第19章 その17 湖面の上の記述者(ライターズ)
その17 湖面の上の記述者
叔父様がおつくりになったカタナ「至空」。
それを手に取り、あっさりとサムライさんの技「飛閃」を放ったリトはホントにすごいんです!
「違う。このカタナ、すごく使いやすい。これのおかげ。」
謙虚なリトは控えめに答え、そしてすぐにサムライさんの手助けにまわります。
サムライさんも、なんだかにわかに弟子ができたみたいで、意外にうれしそうなんです。
「さすがは、リンドー殿のお血筋。ジロー殿も自慢でござろう。」
リンドー?
以前もその名前を話していたような?
それにジローって、叔父様の偽名じゃあ?
「おい!」
「すまぬ。口が滑ったでござる。」
「カタナの次は手、今度は口かよ。よく滑る男だな。」
リトもわたしもきょとん、のやり取りです。
「ちっ……ま、いいさ。で、たしかにそいつはいろいろ試した邪道のカタナモドキだけど、だからって血筋とかカタナとかで、そんな簡単にタイト氏の技が身につくもんか。」
リトは初めてサムライさんの刀術を見て以来、それこそひたすら凝視していました。
それにもともとカタナを使った戦い方は身についていましたし。
「だからお前は頭悪いんだよ。そんなんで、なんでもできる訳ないだろ。」
またフィアちゃんに怒られたわたしです。
「じゃあ、なんで一日で身についたんです?」
「……フン。」
で、答えてもくれません。
よっぽど嫌われてます。
ま、見た目は同い年でも中身は子どもですから、大目にみますけど。
「まあまあクラリス。」
だから、わたしは大目に見てるんです!
大人ですから!
「で、クラリス。今、すごいこと言わなかった?」
そうです!
今はこっちです!
わたしは勢い込んで、指さすのです
「スクロールの材料は、あれです!」
「……あれ?」
わたしの指さす方を見て、首をかしげるレンは、無垢でかわいいのです。
「あれ!?……お前、やっぱり頭悪っ!なんであれが!」
で、かわいい外見に似合わず口が悪いフィアちゃん。
もう大目に見るったらみるんです、わたしは大人ですから!
「あれか!そうか!その手があったか!」
そして、わたしの手をつかんで躍り上がる叔父様です!
「すごいよ、やっぱり僕のクラリスだ!」
「いいえ、叔父様こそすぐにお分かりくださって、さすがです!」
「いやいや、キミが。」
「叔父様こそ!」
そんな大盛り上がりのわたしたちを、冷たく見てるレンに、更に怒るフィアちゃんです。
「ア……教官殿!クラリスも。そんな場合じゃないの。すぐになんとかしないといけないってレンは思うの。」
「お前離れろ!パパが減る!」
なぜか二人に引きはなされたわたしたちです?
なんでこの二人が連携?
「それで、フェルノウル教官殿。リトたちが倒れちゃう前に教えて欲しいの。」
さっきから奮闘しているサムライさんに、新たに参戦したリトですが、二人とも疲れが見えます。
リトなんかさっき手助けにいったばかりなのに、もう?
それだけゲンブのあくび、つまり吐き出す大きな氷塊を相手にすることは大変なんです。
「あれ、つまり玄武が封印されている間に浸かってた地底湖さ。」
そうです!
目覚めかけの無制御な霊力を浴びただけで周囲の生き物が巨大化するほど。
ならば、封印中だったとはいえ何百、いえ、あるいは千年以上もゲンブが浮かんでいた地底湖の水だって、相当の霊力を蓄えているはず。
しかもあんなにたくさんあるんです!
「で、その地底湖を凍らせて」
え?
「そこに疑似魔術回路を描けば、特殊加工した触媒は不要で」
あれ?
「しかも、きっと虚数空間とつながっても回復は早い。」
あれれれ?
「おそらくは……ざっと概算だけど、空間刻印よりも威力があるよ!」
あれれれれぇ?
「すごいよ、クラリス!とっさにそこまで思いつくなんて!それともまさか『こんなこともろうか』とって考えてたのかい?」
そこまで?ぜんっぜん考えてません!
ただインクがわりになるって、思いついただけなんです!
それをここまで膨らませる叔父様の妄想、いえ、知恵と知識に呆れるばかり。
そして、もう首をプルプルふるだけのわたしです。
「でも、ア……教官殿。クラリス。どうやってあれ、凍らせるの?」
そんなわたしたちを見つめる、レンです。
少し緑がかった金髪の、ちょっと幼げな女の子はクラス最年少の内気な子。
そんな子も叔父様には憧れてるみたいで……なのに。
「ア……な、なに?」
今は不安げに後ずさり始めるのです。
それは叔父様のニヤリと笑う悪い顔を見てしまったのです。
もっともわたしには、あの主任の悪辣な笑顔と比べれば、イタズラを思いついた子どもにしか見えないのですけれど。
「まったく、子どもですか、叔父様。レンが怯えてますよ。」
エクスェイル教官派がクラスの多数を占める現状、貴重なフェルノウル教官ファンなんですから。
「レンさん!キミの力が必要だ!」
「ひ!」
って聞いてないし。
この人、昔から自分のアイデアを実現するためには、人の気持ちとか事情とか都合とか、全然考えないんです!
もう、わたしなんて何度泣かされたことか。
「さぁ。『変身』だ!成長したキミの魔法力で、あの地底湖を凍らせるんだ!」
ですが……困って見つめあうわたしとレン。
「ア……教官殿からもらったマジカルステッキですけど……」
「え?まさかないの?」
「叔父様、あの……わたしたち、実習に使うのは他の子に悪いって思って、置いてきたんです。」
「やれやれ。あんなに霊獣の解放するって、充分準備しろって伝えたつもりだったのに、やり方が優し過ぎたか。」
ぜんっぜん!
あんなに相手を挑発した犯行予告はありません!
あれ以上怒ったらわたし、怪人が叔父様だって思い出しても殺意を捨てきれなかったでしょう!
「ただ……授業の一環なので、どうしても公平じゃなきゃって……。」
「まったく、真面目だよね、キミは。」
「だからその女、頭悪いんだって、パパ!」
言われてしまえばその通りかも。
実際「常在戦場」ではありませんが、実はこっそり持ち込んだデニーのメガネやシャルノの腕輪なんかがなかったら、みんなどうなっていたか。
わたしが指輪をつけているのは、ただの……なぜかかろうじて残っていた叔父様への想いのおかげで、二人とは違うのです。
「ま、なんとかなるさ……って、どこだっけ?あったあった。」
何やら手をその辺りにゴソゴソ?
さっきもあんな感じでカタナをだしてましたけど……これってまさか呪符物でしょうか?
「え?ああ、昔『倉庫』ていう空間系の魔術を呪符してもらってね。」
それでこの人、どこからともなくいろんなものを出してくるわけですか。
「また、あの昔の女の話!火の術式を教わったっていう……パパの浮気者!」
昔の女!?
フィアちゃんからそんな生々しくも信じがたい単語が飛び出します!
でも、まさかです!
叔父様が、昔とは言え女性と付き合ったなんて聞いたこともないし、そんな気配すら微塵も感じません!
ありえないのです。
「浮気?なんでそうなるんだ?そもそも……ああ、いいやそんなこと。」
……思いっきり首根っこをつかんで揺すりたいのをこらえるわたしです。
そんな場合じゃない、って頭の中でひたすら繰り返すんです。
「♪~マジカルステッキテストタイプ~♪」
叔父様は、いつぞやのようにナゾの節回しでレンのステッキによく似た品物を取り出すのです。
もはやお手軽過ぎて、魔術師というより、これでは奇術師です。
「これは、レンさんに贈ったものの試作品で、おそらく一度使ったら壊れちゃうけど、ま、今が使い時さ。」
レンはうれしそうにお礼をいって叔父様から金色のステッキを受けとります。
レンのものは白いし、先端についている翠玉ももっと大きくて透明感があったような気がします。
それでもレンは叔父様を信じているのか、まったくためらいも見せず、前と同じようにステッキを振りかざし、軽やかに踊るような動きです。
「チャームアップ!マジカルチェ~ンジ!!」
そんなレンの声に合わせて、翠玉が強く輝きだして、白く強い光がレンを包みます。
足元には白銀の魔法円が形成し、回転しています。
そして、レンの肢体は輝きに包まれてはいます。
ですが、そのラインはやっぱり丸見え!
「叔父様、目をそらしてください!」
「あ?でも、せっかく作った呪符物がちゃんと動作してるか確認しないと」
「いいから!エッチ!」
いえ、こと魔術や呪符物が絡めば、叔父様にはそんなつもりではないのはわかってはいますが、それでもダメです!
しばらく叔父様の目をふさぐわたしです。
そんなことをしている間に、輝きが消え。
「はいは~い!マジカル・レンネルで~す!『見た目は大人、中身は一緒』の魔法少女は3分限定だけど。教官殿、どうですか?大人になったレン、かわいい?」
レン、いえ、5歳ほど成長し身長も10㎝以上伸びたマジカル・レンネルは大胆です!
いつもの内気な感じはどこへやら。
フリルとリボンに飾られたライトグリーンのミニドレスをまとった彼女は叔父様に微笑みかけて、その前でクルリと回転、異常に短いスカートをひるがえす動作はあざとさすら感じさせるのです!
でも魔術でスカートの中は見えないって、絶対ウソ!
時間魔法によって3分限定とは言え、5年後の自分を召喚し同一化するという、理論からしてわたしには理解不能な術式です。
でも目の前には実際に18歳ほどのレンが立っていて、なんだか優越感に満ちたまなざしでわたしをチラリ。
普段は幼げでおとなしいくせに、そんなに大人の自分を自慢したいんでしょうか。
ですけど。
「さ、時間がない。飛ぶよ!」
「え?ア……教官殿?」
叔父様は問答無用でマジカル・レンネルを右手で抱き寄せ、左手で剣印を斬ります。
するとドロ~ンって、スネークドラゴンが現れたのです!
頭部は竜種なのですが、7,8mほどのうねる蛇身に短い手は、既存のドラゴンとはやはり少し違います。
あれは叔父様の使い魔、「十二神将」の一つ、「辰」なのです。
「ドローンってオスのミツバチでも無人機でもないぞ。」
またそんな意味不明のことをおっしゃる叔父様ですが、無人機(ドローン……米製)の起源が「クインビー(女王バチ)……英製」のコピーから始まったなんて補足されても、ますますわからないのです。
「きゃあああ!」
「ゴメンよ、レンさん。でも狭いし、ガマンして。」
レン、いえ、マジカル・レンネルの悲鳴は、おそらく叔父様に抱き寄せられたことではなく、ヘビっぽくて細長いドラゴンに乗せられていることのせいだと思うんですが。
「だって、だってぇぇ」
「時間がないから、だからガマンして。」
おそらく叔父様はご自分が嫌われていると思い傷つきながら、それでも暴れるマジカル・レンネルを拉致し、湖に向って飛ぼうとするのです。
これではただの誘拐犯ですけど。
「なんだよ、あの女。ちょっと大きくなったからって、パパと二人きりなんて、いい気になりやがって!」
これも誤解でしょうけど……説明してもかえって怒りそうですし。
「二人きり……。」
ですが、自分のアイデア実現に夢中になってる叔父様に例えその気がなくても、わたしもなんだか複雑なのはかわりなく。
だったら……。
「えい!お邪魔します!」
って、「辰」さんに飛び乗り、叔父様の背中にしがみつくわたしです!
「あ、お前、ズルいぞ!フィアも!パパぁ、フィアを置いてかないで!」
で、わたしなんかより身体能力に優れたフィアちゃんは、かる~く辰さんに飛び乗って、まだ暴れてるマジカル・レンネルをわたしに押し付け、叔父様にしがみつくのです。
どんな平衡感覚でしょう?
さすがは麒麟の子なのです。
「クラリス~空飛んでるぅ、やっぱりレンは怖いって思うの。それにこの魔獣も怖いの~。」
「あ~よしよし。」
せっかくの「変身(見せ場)」がなんだか残念なことになったマジカル・レンネルです。
すっかり素にもどってきます。
「大丈夫かなぁ、こいつ、重量オーバーとかしないかな。」
こんなわたしたちの騒動を気に欠けないのはともかく、この発言はいただけないのです!
わたしは重くないんです!
そして、しばらくすると、地底湖だった、今は小さな湖の中心にたどり着くのです。
薄くエメラルド色に輝く湖面は、明らかに魔力的なもの、おそらくマナに満ちているのです。
それに映る、星空の中の、竜に乗ったわたしたち。
そんな幻想的な光景ですが、ゆっくり見てる暇はないのです。
マジカル・レンネルは、半ばベソをかきながらもわたしと叔父様に支えられ、「辰」の上でステッキを振りかざします。
「もう早くこんなの終わりたいってレンは思うの……大きくなって魔力も増大!そして増幅!ブーストォッ!……『氷生成!』」
輝くステッキ。
そしてマジカル・レンネル!その輝きは大きく広がり、湖面全体を覆うのです!
光が収まると……そこには確かに表面が凍った湖!!
「レン!すごいです!」
「へへ。これが大人のマジカル・レンネルだよ!」
なんて胸をはるレンは、確かに今のわたしよりも……ちっ、です。
いえ、舌打ちはしませんけれど。
ですが、間もなく。
マジカル・レンネルは再び光に包まれ・・・光が消え去ると、あっという間に元の13歳、いえ、14歳のレンに戻っていきました。
その手にあったステッキも、既になく。
「もう、今回の変身、見せ場なさ過ぎってレンは思うの!」
こうなると、年齢以上に幼く見えてしまうレンです。
わたしは慰めようとするわけですが
「それ、後にしてくれ。こっから更に時間との勝負なんだ。フィアもいい子にしてて。」
「は~い、パパぁ。」
いかにマジカル・レンネルでも、術式で凍らせた湖面はほんの表面だけ。
すぐに融けてしまうんです。
だから、すぐに凍っているうちに湖面に書き込むことが最優先なのです。
「さて……頼むよ。僕の羽ペン!」
そこで叔父様が取り出したのは、愛用の「ロック鳥の若鳥」の羽でつくったペンなんです。
ですが……。
「ああ、そんな不安そうな顔しないで。」
顔に出ちゃいましたか。
やはり乙女としては未熟なわたし。
いくら金貨数枚の高級品とは言え、そんな普通の羽ペンで、あんな霊獣を鎮める術式を書き込むのは、かなりムリがあるのです。
以前のゴラオンの毛筆は、聖獣クジラ竜のヒゲを使った超高級素材!
それとくらべれば、ペンの素材もですが、その大きさも含めてとてもかなわないのです。
「キミ、これが世間で流通してる『ロック鳥の羽』って思ってるだろ?でも実は違うのさ!」
世間?
違う?
意味が分からずきょとん、です。
それはレンも同じ。
でも
「パパぁ、フィアはわかってたよ!だって、パパからはずっとホーオーの気配がするから!」
叔父様が今、愛用していらっしゃる羽ペンは、去年の夏季休暇に訪れたときに初めて見たものです。
ロック鳥の若鳥のものだと思っていましたし「間違いじゃないよ」なんて言われたし。
ですが、今、その普通の(金貨数枚を普通なんて言いたくないけど!)羽ペンは、七色の光に包まれ、大きな、そう、南方で見たヤシという熱帯植物の葉のような大きさになったのです!
「鳳凰の羽さ。あの時、あいつも自分の存在を固定できなくてね。だから僕の『五行』に感応して白い羽なんかになったって言うんだけど……僕は『金』じゃないぞ。」
叔父様が言ってることは、だいたいわからないんです。
ですが、これほど不明なことも滅多にありません。
陰陽五行とか、それに基づいた世界観や魔術系統は全然教えてもらってませんし、まだしも「リョウシリキガク」とか「オタクネタ」のほうがわかるんです……とっても残念なことに。
「パパぁ?ホーオーは今、どうなってるの?」
「今か……今のことはわからないし、昔話をする気もその暇もない。後にしてくれるかい、フィア。」
「……パパがそう言うなら。」
ホントに父と慕う叔父様には素直なフィアちゃんです。
「なら、このままいくぞ!全員振り落とされるな!」
そして、こんな一言で注意を済ませて、いきなり全速力で動き出す叔父様と辰さん!
「きゃあああああああ!」
レンの悲鳴がかわいらしくもけたたましく、静かな夜の湖面に響きわたるのです。
凍った湖面すれすれにくねくねと飛ぶ辰さん。
そしてその首にまたがり、両手で持った七色に輝く巨大羽ペンで縦横無尽に疑似魔術回路を書き込んでいく叔父様です。
そんな叔父様を支えるのはフィアちゃんです……あれは「手助け」にならないんでしょうか?
ま、いいんならいいんですけど。
わたしとレンは、細い辰さんの胴体にひたすらしがみつくだけ!
それでも上下左右に振りまわされて、もう胃袋、いえ、内臓全部、逆流しそうです!
かろうじて、叔父様の刻まれた線から、虹色の光が輝き出すのは見えました!
こんな時間がどれほど経ったでしょうか?
もちろん薄い氷が解ける前、数分、或いは一分に満たないかもしれない時間のはずなのですが、わたしとレンにとってはとてつもなく長い時間だったのです。
そんな苦行の果て。
辰さんは湖の中心で静止し、高度をあげます。
湖面に映った星がちりばめられた宝石のようで、そこに描かれた、わたしには到底解読不明で複雑な文様が一望できるのです。
「クラリス、僕はこれから湖面に描いたスクロールの詠唱に入る。だけど、本来は描いた段階で込めた魔力で充分なんだが、今回は不足するかもしれない。」
優れた呪符巻物製作者であり、わたしが知る最高の詠唱者である叔父様は、魔術回路が起動しないただ人の頃から、スクロールを使って驚くべき奇跡的な現象を起こしたものです。
さんざん「やりすぎ」たくらいで何度事件になったことか。
それが「不足」するなんて!?
「そして、それを補う僕の魔力も残り少ない……お願いだ。僕の弟子であるキミは、魔力の性質が僕に近い。だから、僕の魔力を補正し、増幅してほしい。」
そんな真剣な目でわたしを見つめる叔父様は、新鮮すぎます!
今、胸の奥が、ぎっちょんって、油のきれた歯車のような異音を発してるんです!
「パパぁ!そんな女の魔力なんか!」
「フィア、キミもわかってるはずだ。今、この子たちの力は、キミのママの加護を受けてとても増幅され、そして澄んでいる。汚れて擦り切れた僕の魔力なんかじゃ、この子に助けてもらうしかないんだ。」
「パパだって!ママとかホーオーとかの、フィアだってパパに加護を授けてるよ!」
「それでも……魔術回路もあっさり焼き切れた僕には、やはり何かが欠けている。でも、この子には、その何かがあるんだ。きっと生まれた時からあって、それが麒麟の加護で、友達と過ごした経験で、もう今じゃ、こんなに立派になって。」
そんな叔父様の真摯なお声。
そしていつにない真剣なまなざし。
わたしは乙女としてのときめきと、姪としての信頼と、弟子としての尊敬と、そして魔術師としての高揚感、その全てを込めてうなずくのです。
「はい、叔父様!わたしのできる全力で、あなたをお守りします!」
それは、なんて幸せな瞬間!