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第10章 めぐりあい その1 アント

第10章 めぐりあい


その1 アント


 目覚めた時、そこはさっきと同じ場所なのは当然です。


ですが、目覚めた時の浮遊とその後の落下の感覚は・・・。


「クラリス・・・起きた?」


「レン?」

 

いつもは緑がかった金色の髪ですが、今は洞窟の中。


奥からもれる青い光に照らされて、神秘的に見えます。


それに・・・レンの瞳、あんなに青かったでしょうか?


さっきもそんな雰囲気はありましたけど・・・。


「ここから出ないでね。」


 ここ?


今さらながら周りを見直します。


暗闇の中、地面にうっすらとした銀色の魔法円が浮かび上がります。


「ここから出ると・・・戻れないかもしれないの。」


「戻る、ですか?」


 戻る、ということは、ここはさっきまでいた場所ではないのでしょうか?


「レン・・・ここは?・・・?叔父様!?叔父様は!?」


「落ち着いて。教官は大丈夫よ。ミライと話している。」


「レンもミライに会ったの?」


 わたしはさっきから質問してばかりです。


 事情が分からないのは少しだけですが不安なんです。


レンは何を知っているんでしょう。


「話してるの。今も。」

 



 まだレンと話をしたかったのですが、近くで気配がします。


 小柄な人影が暗闇の中にいます。


 そして、それを追って巨大な影・・・トロウル?


 ですが、この洞窟にいた青トロウルよりも大きく横幅も格段に広い・・・ただのトロウルなのです!


 では人食い!


 このミライが潜む洞窟に、あんなのがいたなんて!?


 わたしはローブの下のワンドと小剣を・・・・あ?


 ゴラオンに乗る前に、狭いし使わないと思って外したのでした。


「危ない!」


 それでも、わたしはその小さな影に叫び、トロウルの前に飛び出します。


「クラリス!だめ!」


 レンはそう言いますが、あの人影はおそらく人族の少年です。


 あのセメス川で見送った少年の一人かもしれません。


 護衛中隊の少年兵かも。見捨てられません!ですが・・・


「え・・・ええええっ!?危ないのはどっちだよ!そこよけて!」


 少年がこっちに叫んで、逆にわたしに飛びついてきます!


「きゃあ!?」


 男の人に飛びつかれる!


 そんな経験はありませんし、助けに来たのになんで?


「あ?」


 足元がスッと沈み込む気配・・・落ちる!


「ええい!」


 わたしを押しのけた少年がわたしの下になり、そのまま落ちていき・・・


「ぐぅっ!」


 ゆっくり止まります。


 少年が地面の細長い裂け目に両手両足を突っ張って落下を止めたのです。


 わたしを上に乗せたまま。


「グワアアアアアッ!」 


 そして、トロウルがわたしたちのすぐ脇を落下していきます。


 少し間をおいてドサッと音がして、思わず少年にしがみついてしまいます。


 トロウルは底に落ちて静かになりました。


 驚きの連続で、呼吸が乱れっぱなしです。


 そんなわたしに、わたしを上に乗せたままの少年が


「・・・ねえ、キミ。上に昇れるかい。僕は力が強くない。そろそろ・・・限界なんだ。」


 そう苦しそうにつぶやくのです。


 わたしは慌てて、少年を真似て、両手両足を裂けめの壁面に突っ張って上に上がっていきました。

 

 上り終ったわたしは、裂け目の下をのぞきます。


 暗くてほとんど見えませんでしたが、それでもかすかに上ってくる音がします。


 荒い息も一緒に聞こえます。


「大丈夫?この手をつかんで。」


「ええっと・・・手?手ね・・・女の子だよね。僕をつかんで一緒に落ちたりしない?」


「これでも鍛えてるから。安心して。」


 ギザギザの壁に手足を押し付けたので、実は痛いのです。


 ですが、この少年はわたしより小柄で、さっきはわたしを乗せ二人分の体重を支えてみせたのです。


 ならわたしだって。


「んじゃ、お願いします。」


 少年は手袋をしていて、その手をわたしはつかみます。


 そして両手で一気に引き上げようとして・・・痛い!傷ついた場所がズキッとします。


 いけない!


「もう・・・クラリス。ダメだって言ったのに。」


 やってきたレンがわたしの腕をつかみ、そのまま一緒に少年を引き上げてくれます。


 よろよろと登り切った少年は、力を使い果たしたのか、そのまま大の字になって倒れます。


 わたしとレンも、その場に座り込みます。


 さっきまでうっすらとあった魔法円の輝きはもう見えません。


 そんな3人を、青い光がうっすらと照らします。


 その少年は・・・ペリオより小柄で、おそらくわたしと同じくらいの年齢、ちょっと下くらいでしょう。


「あなた・・・兵隊さん?」


 よく見ると、革ヨロイで覆われています。


 地面に転がった槍も見つけました。


「・・・はあ・・・はあ・・・うん・・・僕はこう見えて・・・南方戦線に徴兵された・・・兵士だ・・・もっとも原隊は・・・この前壊滅して・・・逃げ回って・・・こんな所に来てしまった敗残兵だ。」


 話しながら少年の様子を伺います。


 手足が傷ついているようです・・・わたしが落ちるのを防ぐために。


 黒い手袋もボロボロ・・・。


 ヘルメットがない頭部は短く刈り込まれた黒い髪に覆われています。


 声はまだ声変わりの途中でしょうか?


「引き上げてくれて、ありがとう。キミたち・・・だけど、さっきのは何だい?年上の方の女の子さん!」


 え?わたしですか?


「キミは自殺願望者かい、それともまさか心中愛好家なんて特殊な趣味を持っているんじゃないだろうね!?僕は兵士で、敗残兵で、いい加減自分の命なんて諦めてるけど人の自殺や趣味の心中に巻き込まれて死ぬなんてまっぴらだ!そんな残念な死に方がこの世界にあるなんて、さっきまで気づきもしなかったよ。」


 どうやらさっきは、この子が罠をはってトロウルをおびき寄せる囮になっていたところにわたしが飛び込んでいったようです。


 ・・・かえって危うい目に遭わせてしまいました。


 悪いことをしました。それはそう思いますけど、でも。


 言い過ぎです。ムカッ、です!


「自殺願望者?心中愛好家?なんですか、それは!わたしだってあなたを助けようとしたのに、その言い方はあんまりじゃありませんか!」

 

 そう言い返して少年をにらみます。

 

 ですが少年は退く気はないようです。


「だって、キミが助かったのはタマタマ。偶然。ラッキーなだけ!キミは策もなしに手ぶらでトロウルの前に飛び出して、まさか素手でトロウルを倒せる猛者だって言うんなら僕も前言を撤回するけど、そうじゃないんだろ!」


 ぐっ・・・確かに素手どころか剣をもっていても倒す自信は・・・でも!


「デモもストもあるもんか!勝ち目もないのに赤の他人のためにあんな無茶をするのは自殺だ。それがタマタマ助かったからって自殺が自殺未遂になっただけだ!」


 ぐぐぐっ・・・なんて言い方!


「失礼じゃありませんか!さっきからわたしを自殺志願者とか心中愛好家とか・・・他に言い方があるでしょう!」


「言い方!?言い方を変えたら、事実が変わるのかい?キミの真実とあの場の事実の間には、持って回って言い方なんかじゃ伝わらないくらいの大きな違いがあるんだよ!あのままじゃキミは死ぬところだったんだ。それに気づいてくれ!」


 なんて口が達者というか、歯に衣着せないというか


「初対面の女の子にそこまで言いますか!?」


「女の子も男の娘もあるもんか、いいかい?あのままじゃ僕たちは初対面どころか会う前にさようならしてたんだよ!出会う前に死に別れさ。」


 わたしはなんとか反論しようとしますが、うまく言葉が出てきません。


 そこにレンがクスクス笑いながら間に入ってきます。


 いつものレンより少し大人びた感じです。


「クラリス・・・落ち着いて。この子、あなたを助けようとして死にかけたのよ?自分で言ってたけど、あなたとおんなじなの。赤の他人の、初対面の女の子を助けようとして、罠に自分から落ちたの・・・だから二人とも、どっちもどっち。」


 レンにそう言われると、少年は驚いて黙りこくってしまいました。


 反論できないの?


 ・・・じゃこの子は・・・わたしを助けようとしてあんな無茶をしたのですか。


「ごめんなさい・・・あなたが助けてくれなかったら、わたしは死んでいたのね。それなのにわたし・・・」


「なに言ってるんだ!僕は兵士だ。いやいや徴兵されて、戦いに負けた敗残兵だけど、誰かのために戦って死ぬんなら、それは本望だ。キミたちとは違う。」


「わたしだって兵士です!守るべきもののために戦って死ぬ覚悟は!」


 正式には軍属の学生ですけど。


「・・・女の子が兵士?そんな冗談は・・・冗談にしても悪趣味すぎだ。女の子を戦場に立たせるなんて、そんな国なら滅んでしまえ。男の生きる価値がなくなる。」


 カチン、です。


 いったん落ち着いて謝ったわたしなのに。


「なんですって?女には大切なものを守って戦う権利がないっていうんですか!」


「自分の身を守ったり、子どもを守ったりするのはいいさ。でもわざわざ戦場に出てくるなんて、やめてくれ!」


「女だって覚悟をすれば、国も街も守れます!守れるんです!守りたいものを守りたいんです!その想いに男女の差はありません!」


 わたしたちは再びにらみ合います。


 負けるもんですか!


「何て強情で意固地な子だ!・・・?」


 ところが、少年はわたしたちの様子にようやく気付いたのでしょう。


 少し落ち着いて話しかけてきます。黒い瞳でわたしたちをうかがいながら。


「・・・もっともキミたちの格好を見ると兵士なんて本当に悪い冗談みたいだな。まるで中学生のジャージ姿だ・・・どこから来たんだい?なんでトロウルの巣の中にいるの?」

 

 ・・・わたしとレンは、今はローブもつけていない、エスターセル女子魔法学園の運動服です。


 コバルトブルーにパールホワイトでラインをつくった、シンプルなつくり。


 それだけです。確かに魔法兵には見えないでしょう。


「わたしたちは・・・」


 どう答えるべきでしょうか?


 少年が落ち着いたおかげで、わたしも冷静になりました。


 ミライのことは秘密にするべきでしょうし、叔父様は今ミライと話していますし・・・そう悩んでいると、無造作な足跡が近づいてきます。


 それに炎の光・・・松明でしょうか?


「だれか来る?」


 身構えるわたしとレンですが


「ああ・・・僕の・・・仲間・・・かな。」




「おい、アント・・・生きてるか?」


「・・・はい。」


 やってきた男たちは、少年の無事を確かめたようです。


 ですが少年はさっきまでと様子が変わって、声も態度も暗いのです。


「ですが、お借りしたマントや布はトロウルと一緒に裂け目に落ちていきました。すみません。」


 少年は固い声で答えます。


 地面の裂け目を布で覆って、即席の落とし穴に使ったようです。


 しかし、味方が3人いて、立ち向かったのは囮になったこの少年だけ、ということなのでしょうか?


「ち・・・役立たずめ。それでもトロウルを殺ったんだから見逃してやらあ。」


「そうだな。アントのくせに、頑張ったじゃないか・・・ところで、そこの人影は・・・。」


 松明をこちらに向けられます。


 やってきたのは20代くらいの、大きな男と、普通の背丈の男の、二人組。


 ですが少年を見下して話しかける様子は「仲間」という印象からは遠く感じます。


「へええ・・・女じゃねえか。」


 あまりいい気がしません。


 そもそも仲間のはずの少年に対する態度が横柄で、とても不快です。


 少年兵を一人でトロウルに向かわせる、この段階で尊敬できない人たちです。


 わたしとレンを見る視線の不愉快さは、言葉にしたくもありません。


「あの、マグド伍長殿。ギッシュ上等兵さん、この先は進めませんでした。」


「ちっ・・・お前、やっぱり使えねえな。」


「せっかくアリの巣みたいな場所なんだから、得意だろ。アントらしく道探しして来いよ!」


 ・・・アントらしく?


 嫌な言い様です。


 それでも少年は不平も言わず、


「はい。じゃ、別な道を探してきます。みなさんはここで待っていてください。」


 黒髪の少年は槍を片手に持ち、暗闇に一人で歩き出します。


「待って、わたしたちも行きます!」


「うん。」


 残った二人組がなんか言ってましたが、無視します。


 むしろこんなところにいたくないです。


 さっきまでほとんどケンカして、とても腹ただしいと思っていた少年でしたけど、この二人と比べれば、兵士としての覚悟も男の子としてのプライドも、とても好ましく思えます・・・口のきき方とか、女の子に対する態度とかは問題ありすぎですけど。


 わたしとレンと手をつないで走り、少年に追いつきます。


「二人とも、暗い中で走るの禁止!ケガして痛い目にあう特殊な趣味でもあるのかい?」


 でも、やはりものには言い方があると思うのです。本当に失礼な子です。




 ところどころ青く光るコケがあるのですが、基本的には暗い洞窟です。


 ワンドがなくても「光」くらいなら・・・そう思っていると


「クラリス、魔法はダメ。」


「え?何でですか?レン?」


「あの・・・ここにいるのは本当はいけないんだから。魔法を使ったら今度こそ本当に戻れなくなるから。」

 

 少年に聞こえないように気を遣ってか、レンは小さい声で話しているので、わたしも自然とそうなります。


 少年は気づいているのかいないのか、気にしない風です。


「でも・・・戻るって何なんですか?ここはミライのいる洞窟でしょう?」


「・・・ちょっとだけ、ちがうの。」


 わたしたちは次第に遅れるのですが、少年は待ってくれていません。


 あまり人に気を遣う性格でもないようです。


 そう言えば・・・少し迷って声をかけます。


「あの・・・あなた・・・アント?」


 ピクッと動き、少年が立ち止まります。


「あ・・・ああ。ゴメン。一人で進んで。」


「いいえ・・・ですが、まだお互い名前も名乗ってませんし。」


「そうか・・・ああ。僕は・・・アントでいいよ。そう呼ばれるし。」


 あまり言いたくなさそうでした。


 さっきの伍長さんと上等兵さんもなんか嫌な言い方でしたし。


「・・・レンネルです。」


 人見知りが激しいレンがわたしより先に名乗りました。


 驚きです。少年が小柄で、声変わりもまだ終わってなくて、年が近く感じたのかもしれません。


「アントは・・・何歳?」


「え・・・僕は16だけど。」


 え?年上でしたか!?少しだけびっくりです。


「へええ・・・レンは13歳。」


 暗い中ですが、レンが楽しそうに話している様子がうかがえます。


 一方少年・・・アント?・・・は話しづらそうです。


 女の子と話したことないのでしょうか?


 半ばケンカしていた時には気づきませんでしたが、こうして一歩引いてみるとそんな気がします。


「ほら、クラリスも。」


 レンに腕をつかまれます。なんとなく二人に間に入りそびれていました。


 三人で歩きながら話しているうちに、明るい所に出ました。


「・・・はい。わたしはクラリス。言うのが遅れたけど・・・さっきは助けてくれてありがとう。」


 アントの黒い髪に、黒い瞳、意外に長い睫毛・・・一瞬リトを思い出しました。


 同郷なんでしょうか?


 ですが、子どもっぽい顔に、わたしより少し低い身長。


 わたしがそんなアントを見ていると、お互いの目がばっちり会いました。


 すると、その瞳が大きく見開かれます。澄んだ夜空の色をした瞳です。


「クラリス?・・・へえ・・・本当だ。赤い髪に・・・その青い瞳・・・まるで太陽の光をいっぱいに浴びた湖みたいに澄み切って明るい青・・・すごくきれいだ・・・。」

 

 ため息のような、アントの声・・・。ぎっちょん・・・そしてドキドキドキ。


 なんですか。


 初対面の女の子にそんなこと言うなんて!


 さっき女の子と話すのが苦手そうと思ったのは大間違いで、真逆の・・・「女ったらし」さんなんでしょうか!?


「な、なななな・・・なにを言いますか!あなたは!」


「ズルい・・・クラリスだけ、そんな言い方されて。」


 レンが怒りだしましたが、アントはキョトンとしてます。


 自分が何を言ったのか、それがわたしたちにどんな影響を与えたのか、まるで自覚がないのでしょう。


 人は好さそうですが、さっきの遠慮のない言い方と言い、いろいろ困った人かもしれません。


 それでも、一人で暗い中、トロウルに立ち向かい、急に飛び込んだわたしも助けてくれました。


 優しくて勇敢な人なのかも。




 どうっとトロウルが倒れます。


「これで2体目・・・すごいです。アント。」


「アント、強い!」


 道に迷って出口を探しているアントです。


 アントは小柄で、槍と盾を同時に使えるほど体力がないそうです。


 だから盾はもたない・・・それってわたしの方が絶対体力があります・・・言いませんけど。


 運動神経もさほどいいようには見えません。しかし、


「そこ!」


 トロウルが大きなメイスを振りあげた瞬間です。


 トロウルのメイスとアントの持つ槍がまるで糸で結ばれていて、その糸に引かれるかのように自然にアントが間合いを詰めます。


 そしてそのまま、その喉を槍で貫くのです。


 少しでも踏み込みが遅ければ、わずかでも狙いが逸れれば失敗する技です。


 しかし本人が言うには


「力も身体能力もない僕さ。よく相手を見て呼吸を合わせる。これしかできないんだ。剣道の「抜き胴」みたいなもんだけど。」

 

 そう言いますが・・・ちょっとわからない言葉も入ってますが・・・それでも、最初の罠に落としたトロウルを入れて、もう4体も倒しています。


 レンもわたしもつい褒めるんですけど。でも本人は、うれしくなさそうです。


「別に倒したくて倒しているわけじゃない。でも倒さなきゃ・・・」


 そこで口をつぐみます。


 おそらく、倒さなければわたしたちが危ない、と言いかけたのでしょう。


 彼は、兵士。誰かのためになら戦えるのです。


 ですが逆に言えば、自分のためだけならば、おそらくトロウルも暗闇に隠れやり過ごしたりして、ムリに戦わない。


 そんな気がします。


 敵を倒しても嬉しそうではない・・・むしろ少し悲しそうにすら感じるのです。

 

 わたしたちの会話は、アントがこんなふうに黙ったり言いにくそうにしているので、度々中断します。


 人を批難する時はあれだけ冗長だった彼の言葉は、普段はそうでもなく、むしろ話すのを面倒がっている気すらします。


 そのせいもあって実はわたしとレンの事情も話していないのですが、それが不自然でもないので助かります。

 

 そのかわりアントの事情もよく分からないのですが。


 しかも時々トロウルと遭遇して、さっきみたいになります。そのたびにまた話は中断。




 どれだけ進んだでしょうか?


 壁に印をつけているせいで起点からの道はわかるのですが・・・。


「行き止まり、か。」


「・・・アント。レン、疲れちゃった。」


 飲まず食わずで、休みなし。


 それほど体力のないアントも疲れたようで、衰弱して見えます。


 わたしたちは、一度さっきの場所に・・・最初にアントに会った、そして伍長さんと上等兵さんの待つところに戻ることにしました。


 水も食料もあの二人が持っている、そうでもなければあまり戻りたくはないのですが。



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作者:SHO-DA 作品名:異世界に転生したのにまた「ひきこもり」の、わたしの困った叔父様 URL:https://ncode.syosetu.com/n8024fq/
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