第23章 その12 月下の儀式
その12 月下の儀式
「にゃあああああああ」
朝を迎えてから、何時間経ったのでしょう?
本当ならば既に天頂近くあるはずのお日様の場所には、光を吸い込むような黒い穴があるばかりなのです。
そんな、未だ暗いままの空を見あげるのは、屋上のプールの周りに集まった無数のネコたちです。
「「「「「「「にゃああああああああああああ」」」」」」」」
最初に鳴いたクロちゃんに続いて、この場にいるネコたちが一斉に声をあげるのです。
それは薬液と卑金属で満たされたプールの水面に波紋を起こし、周囲の空気を震わせているのです。
波紋は中央から次第に丸く広がって、空震はプールから広がって、おそらくは屋上から学園に、学園から王都中に広がっているのかもしれません。
目には見えないけれど、それは空まで届き、なにかの波動を起こしているように感じられるのです。
波紋が広がったプールの水面は、いつしかうっすらと輝いて……そう、淡い黄金の輝きに。
「叔父様!」
そして、そうです!
輝きは丸い円盤になって!プールの中央には、50㎝くらいの丸い黄金が浮かんでいるのです!
淡く輝く、黄金の円盤……。
「金ですよ!叔父様!金、金!」
「……少し静かにしてくれないか?」
珍しく叔父様に呆れられ、たしなめられたわたしです!
でも、けど、だって仕方ないですよね!
こんな大きな黄金なんて見るのは、一介の市民には初めてなんです!
わたしの使いどころの乏しい鑑定眼によれば……金貨何枚の価値になるでしょう?
「にゃあああああああ」
「「「「「「「にゃああああああああああああ」」」」」」」」
そして再び響いたネコの鳴き声。
その鳴き声に惹かれるかのように、数日前に見たあの黄金の真円が、いつしか空に浮かんでいたのです。
出現した瞬間はなぜか見落としてしまいましたけれど……。
そして数日前とは異なって、その真円はすぐに消えることはなく、まるで天頂を挟んであの黒い穴と対称の位置にあるのです。
「よく見ると……なにか模様がありませんか?」
「うん?そうかな……?」
叔父様は銀縁の眼鏡をおかけになって空を見上げるのですが、首をかしげたままで。
お日様とは同じ黄金色のはずなのに、なぜか全然違うその輝きは、控えめで穏やかで淡くて、それでも辺りをうっすらと照らしているのです。
「これが、叔父様の為された錬金術?」
いいえ、いいえ!
ただ黄金を作っただけでは決してない!
空にアヤシイ円盤を浮かべただけではないはずなのです!
「叔父様が成し遂げられたのは……」
そうです。これは魔術です!
術式は使っていない!
魔術回路すら開いていないまま!
でも!
「叔父様は今、世界をお変えになったのですね!」
ツキというものを浮かびあがらせることが、この世界にとってどのような意味があるのかわかりません。
そして学園の戦いはまだ終わっていない。
日蝕が終わったわけでもないのです。
でも、わずかとはいえ世界の有りようを叔父様は変えたのです!
「すごいです!叔父様!」
「……いいや。そんなことはない。」
がっくし。
全力の賛辞を当のご本人に一瞬で全否定されたわたしです!?
人に褒められるのが嫌いな変人ではありますが、わたしの賛辞は別だったのに!
「だって……僕にできたのは、すぐに消え去る幻影を、少し長びかせただけなんだ。」
わたしと一緒にツキの明かりに照らされながら、叔父様はなぜか元気がありません。
ネコたちなんか寝そべってプールサイドに、光を浴びて満足げに喉をゴロゴロ慣らしているのに。
しかし、ネコの周りに気づいたわたしはようやく驚くのです。
そこは、溶液に使われた膨大な薬剤の瓶が並べられ、床や壁はびっしりとナゾの数式で埋められているのです。
更には開かれたままの多くの本や膨大なメモを記した羊皮紙が散乱して、一見何事もなかったかのようなこの儀式が、実はとてつもなく膨大な作業の積み重ねの一端でしかなかったことを、今さらながらにわたしに気づかせたのです。
「叔父様……これほどの儀式をたったお一人で、でも……いつからご用意しておられたのですか?」
そうです。
日蝕が始まる数日前なんていう、わずかな期間では到底ムリ。
「やはり……ずっと前から日蝕の日に襲撃されることをご存じだったのですか?」
「え……ま、まさかね。いや、たまたまだよ。たまたま。」
しかし叔父様はわたしに見向きすらせず、薬液に浮かぶ円盤をみてるだけ。
おかしいです。
「……叔父様?どうなされたのです?協力してくれたネコさんたちも喜んでいるのに?」
日蝕が終わらないことが不満なのでしょうか?
或いは実験はなにか根本的なところで失敗したのでしょうか?
立て続けに質問するわたしですが
「……日蝕が終わらないのは、まあ、半ばわかっていたよ。」
「……失敗?いや、少なくても実験は成功だ。その効果の有無は数分も待たずにわかると思うよ。」
「……みんなが心配かって言われれば、心配してるけど、でも今の僕にはなにもできないんだ。実験と観察を続けるだけさ。」
………………変です。
いえ、叔父様はいつも変な人ですけど、今の叔父様はいつもの変人ではありません。
クロちゃんが不思議そうに「にゃあ?」って鳴いてますけど違うんです。
「叔父様!わたしを見てお答えください!なんでわたしを見てくださらないのですか!」
そして、ゆっくりと振り向いた叔父様は……一瞬、そう、ほんの一瞬ですが、とてもつらそうな表情を隠しきれなかったのです。
今は微笑んでいますけれど、でも、わたしでなければ気づかないその、一瞬の変化!
「……叔父様?……何がおありなのです?お話しいただけませんか?」
「え?ああ、錬金術の秘術は、若いころに南方から持ち帰って学んだもので、でも解読できるようになるまでかなり時間が……」
「叔父様?」
「で、魔術ならともかく錬金術のことは、言えないことが多いのさ。だから」
「叔父様!」
「…………。」
「お話しください、叔父様……今日のコアードの襲撃にお気づきになられたのは……やはり」
イスオルン主任ではなく、もちろんスパイなどではない。
それはこの人。
「……ああ、僕だ。僕は、大佐ならこの日を見逃すはずはないと予測していた。だからこの日に備えてずっと準備してきた……。」
「予測だけ?それだけでここまで厳重に備えをしてこられたのですか?学園長も主任も?教官方も職員の方々までそれを疑わずに?」
「そうさ……だってあいつは僕の……主人みたいなもんだった。二年もの間、僕はヤツに飼殺されていたんだ。おかげでヤツの考えは全部わかってしまうのさ。もちろん予測に基づいて情報は集めはしたけれど、自信はあった。大当たりさ。そして……この戦いは、ヤツと僕との戦いなんだ。それにキミを…‥みんなを巻き込んでしまった!……ゴメン……ゴメンよ、クラリス……」
そんな泣き出しそうな、いえ、半ば泣き出した叔父様を見て、わたしは思わず駆け寄り、夢中で抱きめるしかできなかったのです。
もう二十年近くの、わたしが生まれるさらに前。
未だ兵役を解かれずに南方軍にいた叔父様は、「大佐」という、当時の軍の重鎮の下で、亜人の生態やその対策、更には魔術の戦場での応用などについて諮問される一種の私的スタッフとして重用されておられたそうなのです。
「当時、僕は腐っててね。勝手に兵役は延長されて軍隊も抜けられず、戦いに巻き込まれる人々も救えないし、同僚が死ぬのを見てるだけ……信頼していた隊長にも、まあ、裏切られた……のかな。」
無気力になられていた叔父様は、その大佐の下でいい様に使われていた、とは言え、当時既に博識なうえに異民特有の発想を随分と重宝されていたようなのですが。
「……それでも戦争に使われる。自分の意志とは無関係に。当時の僕は、無気力で今よりもっと愚かで偏狭だったから、言われるままになんでも答えたけど……後になってみれば、前世の末期以来、あれほど自分がダメになっていたことはない。」
そんな叔父様の協力?もあってなのでしょうか?
「気が付けば、大佐は軍を操り、あと一歩で亜人をその地から追い出すことができる、そんなところまでいったのに……まあ、足元をすくわれた。南方で戦う軍を、自分の派閥で固めすぎたんだな。半ば王国から独立するみたいになった南方軍は、王国政府と中央軍によって突然解体され、大佐も拘禁。人族の敵は常に人族なのさ。」
結局、その後、亜人に敗れた王国は撤退し、その地は放棄されることになったとか。
それは公式の歴史には記されていないのです。
「だけど、大佐と一部の将兵は軍から逃れ、王国内に潜むことになったんだ。その中心が核人主義者コアードだ。」
「……では、大佐とは?」
「コアードたちの首魁。そして僕のかつての飼い主。」
青白い明かりの元、叔父様のお顔もその色に染められているのです。憂鬱色に。
「そして……大佐は今でも亜人との戦いに勝とうとしている。その人族への献身に執念と努力は見上げたものだし、なんてったって、もともと天才で秀才だからね。」
核人主義者たちは潜伏してからもその勢力を徐々に伸ばし、亜人との戦いに疲れ始めた王国内に同調者を増やしていったのです。
古き良き時代を懐かしむ人の習性につけこんで。
「……そんな方が、なんで今さら叔父様を?いえ、わたしたちを襲うのですか?」
「気づかれたんだろうな。この学園の真の目的に。」
「真の……目的?」
「ああ。エスターセル女子魔法学園は、この戦いを終わらせて、人族の未来を救う。そしてそのために、キミたちの力が必要なのさ。」
「わたしたちの!?」
それは学園長もおっしゃられていたことなのです。
わたしたちは人族最後のトリデである、と。でもその詳細は未だ秘密のまま。
「女なんかに世界を救われるなんて、コアードの理念に反するのさ。大佐のメンツも丸つぶれ。だから、その前に潰しにきたってわけだ。ゴラオンの奪取なんてモンなら、キミたちの安全には代えられないからくれてやってもよかったけど、それで済むわけないだろうっておっさんもわかってて。」
主任も!?そう言えば、主任はかつてコアードの同調者のようなお立場だったかも?
「でしたら、イスオルン主任がおっしゃられた代理戦争というのは!」
「ああ、つまりはこれは、僕の提案した、この学園を基盤とする戦争終結案と、それが気に入らない大佐の戦いでもある。さすがは大佐。こんなに少ない情報から僕の案に気づいたらしい……しくじったよ……僕が気づくことは、大佐にも気づかれる……」
わたしたちが全く気付かないところで、高度で熾烈な情報戦?いえ、頭脳戦があったのでしょう。
「でも……叔父様のご提案!?人族を救う案を、人嫌いでひきこもりの叔父様が?」
人族の敵は人族なんて、当たり前にお話になる方なのに?
人前に出るのもお嫌いなのに。
「……だってそれが、キミの願いなんだろう?……言ったじゃないか、僕はキミの願いをかなえて見せるって……。」
いつもなら自慢そうに話すこのセリフも、今はプールサイドに座りこんでわたしに抱きかかえられたまま、弱々しく話す叔父様です。
そんな叔父様を見ているのがつらいのです。
でも……なんでしょう、つらさの中に、なにか違う感情が交じっている?
「叔父様……お話しくださって、ありがとうございます。」
夜、一人の叔父様が、何をお悩みだったのか。
こんな大規模な実験をなんで一人で行ってたのか。
今もなぜこんなにお苦しみだったのか。
もちろん、その苦しみがわたしにも強く伝わってしまうのです。
でもそれだけではない。それを打ち明けられて、共に感じる苦しさの、その中から沸き上がる想いは?
「ゴメンよ……僕の戦いにキミたちを巻き込んで……キミの手を同族の血で汚してしまって……ゴメン、ゴメン……。」
こんなにも悲しそうな声をはじめて聞いて、それでも悲しみとともにこみ上げるものは?
「叔父様!叔父様は間違っていらしゃいます!わたしの夢に、わたしの戦いにこそ、叔父様を巻き込んだのです。」
いつもはわたしより高い位置にあるそのお顔を、あらためて思いっきり胸に抱きしめるのです。
そしていつもと違って抵抗もせずに、わたしに抱きかかえられるままの叔父様です。
「これは叔父様だけの戦いではありません!一人で背負わないで!一人でお苦しみにならないで!わたしにも背負わせてください!わたしにも戦わせてください!だって、これは……わたしの夢を叶えて、人族の戦いを終わらせる、わたしたちの戦いじゃないですか!」
そうです。
願いを共有するわたしたち二人の、いいえ、今となっては学園みんなの戦いなんですから!
その時です。
うっすらとしたツキの明かりが、急に狭まって、わたしたちに注がれたのは。
それはガクエンサイの舞台の上で浴びたすぽっとらいとみたいな光り。
でも、それはすぐに消える。
後には、プールに浮かんだ黄金の円盤と……空には元の黒い穴だけなのです。
「……実験は一部成功したようだ……ギリギリセーフだな。」
そして、顔をあげた叔父様。
その瞳には、あの夜の色の瞳には
「だから、これから仕上げをするのは、キミに頼むしかないようだ……」
わたし。
叔父様の瞳の中のわたしはうっすら輝いているみたい?
「叔父様……?」
そして気がつけば、今まで感じていた失調感が消えて、何かで満たされるこの感じ!
そうです!
わたしの魔術回路が再び開いたのです!
これなら魔術が使える!?
「叔父様、これは!?」
「月の魔力がキミに注がれたんだろう。あの月は、所詮は幻影さ。幻影が注いだ光だけどその効果が続く間は日蝕の間でもキミの魔術回路はちゃんと起動するよ。だから、これからみんなの所に戻って助けてあげて。」
戦える!
みんなを守るために戦える!
わたしの夢を叶えるために、戦える!
戦いを終わらせるために戦える!
それは矛盾だらけの結論だけど、叔父様もそれを許してくださったのです!
「……だって、このままじゃみんなが危ないだろう。それに学園も、学園でやろうとしていた計画もこのままじゃ台無しにされてしまう。さすがに非暴力主義の僕だってそれは看過できないよ。僕は無抵抗主義じゃないんだ。ホントは自分で後始末したいけれど、でも……」
未だその声には力もなく、すぐに一度うつむく叔父様です。
「でも?……叔父様の魔術回路は開かないのですか?それに、みんなは?教官方は?」
この時、叔父様のお顔に浮かんだのは、隠しきれない無念でした。
「今、魔術が使えるのは月の魔力を直接浴びた魔術師、キミだけだ。そして、やっぱり僕の魔術回路は焼け切ってもう再生しないみたいだ……やれやれ、キミの願いをかなえるなんて言ったけど、最後はキミが自分でやるしかないんだな。これじゃいいとこ手伝ったのは半分くらいだね。」
半分?
半分こ?
わたしの夢を叔父様と半分こ!?
そしてさっきは叔父様の苦しみも半分こ!
それって……喜びも悲しみも、二人で分かち合うということなのでしょうか?
今さらながら、そんな大事なことに気づいてしまったわたしです。
「でも半分なんかじゃあな。僕は最後まで、全部背負いたいんだけど……この後のことはキミに任せなきゃいけないなんて、悔しいな。あんなに戦うなって言っておいて、このザマさ。挙句に黙ってるつもりだったことまで打ち明けて、キミに背負わせてしまうなんて。ゴメンよ。」
叔父様はせっかく実験が成功したにもかからわず、落ち込んだままで、ずっと謝り続けるのです。
でも、わたしは魔術回路が再起動して日蝕症が治ったせいか、いえ、それよりも、叔父様と思いを共有できることがうれしくて。
「半分でいいです!いえ、半分がいいです、叔父様!謝るよりも、これからもわたしの夢を半分背負っていただけますか!」
わたし一人じゃムリだし、でもわたしの夢を叔父様に預けっぱなしというのは絶対おかしい。
でもわたしと叔父様、二人一緒で叶えるのなら!
「え?まあ、キミがそこまで言うなら……そうだよね。自分でやりたいことなんだもんな。でもなあ……なんだかそれは寂しいよ。危険なことにキミを巻き込みたくないのに。」
幼い時から自立させるための躾をしてくださいながら、結局は世話を焼きたがる叔父様だったのです。
だからこれはチャンスです!
「じゃあ、他のものも半分!わたしの苦しみも悲しみも、うれしいことも、これからずっと半分背負ってくださいますか!そしたら、叔父様の秘密も半分はわたしが背負いますから!」
今日犯した罪も、さっきまでの苦しさも、叔父様に共有していただければどんなに……いえ、これからの全てを一緒に!
わたしの人生を一緒に!
「キミが頼ってくれるのは一番うれしいよ。でも、僕にはキミにも話せないことがまだまだあって……それを全部話すわけにはいかないよ。まあ、そう、半分くらいならそのうちにね。」
わたしに関することになると、一番うれしいことが増殖する叔父様なのです。
そして……大事なことには、いつも気づかない。
「……言質、とりました……」
「え?なんだい?」
「いいえ……では、いつかわたしも、叔父様のお抱えになっているものを半分背負ってみせますから。」
「いや、僕には抱えてるものなんてもう何もないよ?」
この人の、わたしに隠していた憂鬱も、まだ話せない秘密も、前世の消えない罪悪感だっていつか半分背負いたいのです。
今はムリでも、いつかは必ず背負ってみせるのです。
これ、そういう儀式です!
思わず口もとがニンマリしちゃうわたしです。
「……なんだかおかしいな?」
首をかしげ始めた叔父様は、でも未だにお気づきにならない。
なんて鈍いんでしょう。
さすがはコミュ障のひきこもりなのです。
でも、もう遅いのです!
「約束ですよ、叔父様。先日の約束とはまた別に、これも絶対守っていただきます!」
いつのまにかしっかりと叔父様にしがみついて離れないわたしです。
思春期以来、わたしに触れることを控えていた叔父様も、さっきからの自然な流れに乗せられて、マンマとわたしを抱きしめてくださっています。
ずっとこうしてほしかったわたしです!
ようやく立ちあがった叔父様の胸に、あらためて顔をうずめるわたしなんです!
「あああ!クラリス様!またマーキングですか!ご主人様からお離れください!」
薬液の調整のために離れていたメルが、悲鳴をあげるのですが、もう手遅れです!
まあきんぐ……あながち間違ってないかもしれません。
だって、もうツバはつけましたし、精神的に。
魔術師の契約の重要性は、「魔道」の教えとして当の叔父がわたしにさんざんお話してくださったことですし、さっきの約束は「誓約」でこそありませんが、言霊となってわたしと叔父様の間に残り、新たな絆を結んだはずなのです!
「にゃあ」
わたしの足に頭をスリスリしてるのはクロちゃんです。
離れた場所の他のネコさんたちは、じっとわたしを見てる、いえ、笑ってる?
なんだかからかわれてるみたいです?
「クラリス……なんだか変だよ?」
わたしの様子とネコさんの仕草が気になって、叔父様はやたらと首をかしげるばかり。
次にお気づきになった時は、もうわたしの準備は万端なのです!
「クラリス様の口元が緩みっぱなしなのです!これはきっといやらしいことをお考えなのです!ご主人様のいろいろなものが危ういのです!」
メルは犬の耳と尻尾をふるわせて怒ってますけど、そんなのやっぱりするぅです。
結ばれたばかりのこの絆は、今はまだ見えないかりそめのもの。
すぐに消え去るはかない花に過ぎないのかもしれません。
今はこれが精いっぱい。
ですが、いつか、必ず……この花を咲かせてみせるのです。
そして、今は……わたしと叔父様の、そして学園みんなの願いをかなえるために、戦うしかないのです。




