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第23章 その14 魔法学園の秘密2

その14 魔法学園の秘密 2


「いいかい、クラリス。」

 

 プールを去り際にお聞きした叔父様の予測は、多岐にわたるのです。


 コアードが学園を襲撃することも、その後の展開も、そしてここでは聞かされず、この後で知らされることになった予測も、まさに驚くことばかりなのです!


「日蝕で不利なのは、キミたちだけじゃない。」


 そして、軍事に詳しくない戦争嫌いにも関わらず、戦局は概ね予測通りなのです。


「敵が有利と思っているのは、キミたちが魔術を使えないこと。しかし、一方ではあいつらも軍から抜け出す際に奪ったアイテム類が全て使えない。」


 そうです。


 魔術結界を作りだすアイテム、魔法抵抗を大いに向上させるアイテム、容易に空間を移動できるアイテム、それに生贄によって魔獣を召喚するアイテムなどコアード軍は高度なアイテムを豊富に持っています。


 しかし、それは今、全て無効!


 普通のポーション類だって特殊な格納庫にしまってなければ効果はなくなるのです。


「だから得意の魔術具による連携もできず奇襲もできない。」


 一見、正統的でスキのない正面攻撃に見えるこの戦いも、そういう事情があるからなのです。


 王都に潜入したため攻城兵器を持たない今、学園の防衛体制に気づいていち早く全軍を集めた手腕に感嘆はしたものの、学園側の予測を大きく上回ったのはリーチの破壊スキルのみなのです。


「しかも……ちっ。あいつ、僕たちと話したがっている。」


 わざわざ激戦中に叔父様の元に腹心と言えるリーチを派遣したのもその証。


「だから、敵は……大佐は」


 そうです!


 必ず直接自ら説得に現れる!


 これもその予測の一つなのです!


 


 そして現実に大佐がトリデ前に現れ、イスオルン主任と対話しているのです。


「……大佐殿。お久し振りです。」


 主任は城塔から石垣の上に降りて、10mほどの距離を置いて大佐と向かい合っているのです。


 しかし……二人ともお知り合い?


 いえ、主任は確かに以前はコアードの同調者ではいらしたのですが。


「しかも小官如き一介の尉官をよく覚えてくださった。」


 才能ある士官ながら魔法兵であったがために大尉で退役を余儀なくされた、とは叔父様から聞いたお話です。


 現役時代に面識があった、ということなのかもしれませんけれど


「精鋭第8師団が誇る特務中隊は、アキシカ西部の激戦を制した切り札、まさに至宝だった。それを率いる貴官のことを忘れるはずもない。」


 そんな主任にとって、この一言は。


「……くっ。そう言っていただけるとは、まさに軍人の本懐!ありがとうございます!」

 

 感激を隠せず姿勢を正し敬礼する主任です。


 日蝕が続く暗闇の中、大佐がどんな表情をしている人物なのかはわかりませんが、挙動は確かに軍人らしく、主任に通じるものを感じさせます。


 しかも、主任は完全に気おされているみたいです。


 これは叔父様の予想外では?


 大佐と大尉、これは階級の差だけでしょうか?


 大佐も主任も同じくらいの年齢に感じますけど。


「大尉。我が党派に貴官のように優秀な実戦家がいたことを私は頼もしく思っていた。事情あって志をたがえたことが残念でならない……。今も魔術も使えぬ魔術師たちにここまで抵抗されるとは思いもしなかった。これも大尉の手腕なのだろう?惜しい。これほどの人材をこのままにしておくにはあまりに惜しい!……どうだろう、大尉。もう一度戻って来てくれないか?私には、大尉の支えが必要なのだ。私が目指す人族の勝利に、大尉の力が必要なのだ。」


「う……あの大佐殿が、小官のことをそこまで……」


 いけません!


 主任が完全に飲まれているのではありませんか!


 実はこんなに褒められたことがないのかもしれません!


 学園では優秀な教官と評価され、「主任」と畏敬を持って呼ばれてこそいますが、その呼び名には「厳し過ぎる鬼畜生」とか、「悪辣な教育術を駆使する悪魔」などという罵声が口には出せない思いとともに押し込められているのです!


 まさかそのことにお気づきになられて、意外にも傷ついていたのでしょうか!?


「使者が言った通り、生徒たちに危害を加えるつもりはない。それは約束しよう。抵抗した教官や職員も、拘禁はさせてもらうが、身の安全は保障する……もちろん大尉は我が帷幕に入ってもらいたい。」


 そんな主任に畳みかけるように続ける大佐です。


 鋭い!ズルい!まさか人の気持ちがわかるのでしょうか!?


 危険です!


 そう思ったのは遠くで見ているわたしだけ?いえ!


「じゃあ、あなたたちは何しにここを襲ったのよ!」


 頭上から降ったのはセレーシェル学園長のお声です。


 学園長も何か危うい、と思ったのでしょう。


「……名乗らぬ者と話すつもりはない。」

 

 なのに大佐は見もしません。


「わたしはセレーナ・セレーシェル!ここの学園長よ!」

 

 そして学園長がいつもの大人びた振る舞いから脱線しながらも名乗ったのですが。


「出すぎた女と話す気もない。」


 なんて一蹴されて。


「なんなのよ、この男!フェルノウル教官なみに無礼じゃないの!」


 それは違います!


 叔父様の無礼は無自覚で先天的なものです!


 この大佐のように相手によってこうも変わるようなものではありません!


「にゃあ?」


 わたしの肩に乗ってるネコ、クロちゃんです。


 どう違うのって聞かれた気がしますけど、さすがに気のせい。


「叔父様は女性を大事にしてるって自称してるくせに、男女平等無自覚に無礼なんです。でもあの大佐は、女性と男性、そして自分の興味のあるなしで意図的に差別をしているのです。」


「にゃあ」


 なるほどって聞こえた気がしますけど、もちろん気のせい。


「大尉、どうか?大尉が再び我が下に来てくれれば、後は……そう、この学園の存続こそ認めないが、生徒たちは全員無事に実家に帰すことは保証する。言葉上は降伏とは言え、実質これは停戦と言ってもいい。大尉は我らと引き分けたのだ。」


「大佐殿……私は……私は……」

 

 いけません!


 イスオルン主任、意外にちょろいです!


 友達少ないんでしょうか(ありそうです)?


 奥方たちとはうまくいっているとデニーが言っていましたが、最近何かあったのでしょうか(あやしいです)?


 わたしたちの防戦の要、作戦の鬼で実戦の悪魔の主任がまさかの陥落寸前なんです!

 

 ただ、大佐の甘言はおそらく主任が密かに抱えていた懊悩を直撃したことに間違いなく、その男性的な声の響きと真摯な熱意に相まって、恐ろしく効果的ではあったのでしょうけれど。


 実際ここまで聞こえる声も後ろ姿も堂々としていて、何も知らなければ劇場の名優みたいです。


 誰かさんとは大違いです。


「イスオルン!しっかりしなさい!あなたのこんな姿をあの不良教官が見たらどうなることやら。」


「本当です。それに主任、生徒たちも見ていますよ。彼女らを……また裏切るのですか?」


「生徒たちが?しかもあの男に見られたら!?……くっ、そんな心配は無用だ。」


 主任の背後に立ったのは、学園長とワグナス副主任です!


 城塔にいたお二人が石垣まで降りて来たのです!副主任は足を骨折していたのですが、学園長に支えられています。

 

 それを見た主任は毅然とした、いえ、いつもの傲岸とした様子をとりもどしたのです。


 おそらくはお顔には、あの人の悪い笑みを浮かべていらっしゃるのでしょう。


「わざわざけが人を連れてくるまでもない。引っ込んでいろ。」


「そうかしら?けっこう危うかったみたいだけど?」


「そんなことはない!」


「いえいえ。生徒たちの幻滅した視線を見てください。」


 じぃ~~~~と見つめるみんなの視線ですが、それを跳ね返す、冷厳さ。


 大丈夫そうです。


「……ふん。貴様ら、つまらんものを見とらんで、とっとと次の準備をせんか!」


「「「「「「はい、教官殿!」」」」」」


 そしてどなられればとっさに従ってしまうのは、軍人教育の成果なのです。


 寮生プラス2名の全員は、それぞれの持ち場からレンの側に駆け足を始めたのです。




「待たせてすまないな、大佐。しかし、申し出は断らせてもらおう。」


 さすがの大佐もしばらくの間、口をはさめずにいたのですが


「大尉。そんなくだらぬ者たちの口車に乗せられ、女を戦場に送り出すなどという愚劣なたくらみに与するのか?それは貴官本来の理想ではあるまい。貴官は戦場でやり残したことがあるはずだ。自らその願いをかなえるなら、私の下に来るのが賢明……貴官は戦場に選ばれた者。我らと共に人族を、王国を救おうではないか!」


 先ほどと変わらぬ、魅力的な声に誘惑……のはずですが。


「くどい。お断りする!」


 教官としての矜持をとりもどされた今の主任には無効でした!


 ホッ、とするわたしです。


「……大佐でしたかしら。そんなことでは、うちの主任一人くどけませんわ。」


 学園長もすっかり落ち着きを取り戻し、いつもの優雅な話し方に戻られて。


「ええ。その選民思想、鼻につきます。だいたい本人が思ってるほど自分たちがたいしたことがないって、気づいてないのはかわいそうですね。」


 うわあ……ワグナス副主任?


 あのいい人教官が、穏和な口調でなんて辛辣なことを?


 ケガしたら性格お変わりになったんじゃあ?


 その太った、いえいえ、風格のあるお体を学園長に支えられながら、自ら危険な場所に来るだけでも似合わないのに?


「直接話す価値もない者たちが、エラそうに。」


「価値のないのはあなたがたの計画です。わたしたち、エスターセル女子魔法学園の、いえ、フェルノウル教官のプランの方がはるかに現実的で合理的で能率的なのです。わたしは軍人ではない一介の学問の徒ですから戦略とか戦術とかは全くわかりませんが、正しい理屈というものは、どんな立場の者でも理解できるものなのです。」


 あの副主任が、なんと主任ですら委縮しがちだった相手に真向から!?


 しかも叔父様のプランとやらを全面的に支持しています!


「あなたたちコアードの計画は、計画以前の選民思想、つまり人族の優性と女性蔑視に基づいた、いわば理屈以前のシロモノです。しかも軍の現状にとらわれ過ぎている。新しい視点もなければ、非合理的な要素の多い計画ということです。おまけにそれが実現しても、コアード一党の支配が強まり世界は窮屈になるだけです。そんなあなた方に従う者は、この学園には一人もいませんよ。」


「貴様!」


 身構えたのは、大佐の背後にいたリーチです。


 しかし、大佐は手の動きでそれを押し止めたのです。


「……名前を聞こうか?」


「申し遅れました。ドワイト・ワグナス。この学園の副主任で、生徒たちのクラスを直接担当しております。」


「……一介の学問の徒とやらが、何を根拠に我らの理想と計画を批判するか?」


 ようやくながら大佐も、ワグナス教官を論じるに足る相手、と認めたのでしょう。


 顔を副主任の声の方に向けたのです。


「すみません。詳しいことは、受け売りでして。しかも軍事的な説明は苦手です。ここからは主任にお任せします。」


 なのに教官はあっさり主任に譲るのです。


 やっぱりいい人です。


 或いは面倒を避けたのかもしれませんけど。


「受け売り……大尉のか?」


「いいえ。アンティノウス・フェルノウル教官の、です。」


「そうよ。そして、わたしたち、エスターセル女子魔法学園が設立当初の目的を大きく超えて、軍すらも動かし、この戦争で重要な局面を任されるようになったのは、彼のせいよ。」


 叔父様の!?いきなり着任して半年かそこらの叔父様が!?




「もともと、この学園は女子の魔術士を育成する目的で設立される、軍で初めてとは言え、普通の女子魔法学校のはずだった。しかし、それは軍の戦力を補強する、というよりは、あくまでトレデリューナ臨時法に基づき、女性を職業につけることで国力を回復させたいという政治的な目的の一環であり、軍にとっては広報としての役割を期待されているに過ぎなかった。」


 イスオルン主任が大佐に向かって……おそらくは聞いているであろう生徒たちにも……話し出したのは、創立一年に満たない、わたしたちの学園の起源でした。


「しかし、さる有力な貴族が極めて個人的な動機に基づいて、学園生徒の選抜に関わったことが、変化のきっかけだった。ああ、次期元老と噂される、あの家だ。」


 有力な貴族!?次期元老!?


「彼は、自分の娘が貴族界随一の才女であることを見越し、女、しかも魔法兵として初の将軍にすることを考えたのだ。彼の子息は残念ながら軍才にも魔術の才能にも欠けていたが、娘はその双方を多分に持ち合わせていてな。女性の社会進出を機会に勢力を伸ばす妙手だと思ったらしい。」


 シャルノです!


 絶対、それ、シャルノの父君、テラシルシーフェレッソ伯爵に決まっています!


 ……と言うことは、この学園はシャルノのためにつくられた?なんてことでしょう!?


「それで、実戦参加を前提に、ひたすら魔術の才能のある女子を集めことになった。身分に拠らず、近い将来娘とともに戦場で活躍できる優秀な魔法兵になりうる人材。それだけが入学資格となったのだよ。」

 

 ……以前叔父様が不思議がられていた、身分はおろか、入学前の学力や年齢すら無視しての入学基準の秘密はそれだったのです!


「しかも、入学した生徒には、あの商会の娘がいてな。そっちはそっちで、例の貴族と親しくなるために娘を送り込んできたらしい。」


 まさかのエミル!


 エミルの入学にもそんな秘密が?


 道理で、というには変ですけど、入学して半年くらい、あの子は授業にあまり積極的でなかったのです。


 本人は父親の意図を知っていたんでしょうか……いえ、ウラオモテないあの子ですから、それはないでしょうけど。


「……正直、軍当初の方針から大きく変わった学園に、私は、自分の立場がイヤで仕方がなかった。貴族やら商会やらが絡んできたのが面白くなかったし、何より女を戦場に送り出すのは反対だった。」

 

 そうなんです。


 そこは主任と叔父様は同じ。


 二人とも女性を大事にしてくれるのですが……叔父様に関しては態度に結び付かないことが多々あるのですけど……その反面、過保護で過干渉なんです!


 女性を危険なところに行かせたくないあまり、その自由を奪ってしまう、そんな意味ではコアードと違うけど似てるのです。


 叔父様がわたしを大事にしてくれるのはうれしいのですが、それでも時々は、余計なおせっかい!って言いたくなるんです……ホンのトキドキですよ?


「そんなこともあって、まあ、コアードに同調したこともあった。もともとアキシカ放棄の騒ぎで早々に軍から追い出された身、己の境遇に不満を抱えてもいた。」


 それもあって……あのキッシュリア事変を起こしてしまったのでしょう。


「……主任。ですが、戻ってきた主任はいいお顔になっていましたよ。」


「そう?前と変わらない厚顔で傲岸。なんてヤツってわたしは思ったけど。」


「そんな時、学園長から渡されたのは、大量の羊皮紙の束だ。」


 お二人の言葉を完全するぅ。


 こんなところが厚顔で傲岸なんですけど。


「それが……エスターセル女子魔法学園卒業生を基幹とした、女性だけの独立部隊の創設と、その目的……戦争終結案だ。」

 

 しばらく主任の独白を黙視していた大佐でしたが、ようやく本題に戻ったのです。


「……アント二等兵の案、だな。」


「そんな男は知らん。アンティノウス・フェルノウル教官の、だ。」


 大佐の声にこもるのは、侮蔑と興味。


 そしていつもは「あの男」と呼び捨てる主任の声にこもるのは……なんと、敬意です!


「まず、大佐。最初の襲撃もだが、特に今日の襲撃は完全に予測されていた。」


 微かに身じろぎした大佐です。


「そして、コアードの王都襲撃とそれに伴う戦略も予測済み……それはアキシカ奪還!そうだな…ワグナス。」


「けが人使いが荒いですよ、主任。」

 

 ワグナス教官は大きな地図を両手で広げ、学園長はイヤそうに教官の重い体を支えます。


「この王国がある大陸と、既に亜人に侵略され征服された南方大陸。この二つを結ぶ、いわば橋のような位置にあるのが、失われた、いや、王国が放棄した属州アキシカだ。」


 見慣れないその地図には、主任がお話しになられたように二つの大陸をつなぐ土地があるのです。


 かつてこの地を巡り、王国と亜人の軍勢が何十年も争っていたそうです。


「あの戦争の末期、あなたはこの戦いを主導する立場を手に入れ、そしてまさに勝利もつかむ寸前までいった。同じ時、同じ場所で戦った身としては、その悔しさは理解できる……。」


 叔父様が言うには、大佐は王国内の政治的暗闘の結果、勝利を目前に更迭され、戦いそのものも中断。その後王国はその地を捨て、今の南方戦線を構築したのです。


 そして、それから十数年経ったのが現在。


「しかし大佐。現状の南方軍、それに中央軍が派遣されたとしても、アキシカ奪還には多くの時間を要する。その間に王国の国力は更に疲弊するのは目に見えている。ましてコアードの思想では女性の社会進出すら否定され、若い男のことごとくを戦場に送ってしまえば、老人と子どもだけで国を支えるのは不可能だ!それでは王国は……」


「疲弊がなんだね?」

 

 大佐が淡々と言い切ると、辺りには冷え冷えとした空気が漂うのです。


 ですが、この言葉はつまり、主任の、つまり叔父様の推測を否定してはいないのです!


「貴族や大商会の財貨を奪い、臣民に分配すればいい。その上で食料はすべて軍が管理し、等しく配給する。それで王国はあと十年は戦える。」


「大佐……貴族の中には、先祖の功業に頼り切って現在の努力を怠る者もいるし商人の中にはキッシュリア商会のように不法な手で金銭を得る者もいる。しかし、立派に努め財貨を得て、かつそれらによって民衆の生活を支えている方も少なからずいるのだ。そういうものを全てまとめて等しく奪うというあなたには、人の世の現実が見えていないのだよ。」


 この人の目には現実が入っていない?


 あのひきこもりの人嫌いの叔父様にそれがわかって、この大佐にはわからない?


 そんな主任のお言葉は、わたしにとっても驚きなのです。


「さらに食料を管理するという軍にだって、不正を働く者がいないわけではない。少なくとも軍も一枚岩でないことは、大佐自身の身をもって知っているはずだ。それなのに、なぜそんな甘い目測をたてるのか?……教えてやろう。大佐、あなたは優秀だが、あなたより優れた者も、あなたの期待にとうてい応えられない者もいるのが世の中だ。どれほど理想を振りかざしても、自分に従わなければ処罰するだけの集団が支配できるほど、世界は狭くも小さくもないのだよ。」


「まさかこの歳で、しかも一介の退役大尉にお説教されるとはな。なかなか新鮮な体験だ。」


「大佐殿!?」


「まあ、待て。イスオルン元大尉が付け足した部分はさておいて、概ねわたしの計画が読まれていたことは認めよう。しかし、その上で問う。学園の、いや、あのアントの計画とやらのどこがわたしの計画よりも優れているかをな。」

 

 再び張り詰めた空気の中、しかし主任は、いえ、その背後にいらっしゃる学園長も副主任も臆することなく、大佐に対峙しているのです。


 そして……主任の、あの人の悪い感倍増アイテム丸眼鏡が輝いて。


「アルグラデ、強襲!しかもあのグラデ川を遡上しての!そう、エスターセル女子魔法学園を基幹とした女性だけの独立部隊とは、初の水陸両用の特務部隊なのだ!これが伯爵を、商会を、そして軍をも動かした戦争終結案……あの男の答えだ!」


 ビシッと地図の一点を指さす主任。


「女性だけでも、風も水流も魔術で操作できるし、航海安全よ。しかも船も武装も強化できるし、ゴラオンや機甲馬車を積み込めば陸戦も万全ね!……って言うか、船もゴーレムにするってあれ、本気かしら?」


「私には本気に聞こえましたけど?ちなみに船務を補佐する共同部隊も女子水兵学校で育成中です。4月からは向こうから新教官を出向してもらいますし、夏には共同訓練りんかいがっこうも計画中ですよ。」

 そして笑顔でうなずく学園長と副主任です。

 

 ですが、水陸両用って……ええええ?

 

 なに?わたしたち、なにをやらされるんですか!?

 

 強襲?遡上?航海安全?それに共同部隊の女子水兵学校に共同訓練?

 

 ツキの魔力は当分大丈夫とは言え、完全に機を逸したわたしの頭の中には、この場にいない叔父様がもたらしたこの混乱が渦巻いているのです!


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作者:SHO-DA 作品名:異世界に転生したのにまた「ひきこもり」の、わたしの困った叔父様 URL:https://ncode.syosetu.com/n8024fq/
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