしょう。


 叔父様はなぜこんな幻影をわたしたちに見せるのでしょうか?


 ・・・いけません、まだ戦いは続いているんです!


 なんとかわたしは気を取り直します。


 そして、その間も、象さんは最後の力を振り絞って、相手の象に向かっていたのでした。


 ですが、ついに傾き始めて・・・。


「象さ~ん!」


 二人の悲鳴。


 その後は 背中の台座にいるわたしたちも、つんのめります!


 倒れます・・・落ちます!


「飛び移ります!」


「ええ~閣下ぁ~。」


「さよなら~!」


「・・・ありがとう。」


 わたしは網に絡まるのを避けて、たこ焼き隊の象の頭に飛び移り、動きを止めているジーナ、リトに近づき、二人に小剣で一撃の動作。


 戦死判定です。


 ついで、アルユンも。


「きったねえ~。」


「悔しい。」


「・・・。」


 残るファラファラは象の操作に追われています。


 その間デニーがヨタヨタと飛び移り、レンを手伝っています。


 リルも象の操作から離れて・・・


「はい、スキアリよ♡」


「ええっ?」


 一瞬のよそ見。


 その間にわたしの背後をとったファラファラが、唱えます。


加力フォース♡」って。


 あ!象の上にいるわたしの足がすくわれる感じ・・・あれれ?


「きゃああああ!」


 落ちちゃいました。


 で、そのまま水死判定です。


 その後もデニー、レン、リル・・・みんな「加力」で落とされました。


 全員なかよくブクブクブク・・・水死判定・・・です。


加力フォース」は、下級呪文のなかでは高難度の術式です。


力の方向を術者の望む方向に操作できるっていうだけの術式なんですが、重力魔法の一種なのです。


その簡易詠唱がファラファラのとった手段。

 

そして、不安定な姿勢の時にちょっと重心がズラされたり、揺れる動きを大きくされると、こんなに致命的になるなんて。


敵の攻撃をそらしたり、逆の立場なら味方の姿勢を安定できるし、使い勝手のいい術式です・・・今思い知らされました!


ですがタイミングが難しく、ファラファラのように簡易詠唱できないといけません。


「勝負あり!たこ焼き隊の勝利!」


 ・・・敵味方8人中7人死亡判定。


凄惨な模擬戦はこうして幕を閉じたのです。




シャルノがわたしを迎えます。


「戦術では勝っていたと思いますけど・・・最後は油断ですか、クラリス?」


 チームとして白兵戦にまさる上にジーナの性格から接近戦に持ち込まれることはデニーが読んでいました。


後は手持ちの武器で動きを封じる工夫と、それまで持ちこたえる作戦を考えるだけ・・・でしたけど。


勝てると思ったのは増長でした。


「やはり力負けです。総合力で劣っていました。」


 3人を討ち取っても、たった一人で逆転できる底力が、あの4人全員が持っていたんです。


それと比べれば、わたしたちは個々の力が劣っています。


「・・・納得いかねえ。もう一回やろうぜ!」


 戦死判定を受けたジーナが不平たらたら。


 肩をぐるぐる回転させて、やる気です。


「同意。三回勝負で!」


 リトまで。この子、脳筋族だったでしょうか?


 もっとも、単に2班と戦うのが楽しかったという気もします。


ジーナと違って笑顔ですし。


「勝った勝った~勝てば官軍ですわ~♡」


 否定しません。


 わたしたちの負けです。


 この無邪気な喜びようにもだまされません。


 あの一瞬での大逆転。


 その戦術眼とそれを可能にした魔術力は、驚くべきものです。


 そんなファラファラはわたしにウインクして、立ち去ります。


「・・・。」


 アルユン。


 またわたしを怖い目で見ています。


 この子も、一見地味な、しかし確実に相手にイヤな手を打ち続けてきました。


 たまたま象から象に飛び移るのに成功しましたが、さもなくば、あの執拗な「魔力矢」の攻撃でわたしたちは全滅してました。


「クラリス・・・あなた、あのフェルノウル教官に師事して、あの程度なの?」


近づいたわたしに、アルユンがそう投げかけます。


その目には暗い炎が見える気がするのです。


「たかだか魔術士レベル5で満足してるの?」


 ちょ、ちょっと待ってください!


「分かってるわ。1年の前期でレベル5は、最高記録だって・・・でもそんなの今まで何人もいるじゃない。あたしならレベル6・・・いえ、1年後期でレベル10をとってみせる・・・あの人に15年も師事できたんなら。」


 1年でレベル10。


  前期レベル5と比べても、後期の内容は高度な知識や高い魔力が必要になり、より経験値も必要になります。


今までの全魔法学校の記録では1年間の到達レベルは最高でレベル8。


「わたしには師もいなかったし、自分の魔術書すらなかった。だからフェルノウル教官が、あんなすごい魔術教典を貸与してくださって、すごくうれしかった。それに・・・あの方の最初の授業で見せてもらった「符術」・・・ただの紙に見えたものが、一瞬で生き物みたいに自由に空を飛んで・・・すごかった!あたしには大魔法使いに見えた。」


 エミルも同じことを言っていました。


 でも、あれは、魔術を使えない叔父様が行う、報われない魔術の代償行為。


 だから叔父様はそう呼ばれても喜ばない。


 特に魔術を使うわたしたちに、そう呼ばれても。


 それでも叔父様が素晴らしい方であることはわたしだけはわかっているつもりでした。今までは。


「あなたは、あのフェルノウル教官に甘えて、今の自分に満足してる。そんなヤツに、あたしはもう負けないから!負けたくないから!」


 アルユンはそう言い放つと、足早にわたしたちから去っていきました。


 あの子はわたし以上に、教官としての叔父様を評価し尊敬しているのですか・・・。そう思うと、確かに自分が甘えていることを思い知らされます。


 胸をえぐられるような、強い痛みと共に。


 10歳のわたしの誓い、魔法兵になってみんなを助けたい。


 その実現のためには、今のわたしではまだまだ力不足・・・いえ、覚悟が不足しているのです。


 昨今の戦闘でも、自分の魔術を駆使することは控えめで、メンバーが苦手な白兵戦担当になっている気がします。


 それだって、リト、おそらくジーナにもかなわないかもしれません。


 一人の魔術士としては、知識や詠唱術、暗唱できる術式の多さという基本的な部分ではともかく、例えばファラファラのようにとっさに一つの術式で戦局を逆転できるか、アルユンのように一つの術式を磨いて得意術式といえるものにしているか、というと、はなはだ心もとないのです。


 デニーのように「検知」系に特化するわけでもなく、エミルやリトのように簡易詠唱を身につけたわけでもなく。

 

 わたしは、魔術でも戦技でも、まだまだなのです。


 それでも。


 いえ、それだからこそ。


「・・・わたしも負ける気はありません。」


 わたしはそう言って、みんなのもとへ向かうのです。


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作者:SHO-DA 作品名:異世界に転生したのにまた「ひきこもり」の、わたしの困った叔父様 URL:https://ncode.syosetu.com/n8024fq/
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