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第19章 その5 ナゾだらけの冒険者(すけっと)

その5 ナゾだらけの冒険者すけっと


「ふう……班長、敵、羽兎獣8、撃破確認したの。」


「今度は全部やっつけましたね、班長。」


「ん。」


「そうそう、しかも今度はゴラオン使わなかったし、楽勝楽勝!」


 今日、5度目の魔獣遭遇戦です。


 四つ手灰色熊とかの大物相手にはゴラオンを出しましたが、それ以外の中小の魔獣にはリトの機甲馬と機甲馬車からの攻撃魔術、あと時々魔法兵としてわたしが出撃、この組み合わせで対応し、大きな戦果を出しました。


「ジェフィ、今の、危なかったですよ!」


「クラリスに当たる所だったの!」


「おやまぁ、偶然ですえ。気にせんといてください。」


 相変わらず約一名挙動不審ですが、概ね問題なし。


「魔力矢」がかすめたくらい、もう気にもしません。


 ちゃんと敵に当たってますし。

 

 それよりも問題は……。


「ええっ?」


「んん?ハレンチ!?」


 戦闘を終え、機甲馬車にもどったわたしとリトが見たのは……。


「セウル、どうだい?」


「うん、いい気持ち……もっと奥まで来てぇ……」


 ……………………。


「班長、あの二人、戦闘中からあんなことしてるんですよ!」


 普段は瘦せぎすで男の子に見えかねないデニーが顔を真っ赤にして。


「ワグナス教官も止めてくれないの。」


 無垢で内気なレンなんか正視できずにうつむいたまま。


「こないなこといけまへん。」


 糸目のメギツネ、いえいえ、鉄面皮のジェフィですら困惑しきっています。


「どうしたんだい。どうせ馬車も止まってるし、僕たち、他にやることないからね。」


「そうだよ。二人の大事な時間を邪魔するな!」


 そんなセウルギーヌさんは、あのナゾの人の膝に頭を乗せて、耳に木の棒を……あ!?


 そうか!


 耳掃除です。


 なんだぁ、です。


「……みんな耳掃除、してもらったことないんだ?」


 そう言えば、王国では耳を、しかも他の人に掃除してもらうという習慣がありません。


 ただ、わたしは……わたしは?


 なぜか知っている……昔、誰かにしてもらっていたから……優しく耳かきで中を撫ででもらうと、気持ちよくてウトウトしちゃうんです。


 でも、その後かあさんがやってきて、すごく怒ってて……。


 その記憶も、なぜか半分側、わたしでない方の景色は黒く染まったまま……。




「耳の中に、あんなものを入れるなんて、なんの拷問ですか!変態趣味です!」


「なんで女の子が男の人に膝枕してもらうの?反対じゃないってレンは思うの。」


「そないに気持ちええ言うたかて、信じられまへん。」


「あたいもあたいも!なんだか痛そうって思うよ。」


「ん。ハレンチ。しかも戦闘中から?不謹慎!」


 ですが、みんなはそんな感じでヒナンゴーゴーです。


 ああ、なんということでしょう。


 いつの世でも、文化や習慣の違いはたやすく人の衝突を招いてしまうのです。


 しかも、わたしたちには、冒険者さんたちへの反感がありましたし。


 それを治めてくれそうなワグナス教官も、いつもならその懐が深いお人柄に感心するのですが「まあまあ、そのくらいで」って、今はそれではちょっと困るんです。




 そんな一騒動の後、わたしは一度休止して、昼食をとることにしました。


 予定では昼過ぎには着いているはずなのに、途中魔獣との遭遇戦が続いたせいで、到着にはまだ少しかかりそうなんです。


 馬車から降りてノビをしながら、火を起こす準備をしようとして……ふと目があいました。


「……ジェフィ、『火炎制御サラマンダーコントロール』を頼める?」


 わたしたちの班は、彼女以外に火の精霊と親和性が高い仲間がいないのです。


 もちろん下級とは言え魔法兵ですから使えなくはないんですが、遠征の最中でもあり、無駄は省きたい。


「頼むなんて面倒な。ご命じになればよろしいでしょう、班長はん。」

 

 そんな皮肉をこぼしながらもジェフィは、触媒となる火打石を使って、火の精霊さんを召喚し、術式を詠唱。


 燃え上がる炎を操って積もった雪を融かし、乾いた地面にそのまま炎を据えます。


 任務中の野営の時は、火をつけることに厳しい制限がありますが、今回の戦闘の対象は亜人相手ではないため、教官の許可で可能です。


 そして火があるとないとでは、気分的に大きく違う。


 わたしたちのコートは外的な「寒さ」を防いでくれますが、辺り一面の雪景色からくる精神的な「寒さ」には、やはり焚火が一番。


 直に浴びる炎には、人の心を温めてくれる効果があるのでしょう。


「ありがとう、ジェフィ。」


 でも、わたしのお礼にも無反応。


 やれやれ、です。


 せっかく戦友認定したのに、彼女は自分の立ち位置を変えるつもりはないみたい。


 それでもみんなの輪の中には一応入っていますけど。


「デニーはん、ここはどのあたりですやろか?」


「そうですね……あと一時間ほどで着くと思いますよ。ですが、目立つ機甲馬車とは言え、こうも立て続けに魔獣と遭遇するなんて。」


「そうそう、さすがは北方だよ。」


「ん。」


「なんだか住んでる人たちが大変だってレンは思うの。」


 確かに尋常ではない遭遇率です。


 学園での既習事項でも、事前のネサイアでの調査でもアリエナイくらい……。


 正直このペースではわたしたちの消耗……主に魔力の……が激し過ぎて不安を覚えるほど。


 それもあっての休憩なんですが。


 学園の休憩室が、あそこの足湯が恋しくなります。


 なんて、いろいろ考えながらも、わたしは支給された黒パンをかみちぎります。


 黒パンは独特の甘酸っぱい風味があって嫌いじゃないんですけど、固いのが少し残念。


 レンなんか、スープに浸して柔らかくしてから食べてるくらい。


 デニーとジェフィは小さくちぎって口に運んでますし。


「この串焼きにしたソーセージ、おいしいよ。」


「ん。スープも。」


 それでも保存食が中心とは言え、我が学園の糧食は良質なのです。


 味も栄養もボリュウームにも不足はありません。


「ほんに。支給される携行食なのに、エス女は贅沢ですなぁ。」


 ジェフィがこぼすには、以前いたパン魔女では、普段の学園の食事でも戦場での窮乏に備えて粗食がメインだったとか。それではスパルタ主義、というよりわたしには半ば生徒虐待主義に思えるんですけど。


 毎日の食事に問題では心身の成長に問題ありすぎでしょうに。


「……クラリス、やはり奇妙ですよ。」


 そんな時、デニーがわたしに訴えたのは、先ほどの話題の繰り返し。


「ここまで他の班は魔獣に遭遇してないみたいです。ウチだけがこんなにたくさん。おかしくないですか?」


 魔獣討伐が目的ですから、魔獣が多いルートを選んだのですが、それなら他の班も大差ないはず。

 

 わたしたちだけが多い、というのは班の実習としては成功ではありますが、実情としては問題あり……あれ?


「ですが、デニー?なんで他の班の事情がわかったんですか?」


「ああ。エミルがそんなメールを送ってきましたよ。『魔獣なんか一匹もいない』って。」


「あ、やっぱりやっぱり?ミュシファもそう言ってるよ。『よかったですぅ~』だって。」


「4班もヒルデアが不審そう。」


「ファラなんか『たいくつなの~♡』だって。」


 …………それは他の班のメンバーと「魔電信」してたってことですか!


「あなたたち、それは軍律違反ですよ!」


 任務中は……わたしたちは実習中ですけど……本来、機密重視なんですから。


「固い、クラリス。情報大事。」


 なのに、リトまで。


「なるほど。だからエミルが『クラリスには黙ってて』って……あ、言っちゃいましたけど。」


 エミルめ。


 どうせ『クラリスは融通がきかないのが取り柄』とか言ってるんです!


「班長はん、軍律大事はけっこうですけど、物事の本質を見失うのはあかん思います。」


 それは、正論なんですけど……軍紀を差し置いての正論?


 しかもジェフィに言われると素直に聞きたくない……でも。


「すぅ~はぁ~すぅ~はぁ~っと……。わかりました。」


 ものすごい深呼吸をして、なんとか呑み込みます。


 その上で考えるべきことに集中です。


「みんな、馬車の中でも、もしもに備えてちゃんとポーチを装備して。以後、各自で必要と判断したら、教官やわたしの指示を待たず、備品の使用を許可します。中身は点検してるわね?」


 緊急用備品一式を収納したサイドポーチです。


 通常なら許可は必要ですが、今は非常時と判断することにします。


「あと、魔力欠乏の症状を隠さない!少しでも頭痛や吐き気、悪寒を感じたらすぐ申し出て。今のうちにワグナス教官に車内常備の魔力回復薬を出してもらいます。」


 わたしがこう言うと、気まずそうに手を挙げたのはリト。


 この子は機甲馬に魔力供給しながら術式を唱え、奮戦に連戦。


 そうなって当たり前です。


 我慢強くて口数が少ないから気がつきませんでした。


 わたしの失態です。


「早めに言うのよ、リト。他にはいない?恥ずかしいことじゃないの。言わないで後で魔力切れになったら一番困るんだから……。」


 そういう意味では……。


「んじゃあ、リト。それにリルもポーションをもらうから、ちゃんと飲んで。」


「ええ?あたいも?」


「そうよ。あなたは『魔力供給』が使えるんですから、何かあったら一番頼りになるし、一番魔力を失いそうよ。」


「そうなの?……はぁい。」


 もっとも、リルみたいな素直な反応はここまで。


 この魔力回復薬の一件はこの後も……


「そないな贅沢しはる?学生の身でポーションです?」


 とか、非難めいた口調のジェフィ。


「魔力回復薬?……………………いいですよ、許可しましょう……ですが、魔力回復薬も安くなりました。昔ならこれ一本で金貨一枚は下らなかったのですけどねぇ。」


 とか、苦渋の決断?をさなるワグナス教官。


「ワグ氏、古いなぁ。ここ数年で安価な代替原料が見つかって、大量に生産できるようにな

ったんだ。確かに今じゃ銀貨3~4枚で買えるけど。」


 とか、生産事情を詳しげに語るナゾの人。


「すぐに魔力がなくなるなんて、それでも魔術師なの、情けない。」


 とか、魔力欠乏に縁がなさそうなセウルギーヌさん。


 その長衣からちらっっと見えるのは、あの忌まわしい魔術具、大魔術師養成ギブスです。


 あんなものを常用して平然といられる魔力量って、いったいどのくらいなんでしょう?


 みんな、魔力回復薬にはいろいろ思うところがあるみたい。


 事情ありすぎです。




「我らエス女魔 魔法兵」


 みんなの声が馬車の中に響きます。


「「「「冬の雪原 踏み越えて 進む我らは魔法兵」」」」


 体を揺らして、楽しく歌うのはリルです。


 そのム、も大揺れですけど……。


「「「「まみえる敵に放つのは 『氷撃アイスショット』の一斉射!」」」」


 つぶやくように、それでもしっかり声を出すのは、いつもは内気なレン。


「「「「慌てふためく敵陣に これぞ必殺『氷雪嵐ブリザード』!」」」」


 メガネを怪しく光らせながら、声を張り上げるのはデニー。


「「「「我らの術は仲間を守り 我らの術でお国を救う」」」」


 口数は少ないのに、歌は平気なリト。


 意外。


 ずるいです。


「「「「我らの意志を世界に刻み 我らの意志で世界を変える」」」」


 ジェフィは「キャラやありまへん」って御者台に避難してますけど。


「「「「吹雪に負けぬ深紺みこんのコート、乙女の勇姿、目にも見よ!」」」」


 わたしも、探知盤に集中で、でもその半分はフリ。


「「「「我ら無敵の魔法兵 我らエス女魔 魔法兵!」」」」


 だけど、みんなは本当に楽しそうに仲良く元気に歌っています。


 行軍中の歌は「兵士の特権」と言われ、敵に気づかれるとかの軍事的の理由がない限りは、いつでも自由という不文律だそうです。


 わたしには無用の特権ですけど。


 自分の音痴が憎いです!


 一人歌いもせず、こそこそしながら探知盤で索敵してるのは、ただの偽装工作ですけど、何か!?


「みなはん、目的地が見えました。」


 ほっ、です。


 ジェフィの声で安心するなんて、わたしもヤキがまわったようです。


「ええ~もう着いたの?もっと歌いたいのに!」


 いいえ、リル。


 もう十分です。


「レンも。できれば二番も作りたかったの。」


 レン、それは「春」にしましょう!

 

 今は冬の一番だけでいいでしょう!


「そうですね、ミュシファにまた歌詞をつくってもらいますか?」


 デニー、実習中にむやみに「メール」は禁止です!


「ん。四季の歌詞欲しい。」


 ダメです、リト。


 それは今のわたしの気まずさが四倍になるってことなんです!


「こほん!みんな、到着したんだから切り換えて!降車の準備よ!」


 だから、ここは毅然と命じます。


 ええ、疚しさ?


 ふん、です。


 これは実習なんですから!


「……なんだか随分強引な指示だね。」


 ドキ。


 なんだかこの人、時々ミョーに鋭いんです。


「やっとうるさい音がやんだよ。こんなトコから出られる。」


 そしてセウルギーヌさんはいつも怒ってばかり。


 わたし何か悪いことしたんでしょうか?


 いつも不機嫌そうで、それでつい、ギブスのことを聞きそびれてしまうわたしです。




 これから、真冬の森林戦です。


 ここ、ろくに道もない森では、機甲馬車もゴラオンも待機です。


 とは言え、その戦力を使わないのは「もったいない」のです。


 なので、降車して、すぐに一生懸命行ったのは、雪や草木をかき集めての偽装工作。


「偽装迷彩」の術式は意外に高難度でまだ誰も使えないのが残念です。

 

 そして「敵検知」とか、「探知」「検知」系の術式を使い入念に周囲の調査。


 いない……当然ですけど。


 でも……つい黒い変人を探しているわたしです。


「作戦の目的は目指す敵の殲滅。敵は、森の外側にいて人族を襲うニルド雪トカゲです。」


 この森にいる魔獣の中でも、中程度に強く、そして人族への害は甚大。


 本来、爬虫類は寒さの中では動けないそうですが、この大トカゲは氷の精霊の加護を受け、冬でも、いえ、むしろ冬の方が元気とか。


 それでこの時期は雪トカゲがエサを求めて森にやってくる人族を襲うのです。


 そして時には近くの集落も。


 だからわたしはこの魔獣の退治を決めたのです。


「打ち合わせ通り、敵をこの場に誘引し、殲滅します。」


 機甲馬で索敵し、敵をおびき寄せます。


 そして、ここで偽装し待ち伏せしてる機甲馬車とゴラオンで攻撃です。


「誘引する機甲馬には一頭目、リト。二頭目はわたしが騎乗します。」


 戦闘しないで逃げるだけなら、わたしでもなんとかなるはず。


「ゴラオンはリル。機甲馬車にはデニー、ジェフィ、レンが待機。敵が来たら合図で攻撃。待機組の指揮はデニーに任せます。」


 きっとジェフィもデニーならやりやすいし。


「戦闘の連絡には、『魔電信』の使用を許可します。」


 レンの「精神結合」を使えば楽チンですけど、実習でそれは裏技ですらない、ただの反則。


「なお雪トカゲには「水」系の術式は無効化されると思われます。一に「火」、ついで「魔力矢」・物理攻撃が有効でしょう。何か質問は?……教官、または冒険者の方々、何かご助言はありませんか?」


 ありません、と仰るワグナス教官と、プイと顔をそむけたセウルギーヌさん。


 そして……


「何か忘れてると思うけど……ま、それに気づくのもキミの仕事かな。」


 ニヤニヤ笑いながら、そんな声を掛ける、ナゾの人。




 忘れてる?


 それは最近わたしが何かを思いだそうとするたびに起こる頭痛と関係があるんでしょうか……。


「クラリス、そっちに一体!」


 あ?


「うん。ありがとう、リト。」


 いけません。


 さっきのことに気をとられていました!


魔力矢マジックアロー!」


 騎乗で簡易詠唱。


 狙い通り白銀の矢がニルド雪トカゲに命中します。


 しかし、あの大きさでは「魔力矢」の一本くらい、怒らせるのが精々でしょう。


 いえ、怒らせるのが目的ですからいいんですけど。


 透明感のある白いトカゲは、ゴラオンどころか機甲馬車よりもずっと大きい。


 そしてその目もまた白く、わたしをそれこそ「氷の矢」のようににらむんです。


 ゾクっとした寒さがわたしを襲います。


 あ!


 これは邪眼!?


 全身が凍り付いて動けなくなりそうです。


「えい!」


 とっさに左手に持った学生杖ワンド掲げ、思念を込めます。


 ジワジワを浸透する寒さを追い払い、機甲馬に指示を出すと、機甲馬は雪をけ散らし、木々の間を抜けて雪トカゲから離れてくれます。


 なんて俊敏なゴーレム!


 ホント、誰が作ったんでしょう?


風切エアカッター!」


 やや離れた位置からわたしを支援してくれるリトです。


 その騎乗する様はわたしなんかの付焼刃とは全然違う。


 その風の術式も、雪トカゲにヒフを切り裂き、出血させるのです。


「代わる。」


「お願い!」


 だから、リトが雪トカゲの前に出て囮役を買ってくれます。


 当然わたしが支援に回り、術式で支援をします。


 そして、右手の人差し指の指輪で「魔電信」。


「誘引成功」と送信……する直前でした。


 あれ?


 指輪がチカチカ光ってる?


 これは受信の合図です。


 指輪を操作して画面を浮かび上がらせると


「……『デニーより 複数の敵が襲撃。防戦中!』……なんで!?」


 なんでこんなにわたしたちに敵が集まって来るんでしょう!?


「クラリス、一体増えた!」


 そして、わたしたちの戦闘音に釣られたのか、更に別の雪トカゲが!


「なんでこんなに敵ばっかり!?……あ!」


 ひょっとしてわたしが忘れてることって!?


「なんでさっきからこんなにわたしたちが襲われるのか、その原因究明も対策も考えずに作戦には入ったてこと!?……はっきり教えてくれればいいじゃないですか!」

 

 あの、口先だけで正体不明の、アヤシイしかないロクデナシ!


 


 はあはあはあ……。


「ポーチのポーション、全部使いきった。」


 リトだけではありません。


 サイドポーチの中の非常用ポーションは小瓶なので量は少なめで効果は半分くらい。


 それでも「体力回復キュア」「魔力回復マインドサプリ」「疲労回復リ・ゲイン」など各種あり、それでも全員がそのほとんどを使いきる始末。


活力付与カロリー」ですら残っていない。


 これだけの長時間戦闘、魔法兵では記録じゃないですか!?


「ゴラオン動かす魔力も、もうないよ~。」


 いつもは明るく元気なリルも、今は声を出すのがやっとって感じヘロヘロです。


「ははは、それでもやってきた敵は全て撃破!さすがは閣下!そしてわたしたちアルバトロスです!」


 で、こっちは狂騒状態のデニー。


 メガネも怪しくギラギラ輝いて、脳内物質アドレナリン全開ですけど。


 参謀役が平常心を失うのは、それこそ、大ピンチの連続だったんです。


「……みんな、生きてるだけですごいってレンは思うの……。」


 一方こちらは息も絶え絶えながら、なんか名言ぽい発言。


 言ってる本人は、今にも死にそうって感じのレンです。


 最年少の14歳であの小柄な体ではそれも当然でしょう。


「……三度くらい死にます思いました。」


 鉄面皮ジェフィにして、この弱音。


 なにしろ辺りは死屍累々。


 味方こそ損害1……わたしの機甲馬、中破です、ぐっすん……ですが、目標のニルド雪トカゲは3体も。


 他に一角雪狼12頭、羽兎獣16頭、マボロシとも言われた樹氷人アイストレントまで2体もいました!


 魔力を回復し、かつ、効率よく魔力炉で動かせるゴラオンや機甲馬がなければ、戦死、いえ、全滅必至の状況でした。


「なんでこんなに敵が……魔獣が集まってくるんですか!?」


 そして、この疑問は意外な形で解明されることになるのです。


 


 わたしがゴラオンの中で思わずそう一人呟いた時。


「それは、もちろん僕らのせい……いや、この子のせいかな。」


 どこからともなく、そんな、とってもアヤシイ声が響いたのです。


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作者:SHO-DA 作品名:異世界に転生したのにまた「ひきこもり」の、わたしの困った叔父様 URL:https://ncode.syosetu.com/n8024fq/
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