第14章 その5 サムライさんは、武術(バリツ)の使い手
その5 サムライさんは、武術の使い手
一通り衛兵隊から事情を聞いた後です。
「だけどね・・・『転移者』どうこう以前に、もともとの原因は復興の遅れなんだろう?」
そう叔父様が切り出すと、クライルド隊長さんは、その長身を一層かがめます。
「いや・・・衛兵隊に文句を言ってるわけじゃない。後で大元に言いに行くさ。」
大元?
イヤ~な予感がします。
世の中に興味がなく、おそらくお役所仕事なんか大っ嫌いな叔父様が、こんなふうに言うなんて、おそらくとんでもないことになるに決まっているんです。
「そんなに警戒しなくてもいいよ、クラリス。」
どの口がおっしゃるんでしょうか?
物心ついて以来のわたしの記憶の全てにかけて、否定せざるを得ないこの発言!
「・・・ま、いいさ。まずは状況把握だ。」
そう言って叔父様は懐から何かを取り出そうと・・・あ!
「浮揚!」
わたしが左腕の拘束を解いていたスキに、飛んでいこうとする叔父様です。
「偽装迷彩!」
続いて姿をお消しになろうと、宙に浮きながら二つ目のスクロールを唱える叔父様・・・
甘いのです!
パシッ!
「クラリス!?」
かろうじて、わたしは姿を消し始めた叔父様の足にしがみつくことができました。
そのまま空中に浮かぶわたしたちを、クライルドさんとアレイシルさんが呆気に取られて見ています。
「バカ!危ないじゃないか!」
こんな時は本気で叱ってくださる叔父様に、それでも言い返してしまうわたしです。
「バカは叔父様です!不慣れで嫌いな戦いをおひき受けになられて、わたしが心配しないとお思いなんですか!一人で行かせて、安心できるって思うんですか!」
「戦うんじゃなくて説得が目的だよ、安心して」
「相手は『そぉどはっぴぃ』な方なのでしょう?向こうから切りかってくるかもしれないのです!」
「余計にキミが心配だ。今、下に降りるからキミは離れて」
「イヤったらイヤです!いつもわたしを危険から遠ざけようとして、わたしだって・・・」
こんな感じで、またいつかのように、しかも空中で言い争うわたしたちなんです。
さっきまでの「いい感じ」が台無しどころではありません。
しかも下からの遠慮がちな声。
「あのぅ、お二人さん。それじゃ姿を消してる意味が台無しです。」
ってクライルドさんが。
しかも眼下では衛兵隊のみなさんが群がってきて、見上げてますし、アレイシルさんにも「これではただの怪奇現象ですよ」って。
わたしも叔父様も反論できず、しばし言い争うのをやめて、気まずい沈黙を続けるのです・・・。
結局、わたしが断固としてひかず、叔父様は再び折れてくれます。
いつも最後にはわたしの言うことを聞いてくださるに決まっているのに。
もっとも
「いいかい、僕は説得に行くんだからね。それでも万が一戦闘になったら、キミは離れるんだよ!ゼッタイだぞ!」
宙を飛びながら何度も念を押す叔父様に、その左腕にしがみついて殊勝にうなずくわたしです。
もっとも旅装にまぎれコートの下に隠している小剣を確認してるんですけど。
こんな時の叔父様の「万が一」なんて、確率的に真逆に決まってるんです。
つまりは一万分の九千九百九十九です。
なんであんなに賢い叔父様が、こんなにいつも判断が甘いのか、不思議で仕方ありません。
学習能力もないんでしょうか?
「あれか・・・この北西街区辺りじゃ比較的大きい通りで、しかも道がふさがっていない・・・ん?」
少し離れた通りには、王宮に向かう大勢の人が密集して進んでいます。
男の人がほとんどですが、なかには女性や子連れの方も・・・。
「叔父様?」
浮かんだまま、石板を取り出し、なにやら書き始める叔父様です。
「ああ・・・この辺りの復興が遅れている理由は・・・ホラ。」
石板には、この辺りの地図が「投影」され、叔父様がいろいろ書き込んでいます。
「見てごらん。この辺りは5年前の邪赤竜襲撃で壊滅して、その後、修復したけど、道が狭くなっててね・・・」
「あ?言われてみれば・・・」
今まで叔父様と一緒に飛んでいたのに、わたしはそんなことに考えがいたらなかったのに、叔父様はちゃんと分析を行っていたんです。
けっこう意外です。
叔父様がおっしゃるには、先日、邪巨人が転移してきた時に、せまい通りは奴らが歩くだけで両側の建物がほとんど崩れ、舗装もろくにされていない地面は穴だらけ・・・今もほとんど道が塞がれて、支援のための人も物資も滞っている、ということなんです。
「だから、復興が遅れているのは、怠慢とまでは言えないけど・・・ちゃんとその地の現状を把握しようとせず画一的なマニュアル仕事してるせいってところかな。」
「じゃあ、通りを開通させれば・・・」
「ん~でも人手がなぁ・・・自分たちでやるにしても、指揮する人もいなきゃ、兵士も魔術師もいない・・・冒険者はおろか人夫を雇えるような裕福な人はそもそもこの辺にゃ住まないし・・・。」
しばらく叔父様が沈思しておられます。わたしは両腕でしがみついたまま、自然にそのお顔を見上げるのです。
隊長さんに頼まれたこととは無関係に、いつのまにかこの人はこの地区の人を救おうとしてるんです。
ひきこもりのくせに、人が良すぎです。
そんな所も嫌いじゃありませんけど。
「・・・・・・ん?クラリス、どうしたの?」
「いえ、別に。」
思わず顔を伏せるわたしです。
少し頬も耳も熱い気がしています。
「そっか、僕が頼まれたことに関係ないことばかり言ってたからだね、呆れちゃったんだろ・・・」
全然そんなことはないんですけど。
この地区の問題は一瞬で理解したくせに、人の気持ちはわかってくれません。
「そうだね、まずは依頼された件をかたづけよう。まそのためには群衆をなんとかしないとね。」
「転移者のサムライさんを探すんじゃなくて、ですか?」
「なぁに、こっちから探さなくても、向こうから出て来てくれるさ。一番うまくいけば全部が一度に解決だけど。」
その叔父様は、何か企んでるお顔です。
主任みたいな悪いお顔、というより、いたずらを思いついた子どもの顔ですけど。
ホント、35にもなって。
「・・・。」
宙に浮いたまま、石板の上に置かれた絹毛紙に、スラスラと古代魔法文字を速記体でお描きになる叔父様。
その右手に握られるのは愛用の、ロック鳥の若鳥の羽毛ペン。
石板の上に置かれた闇銀鉱インクの小瓶ともども、こんな貴重品をいつも持ち歩いているんでしょうか、この人は。
書き終わってペンやインクをおしまいになって、右手を開いたり閉じたりしている叔父様です。
最近になって変なクセがついたみたい。
でも、こんな簡単に術式のスクロールを造っちゃう人は、この人をおいてこの世界にはいないでしょう。
魔術そのものは使えなくても、転生なされて以来の30年以上の研鑽が、この方の技術をこれほどまでに高めたのです。
どうせなら、少しは人の気持ちをわかる方面にも向けてほしかったですけど。
「叔父様・・・もうこんなにスクロールをお使いになって・・・」
「浮揚」「偽装迷彩」そして今お書きになった「眠りの雲」・・・。この石板だって呪符物ですし、もう紙代にインク代に材料費、いくら出費したのやら。
「クライルド隊長さん・・・お金出してくれるでしょうか?」
「まさか。」
「じゃあ、ただ働きってわかってて・・・」
「元は取るつもりさ。もっともそれはお金とは限らないけど。」
「・・・なんです?」
「さあね。」
叔父様はそうお惚けになって、眼下の群衆に向け、古式詠唱を始めるのです。
通りには、おそらくは数百人、ひょっとしたら千人はいるかもしれません。
人々は
「復興を急げぇ」
「支援をお願いしますぅ」
「おれたちを見捨てるつもりかぁ」
「金持ちばかり優遇するなぁ」
「国王陛下、お慈悲をぉ」
口々に訴えながらゆっくり前に進んでいきます。
ですが、あの中には民衆をけしかけて何かを企んでいる人もいるはずなんです・・・。
「天に星があり
空に雲がある
地に生があり
野に花がある
そして世には人間があり、
その術理がある。」
これは宣誓の儀式。
空間を清浄にして、魔力を安定させ、術式の威力を増大させるための儀式で、叔父様以外に未だ誰も解き明かしていない古代の秘術の一つです。
叔父様に言わせれば「早く能率よくカッコよく」ばかりを重視する現代魔術の傾向が嘆かわしい、ということになるんですけれど。
なんだか、おじいちゃんみたい。
「我は人の子のひとり、アンティノウス。術理に基づいて、術式の詠唱を行う。」
叔父様の、一音一音が正確で、抑揚も明瞭かつ流麗、音律も韻も完璧に整った詠唱は、他の誰も真似ができません。
そして何よりも・・・とってもきれいで、少し切ない叔父様のお声。
自分自身では魔術回路の生成ができず、魔術を使えない叔父様の詠唱に、なんでこんなに心が惹かれるのか。
それはおそらく、叔父様が魔術に抱いている憧れと感傷がもたらすのでしょう。
それは、まるで恋歌。
わたしはこれを聞くたびにそう感じるのです。
おそらく叔父様の、魔術への片思いの。
異世界からの転生者である叔父様が、この世界で本当に求めているモノは、「魔術」、それだけなのかもしれません。
でも、その願いは、その想いは決してかなわない。
あんなにきれいな詠唱ができて、スクロールだって即興で書き上げる技術をお持ちで、でもそれは叔父様にとっては、ただの代償行為に過ぎないのです。
叔父様の背中にまわした自分の両腕に、わたしは思わず力を込めてしまうんです。
ま、ご本人は全く気がついてませんけど。
長い古式詠唱を終え、ようやくスクロールの術式を詠唱していきます。
術式を開いた段階で術名を唱えれば終わるはずなのに、古式ではわざわざ全文を読み上げていきます。
「それは 安らぎに誘うもの
それは 静けさに導くもの
それは 休息を欲するもの
そして 眠りに落とすもの
雲よ 雲よ 慈悲深き雲よ
人を眠りに落とす優しき雲
そのものの名は 眠りの雲
眠りの雲よ ここにあれ!
*その働きは、術者の思う範囲にとどまらん。
我、人の子の一人アンティノウスが願う。『眠りの雲』!」
叔父様がスクロールを唱え終わった後、わたしの口から、ふぅ、と小さなため息がもれます。
まだ、そのお声がわたしの体内に甘い余韻を残しているんです。
しかし、ふと地面に目をやると、そんなものは一気に吹き飛ぶんです!
8月の、エクサスの怪眠事件の際には室内にいて見えなかったモノが、今は全て見えてしまったんです。
見たくなかったのに。
それはつまり、地面を覆いつくす白銀の巨大な雲であり、それが消えた後に横たわっている無数の人々なんです。
「うわぁ・・・叔父様。ホントに大丈夫なんですか、こんなことして・・・また事件って騒がれるんじゃ?」
事前にお話したんですけど、やっぱり不安です。
それに過去の記憶もよみがえってくるんです。
いくら走っても起きている人が誰もいなかったという、あの記憶。
「ああ。だって、今回は衛兵隊で原因もわかってるし、みんなを鎮めるためだから、見逃してもらえるさ・・・そうでなければ、衛兵隊に強制されたとか、あることないこと言いふらしてやるだけだ。」
「・・・・・・。」
やはり悪事の片棒を担いだ気がして、後ろめたいわたしです。
でも、騎馬衛兵隊がその場に駆け付け、民衆の中から何人か縛りあげていくのが見えます。
「ホラ、もうちゃんと衛兵も相手に目をつけてたし、これで民衆の騒動もなくなって、それをひき起こしたやつらも一網打尽。後はあの中にサムライがいれば万事解決さ。」
そう聞いたので、あの悪夢の再現を我慢して、叔父様が古式詠唱の「眠りの雲」を唱えるのを黙認することにしたわたしですけど・・・そんなにうまくいくんでしょうか?
一応、暴動とかにはならずに収まったし、怪しい人たちは無事に捕まえることができたみたいではあります。
「・・・って・・・アレ?」
え?
叔父様の視線の方にわたしも目を向けます。
そこには、人影が一つ。
「どなたでしょう?あんなところに?」
多くの低い建物が密集した北西街区では珍しい、なにもない平地・・・ただの原っぱです。
そして、その人が、腰の剣に手をやって・・・
「やばっ!あんなとこにいやがったか?」
そう叫んだ叔父様は、重心を移動して位置を変えます。
その時、突然地上から白い線が、いえ閃が走り、宙にいるわたしたちを襲ったのです!
「ちぃっ!」
「きゃ!」
その迫りくる閃撃は、叔父様の目の前ではじけて消えました。
同時に、二つの小さな何かが光って消えて、叔父様の手元に戻っていくのが見えました。
そして強い衝撃がわたしたちを揺さぶります!
「「丑」と「未」がやられたか?」
そう呟きながら、叔父様は降下し、建物の陰にかくれます。
その間も右手はわたしの頭を、左手は背中を抱きしめてかばってくれます。
「大丈夫。ちゃんと僕の『式神』が守ってくれる。」
建物の陰に素早く隠れ、様子をうかがう叔父様です。
「式神ですか?あの・・・『符術』とやらでおつくりになった?」
初めての叔父様の授業で、呪符された特殊な紙に、叔父様が魔法文字らしいものを書いて「折り紙」にしたら、鳥のように飛んでいったのをみんなと一緒に見たことがあります。
「うん・・・でもさっきのは、あんな下級術式でつくった使い捨ての『使い魔』じゃなくて、僕の自慢の『十二神将』なんだけどね。そいつを一撃で、それも二つ一遍にやられるなんて・・・ああ、実際には十二の『神様』なんて立派なモンじゃなくて、方位や時間の象徴である『聖獣』を術式で召喚して、呪符したんだけどもね。本物の十二神将とは比べ物にならないけど、けっこう便利で使えるんだ・・・。」
時と場をわきまえず、こういうお話はいくらでもしたがる叔父様なんですけど、さすがにわたしは
「叔父様、その辺で終わってください!」
って言っちゃいます。
それはわたしだって魔術師の端くれ。
未知の術式や呪符アイテムに興味はありますけど・・・ホラ!
再び走った線、いえ、閃が、わたしたちが隠れていた建物を真っ二つに切り裂くんです。
「こりゃ、三十七計目だ!」
「それって一時撤退ってことですか!」
「そうそうよくわかったね。さすがは賢いクラリス!」
って、優しく頭を撫でられましたけど。
「うれしいけど、叔父様、そんな場合じゃ!」
だって、両断されて、上半分がずれ落ちる家がこっちに、ほら、ズズズ~って!
慌ててそこから宙に逃れるわたしたちです。
「あれってなんですか?なんかの術ですよね?」
「術・・・ま、術っちゃ術か。」
そう言いながらも、後ろからつぎつぎ飛んでくる閃撃を避ける叔父様!
「なんで見えるんです、あの人?『偽装迷彩』は?」
「多分『心眼』ってヤツ。」
「なんですか、それ?」
「それこそ後にしてくれ!」
と言いながら叔父様が首をすくめると、そのわずか上を閃が走り、叔父様の髪が数本飛んでいきました!
さすがの叔父様も冷や汗タラリ・・・。
二人で安堵のため息をつき、いつしか地上スレスレを「浮揚」を使ったまま飛んでいるわたしたちです。
「いけね。高度を下げさせれた!」
そこに、遠くのサムライさんが剣を振るった軌跡が、白い線、いえ、閃撃となって再び向かってきます!
叔父様は、ふと周囲を見回し、右手を前に向け何かを放ったのです。
「牛!」と唱えながら。するとわたしたちのはるか前で光が放たれ、サムライの閃撃を打ち消しました。
その後、その光は叔父様の手元に戻ってくるのです。
「もう三つもか・・・『戌』はメルに預けてるし・・・」
ご自分の手元を見てつぶやく叔父様。
ですが
「叔父様、前を!」
サムライさんは立て続けて剣を振るい、閃撃を放つんです!
「ああっ、もう・・・これ以上この辺を壊すわけにはいかないし!」
叔父様は、右に左に閃撃を避けながら、市街を飛び回り、時に光を放って、周囲に被害を与えそうな閃撃を迎撃します。
それでも、市街の建物はあちこち壊されていきますが、よく見れば、叔父様はできる限りもともと壊れている建物の周辺を飛び回り、被害を抑えようとしていました。
そのせいで逆に逃げる方向が限定されて、サムライさんから離れるまで時間がかかってしまったんですけど。
それでも、なんとか一時退避し、今は家屋の一室に隠れてるわたしたちです。
「周辺の被害を避けるなんて・・・余裕ですね、叔父様。」
ちょっと、いえ、かなり感心しちゃいます。
だって、叔父様にしてはありえない気遣いです。
「余裕なんかあるもんか。でも、あんまり迷惑はかけられない。僕だってちゃんとそれくらいの常識はあるぞ。キミを僕の『外付け良心』よばわりさせないから!」
そこは・・・どうなんでしょう?
一緒にいたわたしが叔父様の「良識」で「ブレーキ」だから、ちゃんと周りの被害を考えたに決まっています。
お一人だときっと、辺りは今頃無残な廃墟。
そんな景色を浮かべてしまうわたしです。
「・・・なんか言いたそうだね、クラリス。顔に書いてあるぞ!そこは信用できないって!」
まだまだ正直で、隠し事のできないわたしでした。
年頃の乙女としては、今後の課題なんですけど。
今は話題を変えることにします。
「ところで叔父様。わたしにも見えました、あの人が剣をふるうたびに線が走ります。あれはなんなんですか?」
「それだ。それが『飛閃』・・・ヒノモト族の武術だね。」
ふう、です。
すぐに乗ってくださる、素直な叔父様でよかったです。
武術。
異世界転移者であるヒノモト族の多くは、もともとは高い戦闘力を誇る戦士なんだそうです。
その中でも、とりわけ優れた戦士を「サムライ」と言い、「武術」という特殊な能力を発揮するとか。
「それでも、転移してきた一代目がほとんどいなくなった今、二代目三代目じゃさらに使えなくなって、使い手はもはや『人間国宝級』のはずなんだが・・・一種の『先祖返り』かね?しかも『カタナ』もなしに剣であれだけ代用できるなんてな・・・計算違いだ。非常識も甚だしい。」
だから「異民」・・・異世界出身者って面倒なんですね。
隊長さんが叔父様に押し付けたがるわけです。
ですが「非常識」って叔父様が言うと新鮮すぎです。
「ニンゲンコクホウ・・・ってなんです?」
「あぁっと・・・激レアさんってヤツ。」
「レア」自身、叔父様から聞いた希少って意味なんですけど・・・更に「激」な方なんですか?
あのサムライさん、見た感じは髪が黒いだけで、なんら変わりのない普通の人。
少し粗末な平民服を着た男性でした。
体格だって叔父様より背が低いくらいの痩身なのに。
でも、その剣先が振るわれる度に閃撃は走り、全てを切り裂くのです。
「あれは『飛閃』。剣先の届かない範囲のものまで切断する『刀術』の一つだ。」
当たったら人間なんて、もう即死決定です・・・アレ?
「ですけど叔父様?あの方、以前は衛兵さんたち相手に戦闘不能で・・・」
だれも殺していないんじゃ?
「そうだね・・・それは『峰撃ち』なんだろう。『ソードハッピー』だけど『人斬り』じゃなかったのは不幸中の幸いだな・・・いや、待てよ?」
だんだんわかんない言葉が多くなるんですけど・・・人殺しさんじゃなかったってことは、とってもよかったです。
でも・・・
「叔父様、この後どうなさいます?」
「だから、説得だよ。最初から言ってる通りさ。僕はもともと非暴力主義だし、まして、あんな非常識な化け物と戦う気はない。」
・・・初心を貫こうとなさるのは立派なことのはずなんですけど、コミュ障で口下手、相手かまわず素直過ぎる言動で人を怒らせる叔父様が「説得」。
しかも相手は「問答無用」を絵に描いたようなサムライさん。
どうやら、わたしの頼りない想像力で、この作戦の成功をイメージするのは荷が重すぎるようです。




