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第23章 その2 決闘は5対5で 後篇

その2 決闘は5対5で 後篇


「双方、そこまで!話は聞かせてもらった!」


 エスターセル魔法学院という市内きっての名門(もちろん軍の男子校)と、わたしたち創立一年目のエスターセル女子魔法学園(軍初にして唯一の女子校)の間に、生徒間の確執があるのは、仕方のないことと言えるのでしょう。

 

 人嫌いの叔父様に言わせれば「人族の敵は基本、同族」という自虐的で悲観的な言葉になってしまいますけれど。

 

 昨秋以来の幾度かの対立がついに制御不能な域に達し、ついに決闘という流れになったその瞬間、やってきた叔父様です。


 銀縁メガネに黒一色の教官スタイル白ネクタイ。


 たまには違う服でも着ればいいのに。


 制服も私服もデザインがほとんど変わらないのは、わたしも人のことは言えませんけど。


 もともと校外活動の引率だったくせに、弟子で後輩格のエクスェイル教官に任せて雲隠れしていたくせに……しかもメルまで連れてるし。


 叔父様専属のメイドにして半獣人、そのくせ最年少教官というこの妹弟子は、頭の上のとんがり帽子の下に犬の耳を、ピンクのローブの下で犬の尻尾を隠し、叔父様にべったりで、上機嫌なのです。


 なんだか、ムカ、です。


 わたしは叔父様とメルをついにらんでしまうのです。


 そんな二人を非難するわたしの視線には、気づかない叔父様と「するぅ」のメル。


 知らないで無視する叔父様はコミュ障なので仕方ありませんが、知っててカンムシするメルでは意味合いが大きく違うのです!


「いやいや、クラリス、無神経のコミュ障を許すのはオカシイでしょ?」


 エミルが呆れたような声を出すのですが、叔父様のコミュ障は先天性で不治の病ですから、今さらどうしようもないのです。


「……クラリスもそんなところは少し病んでるってレンは思うの。」


「ん。同意。」


 なぜか義姉妹とすら言えるレンとリトまでそんなことを?


 わたし、ハブられてます?


「決闘なんて野蛮な…‥‥だが仕方ない。男と女の戦いもまた若者には必要だろう。わかった、しかし、そのやり方は僕に任せてくれ」


 非暴力主義の叔父様です。


 それが決闘を止めるとばかり思っていたのに容認?


 そればかりか決闘方法まで提案してくださるなんて、おかしいんですけど、妙に乗り気には見えるのです。


「女子校の、とは言え教官公認の決闘か。ならまかせるよ。」


 男子生徒のリーダーっぽい人ですが、話し方が無礼です。


 女子校ってだけでわたしたちはおろか、叔父様やエス魔院の先輩だったエクスェイル教官まで下に見てる安っぽいプライドが、見え透いているのです!


 名門校ってこんなものなんでしょうか?


 互いに目くばせして不満をためこみむわたしたちなんです。


「だが、いきなり全員は難しいな。まず五人対五人でやってみよう。」


 代表戦、ということなのでしょう。


 それはまぁ叔父様にしては理に適った提案に思われます。


 20人規模の集団魔術戦にはいろいろと手配も必要でしょうし。


「それに、往来では魔法生物の移動に支障をきたす。場所を変えるよ。」


 そう聞いて思わず周囲を見渡しますが、辺りは驚くくらい、さっきまでとは変わってない?


 ここは王都の一画。


 他の街中でこんな騒ぎを起こしていれば、よくて大勢の野次馬が、悪ければ衛兵隊がやってくるのです!


 それなのに、いるのは移動中の魔法生物ばかり。


 大小各種の魔法像ゴーレムや見慣れない合成生物キメラを見てはリルが「あれなに?」って聞いて、デニーが「あれはスフィンクスですね」なんて答えるやり取りがしばらく続きましたけれど。


 さすがは魔法街、たまにみかけるローブ姿の住人たちはこんな普通のことには無関心なんです……。


「今は忙しいんだよ。みんな蝕の準備で大変なんだ。これから行くところも、まあ、そうなんだけど。」

 

 ゾロゾロ。


 わたしたち20名以上のエス女にやはり20人近いエス魔院の学生たちが歩くわけですから、これだって他の街路では相当目立ちますけど。


「あいつら、校外活動にわざわざ教官がついて来るんだぜ?」


 だって魔法街すら不案内で、仕事内容も未知で、先輩もいない創立一年目でなんです!


「危なっかしくて目が離せないんだろうよ?」


 そんなことはありません!


 わたしたちと教官方は信頼関係ばっちりです!


「そりゃそうだ。エス女の赴くところ、常に騒動ばかりだからな。」


 カチン!


 それは一部の人(主に叔父様!)のせいです!


 それに、この一月は平和です!

 

 もう、さっきからこんなコソコソとした陰口が聞こえてきます。


 まったく、なんて姑息なんでしょう!


「しかもあの教官……女連れだぜ?」


「あの女魔術師、帽子でよく見えないけど、かなり若くネ?」


「けっこうかわいいんじゃないか?」


 ……しかも、見る目がなさすぎ!


 確かにメルは生徒より年下の13歳で、見た目は、まあ、愛らしいのは認めますが、あの中に隠してる犬の耳と尻尾を見たら、この人たちは迫害するに決まってます!

 

 そんな怒りをこらえる時間に耐えてたどり着いたのは、高い塔です。


 水晶みたいにキラキラしてますけど、硬い質感は、きっと金属のものです。


「ああ、あれ?水晶鉱を精錬してつくった水晶鋼だ。加工の仕方によってはガラスみたいに透明にもできる。ゴラオンの映像盤にも使ってるよ。」


「精錬……では、ここは?」


「錬金術組合の研究所さ。」

 

 広い敷地は高い石壁に囲まれ、その入り口には警備の方がいらっしゃいました。


 でも……ヨロイを着込んだ戦士さんに、灰色のローブを着た魔術師さんも。


 この人たち、冒険者さん?


「僕はゴーレム以外の魔法生物はキライでね。ホムンクルスなんて見たくもない。生き物をつくったりいじったりなんて冒涜的なことはイヤなんだ。ならばちゃんと専門家を雇用した方がいいだろ?」

 

 ……こんな大人数を警戒していた冒険者さんたちは、叔父様を見るや、姿勢をただすのです。


 コレって、顔ぱすですか?


 叔父様は、知り合いどころか関係者なんでしょうか?


「錬金術協会は公立だけど、ここはアドテクノ商会と民間の錬金術師組合との共同設立なんだ。」


 この王国では錬金術は実はかなり下火です。


 特に亜人との戦いが激化して以来、直接戦場で敵を攻撃できる魔術師は優遇されましたが、錬金術師は魔術を使えないばかりか戦争に否定的な人が多かったから、とも言われています。


「だから、私設の大規模な研究施設は、王都でここだけさ。」


 歩きながら説明する叔父様に、白くて長い服を着た男性がやってきて、あいさつすらせずにいきなり話し始めます


「フェルノウル師、先日のポッドに加え、オカモチの商品化についてですが……」


「そのまま進めてくれ。」


「わかりました。」


 で、用件が終わったら、これまた挨拶なしでいっちゃったのです。


 とても気ぜわしい場所みたいです。


 その間、わたしたとは物珍し気にキョロキョロと周りを見てしまいます。


 一方、エス魔院の男子生徒は知らんぷり。


 錬金術なんかに興味なしの姿勢です。


 若いくせに一種の権威主義者、魔術至上主義者なのでしょう。


 そして大小ある建物には目もくれず、叔父様が入ったのは小さな石造りの倉庫でした。


 いよいよ決闘の場に着いたのです。


 魔術時計で確認すると、意外なほど時間が経っていませんけど。


 


 倉庫の中はガス灯がともされ、内装ともども明るい雰囲気です。


「はい、男子は右側、女子は左側に並んで……そうそう、向かい合わせになるように。」


 素直に並んだわたしたち。


 そこは両校とも軍学校ですから、機敏です。


「では……コホン。」


 叔父様が咳払いをすると、開戦の合図を待って、わたしたちの緊張は高まるのです!


「一目会ったその日から」 


 叔父様が語りだしました。


 これを合図に、ガンつけです!


 互いににらみ合うんです!


「恋の花咲くこともある」  


 メルがそう続きますけど……故意の端?


 そうです、キッカケは彼らの悪意なんです!


「見知らぬ貴女と見知らぬ貴方に」 


 叔父様のおっしゃる通り、初対面でも絶対許せない相手がいるのです!


「デート取り持つ」


 でえと?


 デッド!?


 死を取り持つ?


 メル、それは死ぬまでやるんですか?


 そして、最後は叔父様とメルが腹ただしいくらいに息ピッタリにこう告げるのです。


「「パンチdeデート!」」


 パンチのみ、拳闘ですか?


 つまり、時間無制限の拳闘デスマッチ!?


 叔父様にしてはなんてありえないほど危険な決闘方法でしょう!


 しかし、これはわたしたち女子には不利です。


 それにエス魔院はわたしたち同様の軍の学校。


 格闘術も必修でしょう……もちろん、わたしたちだって護身術で習っています!


 地下迷宮実習でも実践ずみ!


 でも代表者にジーナをいれればよかった。


 魔法学校生どうしの決闘ですから、公認魔術師レベルの高い順に選んでしまいました……。


 でも、相手も同じ作戦なのか、体格で選抜したわけではないみたい。


 ならば勝機は!


 そう思い、仲間と視線を交わし、決意を固め合うわたしたちなんです!


 ……敵味方、それぞれ覚悟を決めた、そんな中、メルのやや間延びした声が倉庫の中に響いたのはまさにその時。


「あの、ご主人様?ご主人様に異論を申し上げるのは大変恐縮なのです。でも、今の宣言では5対5の集団戦ではないようにメルには思えるのです。」


 ………………。 


「あ、間違えた。今までのなし!」

 

 どて。


 一斉に転倒するわたしたちです!


 でも拳闘デスマッチではなくてホッとしました。


 


 あらためて、決闘のルールの説明が始まります。


 まず味方内で5人選抜するのは同じ!


 わたしたちは魔術戦を想定して、前期に認定された魔術師レベル順に五人です。


 シャルノ、ヒルデア、リト、ファラファラ、そしてわたしの五人です!


 そのうち、わたしとシャルノは市内対記録のレベル5ですし、リトたちはレベル4。


 魔術戦でヒケはとりません。


 更には、白兵戦になったとしても、リトをはじめヒルデアにシャルノ、わたしだってそこそこ対応できますし、ファラファラはまぁ、存在は意味不明ですけど、なぜか頼りにはなるのです。


 ちなみにレリシア様もレベル5、かつドレスソードの達人ですけれど、まさか決闘に王女殿下を担ぎ出すわけにはいかず、本人の強い参加希望にはみんなで泣きついて我慢していただきました。

 

 男子生徒もおそらくは魔術戦を想定して……と言うよりそもそも全員……華奢な生徒がそろっています。


 わたしたちは改めて大きな黒水晶のテーブルで向かい合い、席につくのです。


 奥の方から順に、1、2、3、4、5と番号がついています。


 わたしたちはシャルノ、わたし、ヒルデア、リト、ファラファラの順番です。つまりわたしは二番。


「さて、これからキミたちには今日の相手を選んでもらう。……名づけて……フィーリングカップル 5対5!」


 ようやく決闘相手の選択カップリングらしくなってきました。


 しかし、感覚フィーリングで選んでいいんでしょうか?


「だけど、その前に自分が選んだ相手にいくつかの質問をしてもらう。」


 質問?


 互いの得手不得手を質問して、それを選択するわけですね。


「最終的に、このボタンを押せば、テーブルに仕組まれた装置で矢印が点灯し自分の選んだ番号の相手に進むんだ。」


 では、このテーブルは対戦相手を選ぶ仕組みが呪符されているのでしょうか?


 さすがは錬金術、わたしたちには未知の領域なのです。


「で、互いの選んだ決闘相手が一致したら、その場でカップル成立だ!」

 

 ということは……


「教官殿、もしも成立しなかったらどうなるのですか?」


「その場合はそのままお帰りしていただく。残念だけど。」


 なんと!


 それでは決闘は一組も成立しないかもしれないのです!


 謀られました!


 これは叔父様が決闘を曖昧にウヤムヤでなんとなく終わらせようとする作戦なのです!


 さすがは非暴力主義の叔父様……なんて狡猾なんでしょう。


 しかし、その手に乗るわけにはいきません。


 エス魔院との確執は、今日で終らせたいのです!


 ですからわたしだけでも対戦相手カップル成立を目指すべく、必死に質問を考えるのです!


 そこで、一番優秀そうな、敵のリーダー格に的を絞るのです。

 

 そして未だ戸惑う敵味方に先駆けて質問するのです!一番槍です!


「一番の方に質問です!あなたは簡易詠唱ができますか!?」


「へえ、クラリスはああいう男子が好みなんだ。」


 叔父様のささやき声ですが、この場合当たり前なんです!


 短期決戦では敵主力の撃滅が最良!


 戦術の基本です!


「強敵はわたしが引き受けるんです。叔父様は黙っててください!」


「なんだか積極的だね……やれやれ。クラリスも大きくなって。」


 ムカムカ。


 そんなに決闘をやめさせたいのですか、この人は!


 まったく!


 そんなわたしたちの密かなやり取りの間に、一番が答えるのです。


「そんな高等技術、できるか!あ、いや、もう少しでできるぞ。もちろん略式詠唱は何個もできる!」


  フフン、どうやらこの人は決闘向きではないようです。


 ならば、他の仲間に譲って、わたしは更なる強敵を探すのです。


 やはり索敵、敵情視察こそ重要なのです。


「一番に質問だ!何系の術式が得意なんだ!」


「そんな手の内をさらすことには答えられませんわ。」


「四番に質問!得意武器?」


「魔術師が武器なんか使うか、バカじゃねえの?」


 わたしの質問がきっかけになって、互いに手の内をさぐり合うのです。


 しかし、今の反応……エス魔院は護身術を習わない?


 魔力が尽きたり乱戦になったりした時の対応は考えていないのでしょうか……いえ、そんな訳がありません!


 わたしたちはかなり厳しく鍛えられていますし、同じ軍の魔法学校が……ならばこれは欺瞞情報の可能性がある?


 敵もやりますね!


 情報戦は、まだ初歩しか習っていないわたしたちでは、こういう場面で真偽定かでない情報の斟酌には不得手なのです。


 デニーも入れておけばよかった……ジェフィは要りませんけど。


 むしろ不安要素になるし。


「あ~もうそういう質問はなしなし。もっとプライベートなことを聞こうよ?」


 そこで、同じように腹の探り合いが気になったのか、叔父様がこんなことを言い出すのです。


 ですが、なんでこんな連中にそんなことを聞かなくてはいけないのでしょう?


 それが決闘となんの関係があるのでしょうか?


 叔父様がおっしゃるには、錬金術は、様々な物質、人間の肉体や魂にいたるまでも対象として、それらをより完全な存在に錬成することを目指しているそうです。


 魔術と違って、人間そのものを進化させるという意味にも聞こえるのですが、それは錬金術に関わっていらっしゃる叔父様の人間性があの程度ですから、信ぴょう性に著しく欠けると言わざるを得ないのです。

 

 それなのに、プライベートな質問ですか?


 好きな食べ物とかお酒は好きかとか聞かれても不快なだけなんです。

 

 なので、以来わたしたちからの質問はめっきり減少し、一方相手方は図に乗って……どんどん対戦相手決定のための質問から遠ざかっているみたいです?


 わたしたちはもちろん無言・無視・無反応で応対していったのですが……


「好きな食べ物はおいしいものなのぉ~♡」


「好きなタイプ?ファラを好きな人はみんな大好きなのぉ~♡」


 ……約一名だけ、どんな質問にも笑顔で対応するものですから、しまいにはすべての質問が5ファラファラに集中するのは必然な訳です。


「五番の人、ねえ、キミ名前何て言うの?」


「それはNG質問なのぉ~♡ストーカーが増えちゃうの~♡」

 

 あれ、でもさっき「ファラ」って言ちゃってますけど。


「五番の子、もう決まった相手はいるの?」


「それは、ナ、イ、シ、ョ、なのぉ~♡でも、あなたがそうなる可能性はあるかもしれないの~♡」


「五番に質問!」


「五番五番!」



 …………これ、もうわたしたち四人、いる意味あります?


 せっかくのわたしの戦術案もあっさり崩壊です。


 代替案?


 それはもう決まってますけど……有力な一部隊による各個撃破。


 つまり、ファラファラに一任です。




 で、結果判定。


 まぁ、結果なんて見るまでもなく、予想通りエス魔院男子生徒の矢印はすべて五番に向うのです。


 一方わたしたちエス女はボタンすら押す気が失せて……って、アレ?


「ファ……っと五番の方、これ、よろしいのですの?」


 シャルノ以外も全員驚愕です!


 だって、こっちからの矢印は、ファラファラ以外からは一本もでないのに、フェラファラから五本も出てる!?


「あれ、まさかキミたち、押さなかったの?せっかくセッティングしたのに……しまった、想定が甘かった!」


 そして、ファラファラから放たれた矢は、そのまま相手五人に向い……これで対戦カップル成立?


 まさかの1対5じゃないですか!?


「ファラはいいの~♡あの人たちなら、大丈夫なの~♡」

 

 それでもニッコリしてユルカワな仕草で首をかしげる、そんなファラファラにだまされるのはおバカな男子だけで充分なのです。

 

「ふざけるな!女のくせに!」


「しかもお前ら、まだ一年だろ!」


「お前、かわいいからっていい気になるな!」


「逆にオレ一人でお前ら五人くらい相手にできるぜ!」


「俺たちが本気になれば!」


 などなど言ってたエス魔院の生徒たちですが……


「五人一緒でいいの~♡負けたらファラは何でも言うこと聞くの~♡」


 なんでも。


 この一言の破壊力に、彼らは目を血走らせてしまうのです。


 やっぱり若い男はオオカミだ、というのは本当なのです。


「やれやれ。余裕のない男は嫌われるんだけどなぁ。」

 

 そうですか?


 ムダに余裕があっても嫌われてる人もいますけど?


「クラリス、何か言いたそうだね。」


 やはり顔にでちゃいました?


 付き合いが長いとお互いいろいろわかっちゃうんですよね。


 こんなやり取りも……あと一か月なんでしょうか?


 そして、異例の1対5の決闘がはじまるのです!


 男女差、年齢差、人数差などを考えれば決闘と称することなんてアリエナイのですが……。




「あの子、火撃ファイアボルトを簡易詠唱で連射してるぞ!」


「しかも簡易詠唱でも威力が落ちてないんじゃないか!?」


「あ、慌てるな。あんな連続で術式詠唱なんて、魔力がすぐなくなるに決まってる!」


「うわっ、こっちの一斉射撃がかわされたぞ?」


「標的を動かすなんて、重力系の簡易詠唱?ウソだろ!?」


「「「「「ああ~俺たちの標的が~!!」」」」」


 …………数分後、


「はい、終戦。勝者ファラファラくん。よくがんばったね。」


 叔父様の緊張感のない勝者宣告の後に響くのは、


「すごいです!ファラファラ!」


「ファラ、かっけー!」


「オトコマエ~!」


 というわたしたちの歓声と


「まさか……。」


「悪夢だ……。」


「こんなのありえない。」


 なんて男子たちのうめき声でした。


 笑顔のファラファラの前に、がっくりと膝をついたエス魔院の男子たちです。

 

 そこに並んで立った叔父様とエクスェイル教官です。


「キミたち、男とか年上とか言う前に、ちゃんと魔術と向き合いたまえ。まずは詠唱の……」


 この場で個人指導を始めそうな叔父様ですけど、今やられても傷口に塩を塗るような行為でしょう。


 さすがに制止するわたしです。


「魔道」だって敗者への情けくらいはあるのです。


「この子たちに負けても恥じゃないからな。だけど先輩として一言だけ言えば……」


 エクスェイル教官の前半の言いかたには、とても引っかかるんですけど!


「いいか!この結果を謙虚に受け止められるかどうかが、魔術師としてのお前たちの将来を左右するんだぞ!」


 それは納得です。


 そう言えば、エクスェイル教官は昔は半獣人のメルをさげすみ、その後彼女に敗れて弟子となった人です。


 それはずいぶんと屈辱的に感じたと思うのですが、気が付けば今でも彼女に師事したままで、それでも今では中級魔術師として希少な若手。


 周りが非常識で目立たないだけで、かなりの実力派なんです。


 ですから、今おっしゃった言葉は、きっと自分に言い聞かせた言葉。


「なんて含蓄のあるお話しでしょう……。」


 まるでレリシア様みたいになったシャルノです。


 いえ、クラスのエクスェイル派はみんな同じ、両手を組んで空を見上げるポーズなのです。

 



 そしてこの日以降、エス魔院の生徒とのトラブルはめっきり少なくなった……わけではありませんが、悪化することはなかったので、おそらくあの学生たちもわたしたちのことを少しはわかってくれたのではないでしょうか。


「何言うてます?そんなん自分らの恥を口つぐんでるだけやありまへんか?」

 

 ……腹黒なジェフィの言う通りかもしれませんけど、でも、わたしはそうでないかもって思いたいのです。


 もっとも、以後、エス魔院では学生の教育方針を大幅に厳格化したとか、しないとか?


 そんなウワサを聞くのですけど、それは新年度になった後で……。




 それよりも問題なのは……


「おい、ファラ、また校門に例の男子たちが来てやがるぜ。」


「あんたのデマチ、また増えたんじゃないの?」


「そ~♡今度はストーカが増えたの~♡しかも学校バレちゃったから大変なの~♡」


 全然困っていないみたいにユルカワな仕草で首をかしげるファラファラに騙される、オバカな男子は後を絶たないみたいです!


 あのエス魔院の生徒たちに加え、ゾロゾロと彼女に従う男性たちは各校取り揃えて30人以上はいるのではないでしょうか?

 

 まったく……こんなに平和でいいんでしょうか!?


 あと一か月で叔父様が退官するのに……。


 ようやく訪れた穏やかな日々に、なんだか落ち着かないわたしなんです。


「……あないな騒ぎで平和言います?班長はんもてんごういはりますなあ。」


 陰険ジェフィにこう言われると、自分の感覚に自信がなくなりますけど。


 しかし……やはりこれは平和な日々だったのです。


 今まで起こった幾多の、そして、この後に起こる事件と比べれば。


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作者:SHO-DA 作品名:異世界に転生したのにまた「ひきこもり」の、わたしの困った叔父様 URL:https://ncode.syosetu.com/n8024fq/
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