第4章 その4 クラリスと教官の怪しい関係
その4 クラリスと教官の怪しい関係
わたしたちが学園上空にくると、学園のグラウンドに大勢飛び出してきました。
エミルにリト!シャルノ!他のみんなも。
校舎もみんなも夕焼け色に染まっていて、なぜかとても懐かしく感じます。
「まるでわたしたちが帰るタイミングを知ってるみたい。」
「ああ、メルに知らせておいた。無事、救出して、もう着くころだって。」
・・・いつどうやって叔父様はあの半獣人と連絡を取っていたのでしょう。
わたしと空を飛んでいる最中に・・・。
それに、そもそも叔父様はわたしの連れ去られた場所がなぜわかったのでしょうか?
わたしたちはゆっくりと降下しました。今思えば、飛んでいる間は風を感じませんでした。
これも重力魔法の影響なのでしょうか?そんなことを考えていました。
そこに、メルがすごい勢いでやってきます。この子は本当に叔父様が側にいないと一時も安らげないのです。
「クラリス様!」
え?わたしですか!?メルに飛びつかれて、わたしはよろめいてしまいます。
なんで?見れば頭の上の犬耳がペッタンコになっています。
「すみませんでした。メルが・・・メルがもっと真剣に追いかけていれば、あんなやつらにさらわれたりはさせなかったのに・・・。ええ~ん・・・すみません・・・。」
メルは泣きながら何度も謝ります。尻尾もショボンとしたままです。
いつもはわたしには生意気で不愉快なのに、この子のこんな姿は久しぶりです。叔父様が隣でこう言います。
「メルは、キミがさらわれた、追いつけなかったのは自分のせいだって・・・ずっとこんな感じだ。大変だったんだぞ。」
こんなメルを見ると、さきほど「わざとわたしを放置した」なんて疑いを抱いたことがとても申し訳なく感じました。
ですから
「いいえ。謝るのはわたしです・・・ごめんなさい。わたしもあなたを誤解していました。なにより、わたしが講義室から出なければ・・・。」
ですから、泣きじゃくるメルを、わたしは懸命になだめるのです。叔父様もメルの頭を撫でます。
叔父様に耳を触られる度に、耳がピクッと跳ねるのが見えます。そして次第にメルも鎮まっていきました。
「でも、意外ですね。メルがこんなにわたしの心配をしてくれるなんて。」
すると、泣き止んだメルが、顔を上げて、わたしにニッコリ微笑むのです。
「だって、クラリス様はご主人様の大切な「姪御様」ですもの。」
こんなに可愛い笑顔をしているのですね、この子は。
「ですからクラリス様がどうなろうとかまいませんが、ご主人様の悲しむことをメルがするわけにはいかないのです!」
ムカムカッです!本当にこの子はブレないのです。さすがというべきでしょう。
いろいろと思い悩んでいる自分がばかばかしく思えます。うらやましいくらいです。
叔父様が、まだメルを撫でています。今の発言に何も感じてないのでしょう。ふん、です。
わたしは無言でメルを引きはがして、クラスメイトのほうに向かいます。
みんながわたしを囲んで歓声を上げようとします。ですが・・・
「待ってください、みなさん・・・クラリス。何か言うべきことはありませんか。」
真剣な表情でジャミルがそう言うと、みんなも静かになって、わたしに注目します。
そうでした。わたしはみんなに言わなければならないことがあるのです・・・。
わたしはみんなの顔を一人一人、ゆっくりと見ながら話し出しました。
「みなさん・・・すみませんでした。・・・みなさんにご迷惑をおかけして、ご心配おかけして・・・本当に・・・本当にすみません。すみません・・・。」
みんなに深々と頭を下げて、でも、みんなは静かにわたしを見たまま。いえ、もう一人を。
「それに・・・」
そう。その方にもきちんと謝らなければありません。わたしはそちらに向きなおします。
「フェルノウル教官殿・・・わたしは授業中にあるまじき態度をとり、あまつさえ講義室から、学園から抜け出すなど、脱走とも思える行動をしました・・・厳正な処罰をお願いいたします!」
わたしはフェルノウル教官・・・叔父様を見て、そう懇願するのです。
叔父様は、昔からわたしが失敗することには寛容でした。子どもは失敗するのが当たり前。
大人の僕でも失敗ばかりだって。
ただ、自分の品位を下げるような、人を傷つけるような、そんな時には困ったように諭してくれました。
しかし、今は魔法学園の、軍が管轄する組織の教官なのです。
それ相応のことをしなければなりません。だからわたしは自分から処罰を申し出ました。
そうでもしなければ、この人は厳しいことは言えないのです。
・・・そうなのですが・・・叔父様は、いつもの困り切った顔でこう言ったのです。
「めっ。」
って。怖くも強くも厳しくもない声で。
それを聞いたみんなが「え~っ!?」って一斉に声を挙げます。
エミルとリトにいたってはなぜか転んでいます。
でもそんな叔父様の声が、わたしにはなにより申し訳なくて・・・悲しくなって。
またこの人を困らせてしまったって。そう思うとボロボロと涙がこぼれてきて・・・。
空を飛んでいた昂揚から覚めたこともあったのでしょう。
わたしは思いっきり泣いてしまいました。
「本当にゴメンさない。ゴメンなさい・・・・ゴメンなさい・・・。」
泣いて叔父様にしがみついて。叔父様は、そんなわたしの頭を撫で、肩を抱いて言います。
「やれやれ。僕はもう処罰した。処罰しないことが、キミにとっては一番の罰だ。だから、後はクラスのみんなに任せるよ。」
そう言ってわたしの腕をそっと放し、みんなの方にふり向かせたのです。
わたしはまだ泣き止まないままで。
「・・・シャルノ、エミル、リト・・・」
みんなの名を呼んで、ひたすら謝って、たくさん泣いて。
叔父様が後ろから何度も頭を撫でてくれて・・・。
「教官殿がお許しになったのです。もういいでしょう?みんな?」
シャルノがそう言います。するとみんな、ドッと集まってくれました。
「クラリス!?大丈夫だった?」
素直に心配してくれるエミル。ありがとう。
「飛行の感想は?」
リトも!空は素敵でした。とっても。
ほかにも大勢、わたしの無事を喜んでくれます。わたしはみんなに必死に謝ります。
叔父様もみんなもわたしを赦してくれて・・・本当に反省しました。
もう、こんな愚かなことはしない、と誓ったのです。
「ところで、クラリス・・・今更だけど、教官殿とクラリスって・・・同じ名字だね。」
びくっ。デニス?この子はメガネの似合うミステリーマニア。
秘密をかぎだすのが得意な子です。まさか?教官がわたしの叔父様だって気づかれましたか?
全身が強張ります。
そして、デニスはメガネを光らせながら、わたしを指さしてこう叫んだのです。
「あなた、教官殿の幼な妻なのね!」
・・・何やら、わたしの心臓の歯車が機械油切れで「ぎっちょん」という異音を立てています。
ぎっちょん、ぎっちょん、ぎっちょん・・・。どきどきより数段危険な感じです。
「・・・幼な・・・妻・・・!?」
言われた言葉の意味を反芻します・・・「ええ~っ!」とわたしが叫ぶ前に周りがすごいことになっています。
わたしの顔から火・・・竜の吐息より熱い・・・が出ています。
エスターセル湖が火口にかわって、噴火したみたいです。
「ウソウソ!」
「あのお堅いクラリスが?」
「でも、なんかそんな感じ!」
「さっきのあれって絶対痴話げんかよね。」
「あたしも怪しいって思ってた!」
「もう15じゃ立派な正妻よ!」
「クラリス、どうなのどうなの?」
事情を知っているエミルやリト、シャルノは「めっちゃやばい」「困惑」「どうしましょう」って顔です。
他のクラスメイトは、その後も次々とわたしに波状攻撃をしてきます。
わたしの防衛線は陥落寸前、という以前に、自分自身訳が分からなくて、とんでもないことを口走ってしまいそうです・・・。
そして幸か不幸か、その時、校門から騎兵隊が現れたのです。
あの特徴的な、白と黒の革ヨロイを着て馬蹄を響かせ近づく一団は、ヘクストスの治安を守る衛兵隊です。
もっとも、なんで衛兵隊が?って考える余裕もわたしにはありません。そして・・・
「ここにヘクストス上空を飛行してきた者がいるはずだ。」
「北西の倉庫街・商店街を騒がせた疑いで、事情を聴かせてもらう!」
・・・ええっ?また「事件」なんですか!?
「それは、僕だ。この子たちには関係ないから、僕だけ出頭する。」
叔父様が平然と前に出ます。でも、いけません!
「わたしもです!わたしも一緒に飛行しました!」
わたしもそう言って、みんなの包囲網を突破して前に出ようとしたのです。でも
「飛行術式を使ったのは僕だ。そもそもキミに事情を説明しないまま行使した。責任は全て教官の僕にある!生徒は下がっていたまえ。」
叔父様はそう言ってわたしをかばおうとします。すると一番えらそうな騎兵さんがやってきました。
叔父様より少し若い気がします。赤毛で背が高く、精悍な顔立ちです。
「・・・事情を聞くだけだ。前途ある生徒に不利になることはしない。信用してくれ。・・・小官はヘクストス衛兵治安部騎兵隊クライルド・ワグナス大尉だ。」
・・・ワグナス?
「この学園にいるワグナスは小官の兄だ。慣れ合うつもりはないが、配慮はする。」
叔父様は、それでも難しい顔をしていらっしゃいましたが、わたしが進んで騎兵さんの方へ向かったのを見て、仕方なくついて来ました。
わたしたちは別々の馬に乗せられます。
「お嬢さん・・・キモが据わってるな。お名前を聞いていいかい?」
わたしは騎兵さん・・・隊長の前に乗っています。
隊長さんは長身なのでわたしの頭の先が顎にも届きません。わたしは塗り向いて答えます。
「クラリス・フェルノウルです。」
「いい名前だな。こんな時に笑顔で名前を言える。無罪確定だ。」
「隊長!?そんないい加減な!?」
並走していた副隊長らしい女性士官が、奇矯な声を上げています。
「ははは!な~に、面倒なことは全部その教官殿がひっかぶってくれるさ。そうだろ。教官殿?」
「話が早くて助かる。全ては僕のやったことだ。それでいい。」
叔父様はそんなことを言い張ります。隊長さんもそれで済ませてしまいそうな・・・。
「いけません!お・・・教官殿はわたしを守ってくださったのです!」
慌てて馬から飛び降り叔父様の方へ向かおうとしましたが、隊長さんに止められました。
叔父様は別の馬に乗せられていましたが、その様子を見て
「そんな危ないことをしちゃいけない・・・うわっ。ひい。」
と情けない声を出します。馬の上が怖いみたいです・・・空は平気だったくせに。
「なんか訳あり・・・ここでする話じゃない。屯所まで、あまり秘密を垂れ流さんでくれ。」
「はい。」
叔父様はその後は無言でしたが。
衛兵隊の駐屯所での事情の聞き取りは、クライルド隊長さんは礼儀正しく対応してくださったので、わたしは特に不愉快な思いをしませんでした。
わたしの誘拐から始まってもう事情は話し終わっています。
一方、副隊長さんという女性がたびたび隊長さんに泣きついている様子だと、叔父様の聞き取りは難航しているようです。わたしは迷いながらも提案します。
「あのぅ・・・僭越ですが、フェルノウル教官は特別な事情がある上に非常識な方なので、わたしが同席した方が聴取しやすいと思うのです・・・いかがでしょう?」
「何言ってるの?あなたたちには容疑者っていう自覚がないの!?」
「なるほど、んじゃそうしよう。アレイシル、いいだろ?」
「・・・。」
副隊長さん・・・アレイシルさんですか・・・20代前半くらいの明るい茶の髪をしたきれいな女性ですが、渋面を浮かべて何か言いたそうです。我慢してますけど。
「ところでクラリスさん、教官殿とキミは同じ名字だが、親戚かい?」
ふう、普通に親戚と聞かれてほっとします。
「はい。わたしは姪です。」
「本来肉親がいるのに教官になるって、それも事情がありそうだな。」
「はい・・・事情はたくさんあります・・・お話しすると長くなりますけど。」
「遠慮しよう。事件以外のことを聞くほど、込み入った一件でもないし、そこまで悪趣味じゃない。」
クライルド隊長さんはなかなか節度があるお方です・・・叔父様と違って。
いえ、叔父様もこんな場面で人の事情は聞きませんが、それは単に興味がないからです。
「教官、あまりうちの隊員を困らせないでくださいよ。」
「僕は何もしてない。聞かれたことに答えただけだ。・・・なんで、その子を連れて来た・・・まさかその子を取引の材料にでもしようってのか!そんなことしてみろ!」
危険です。危ないです。物騒です!その勘違いでなにが起きるか分かりません。
「叔父様、違います!わたしが安全だということをお知らせに来たんです!ですからお鎮まりください。間違っても駐屯所を壊すとか、そんなことは止めて下さい!」
つい必死で叔父様が暴走しないように先手を打ったつもりでしたが・・・
「随分物騒なんだな、キミのおじさんは?・・・ああ、教官、この子の言う通りだ。悪だくみはしていないし、我々も忙しい。彼女がいた方があなたが安心するって提案されたから連れて来ただけだ。ホラ。」
隊長さんに肩を叩かれ、わたしは叔父様のもとに行きます。
「叔父様、ね、安心してください・・・隊長さんは信頼できる方です。」
・・・叔父様と副隊長さんはそっくりの渋面になっています。それでも聴取はスムーズに・・・
「魔法学園の教官が魔法使えない!?」
「誘拐した一味を麻痺矢で全員倒した!?」
「飛行呪文をスクロールで実現した!?」
いきません。一つ一つなかなか信じてもらえず・・・それでもわたしが捕まっていた場所には衛兵隊が出動してくれました。
そして、特に法律に違反することはしていないものの、街を騒がせたということで、厳重に注意されました。
叔父様はこの街でも要注意人物として衛兵隊に登録されることになったようです。
最後に「僕は転生者だ。異民局に届けている」と言ったら思いっきりイヤな顔をされましたけど。
隊長さんは「どうりで・・・。」と納得していましたが。
一方わたしが誘拐された件については、衛兵さんたちが現場に向かった時には、もうだれもいなかったそうです。
なので、犯人も目的もわからないままです。
これが「北西街区の飛行事件」の結末です・・・。
「じゃ、教官。これからは大人しく頼むよ。クラリスさん、元気でな。」
「ふん。」
「はい。隊長さんもお元気で。副隊長さんにもよろしく。」
解放されたのは、セレーシェル学園長が私たちを引き取りに来てくださったからです。
そして、わたしたちはまた学園長室にいるのです。しかも二人の教授も。
「飛行した僕たちを見たくらいで、なんで北西街区が大騒動になるんだ?」
衛兵隊では、隊長さんでも飛行術式の重要さがちゃんと説明できず、叔父様は納得できなかったのです。
それが聴取が長引いた理由の一つでした。
何でも、飛行術式は、使える人がいることはいるものの、かなり使用頻度が低い術式ということなのです。
実際に使えるというワグナス教授も
「高い所は怖いのですよ、普通は。」
・・・わたしだけじゃないんですね。しかも
「都市間で移動するなら転送門がありますし、近距離なら馬とそう変わりません。普通に生活していれば、まず使いませんよ。」
イスオルン教授も
「戦場ではまあまあ使えるが、速度や高度に魔力を費やすと、すぐに魔力切れを起こして落ちて死ぬ。戦闘用としてはまだしも移動用としては更に微妙だよ・・・それを人ひとり抱えて・・・それは大魔術師級だよ。キミはどんな魔法を使ったんだ!?」
ですって。上級魔術士に魔法使いって言われる叔父様って・・・。
でも教授の表情は褒めているというよりは、嫌がっているというか、そんな感じがします。
「ですから、このヘクストスでも、空中を飛びまわる魔術士というのは、極めて希少でして、加えて無駄に目立ちたくもないという事情もあり・・・実際にここを飛んだ魔術師は・・・68年ぶりということですね。」
それは・・・かなり珍しいことのようです。
「緊急避難だ。」
相変わらず大人げない叔父様は、事情の説明をして、そう言い放ち、横を向いたままです。
でも確かに
「あの状況で逃げるには、仕方なかったと思います。教官殿のせいではありません。それは衛兵のみなさんもわかってくださいました。むしろ学園から出て誘拐されたわたしが・・」
「クラリス。悪いのはキミを誘拐したヤツらだ。僕たちじゃない。」
その後もいろいろ話になったのですが、最終的には衛兵隊にも緊急避難が通りそうです。
何より誘拐犯の捜索が最優先です。後のことはまた学園長にお任せすることになりそうです。
ですが・・・妙な噂が生徒に広まった件で・・・。
「もう一件はどうします。学園長?」
わたしの、あの、「幼な妻」の件です・・・恥ずかしいです。恥ずかしさで死にそうです。
「クラリスさん、そんなに顔を赤くして・・・かえって怪しいですよ・・・まさかホントなの?隠し子じゃなくて隠し妻なの?」
「学園長!?何を・・・ゲホゲホ・・・。」
もうわたし、本当に死にそうです。今度は窒息死です。
叔父様はわたしにグラスを持たせて水を飲ませてくれます。
「落ち着いたかい、クラリス。・・・学園長、この子は真面目で融通が利かないんだ。悪い冗談はやめてくれ。」
「ホホホ・・・これは失礼しました。」
なぜかセレーシェル学園長の余裕の笑い声が癇に障ります。
「みんなに素直に言っちまうか。叔父と姪だって。事情あってのことだし。」
そういう叔父様にイスオルン教授が言います。なんだか、とても不愉快そう。
「言っても、あまり効果がないのでは?二人の様子を見ると。」
「まあ、あの真面目なクラリスくんが、この取り乱しようでは・・・生徒たちが勘繰るのも無理はないでしょう。」
そんなにわたし挙動不審ですか?ワグナス教授までそう言います。
これではいつもの叔父様みたいです。学園長も教官のお二人もなにか誤解しているみたいです。
「・・・いや、だから、叔父と姪だって言えばいいじゃないか?」
不思議そうな叔父様です。
「叔父と姪では、夫婦でないという噂の否定にはならんでしょう。」
「なんで?」
そんな叔父様を不審そうに見る学園長と教授のお二人。実はわたしも。
「フェルノウル教官・・・ひょっとして4年前のトレデリューナ臨時法のこと、ご存じないなんてことはありませんよね?」
「トレ?・・・なんだい、それ?聞いたこともない。」
知らないのですか?叔父様!?・・・さすが、世間に興味ないって豪語するだけのことは・・・でも、これは興味を持ってほしかったです・・・あれ以来わたしがどんなに・・・いえ、でも。
いけません、また心臓に異音が、ぎっちょん、ぎっちょんって。
しかも気まずい雰囲気が学園長室を流れます。もうムリです。限界です。
「申し訳ありません!気分がすぐれません!退室します!」
そう言ってわたしは学園長室を飛び出しました。
そして、それから叔父様とは顔を合わせることすらできなくなったのです。
もっともフェルノウル教官の授業は、最終的に「飛行事件」とそれにかかわる諸事情で、しばらく休講になりましたけど。
そして、クラスでは、わたしとフェルノウル教官の関係について、とってもさまざまなウワサが流れることになるのです・・・。
もう恥ずかしくて、わたしもひきこもりたい・・・。