3話『猫耳少女はモフられる』
今回は反省会します。
俺が馬車に乗ると、後ろから先程傷を治した護衛の男も乗ってくる。
「よっ、さっきは本当に助かったぜ!俺は、ジン。ギルドで報酬が良い護衛のクエストを受けたんだが、このザマだ。」
そう言いながら自分の服を指すジン。
笑っていいのか分からないので苦笑するに留める
何となく神眼を使ってみたところ、気になるスキルなどはなかった。
その代わりにといってはアレだが、少し驚いてしまう事が書いてあった。
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ステータス
名前:ジン
性別:男
種族:人間
年齢:36
職業:剣士Lv7
Lv14
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これだけ見るとおかしな事は何も無いように見える。
だが、ジンの見た目は20歳を過ぎたくらいなのだ。
「気にしないでくれ。偶然通りかかっただけだしな。」
「でもなぁ。あ、そういえばあの街には初めて行くんだろ?なら、良い宿を紹介してやるよ!」
ふむ、確かにそれはありがたい。
今向かってる街どころか、国とかも全く知らないけどな。
気になったんだが、やはり36には見えないこの見た目は異世界特有の美容に良い食べ物とかなのだろうか?
家の妹が知ったら、来たがるだろうなぁ。
まあ、半年くらい会ってないから今はそんなこと言わないかも知れないけどな。。
閑話休題。
「街に着いたらよろしく頼むよ。それと、外を警戒してなくて良いのか?」
実は、俺達が話し始めた直後に馬車は走り始めていた。
「ああ、そうだな。1人減っちまった事だし。」
そう言いながら、御者をやっているレドガーの方に向かっていくジン。
多分、盗賊に殺されたもう1人の護衛の事だろう。
そこまで辛そうには見えないので、別に知り合いだった訳ではないようだ。
さて、一安心出来た所で反省しないといけない事を考えていく。
先程の盗賊戦は怪我もなく勝つことが出来た。
だが、魔法のLvを上げて範囲魔法を使ったりすれば危険は減らすことが出来た。
異世界に来たことで、俺はかなり浮かれていたようだ。
性格も、本当はもう少し弱気な感じだったしな。
しかもスキルについて、何も分からないまま来たのは舐めすぎていたな。
そんな訳で、まずは見てもわからないスキルについて鑑定してみる。
『身体操作Lv2』
・イメージ通りに体を動かすことが出来る
『全属性耐性Lv1』
・あらゆる魔法による害を軽減する。
『特殊隠蔽』
・『偽装』の上位スキル『隠蔽』をさらに強化したもの。
・ステータスを偽装することが出来る。
・鑑定を無効化する事が出来る。(任意)
・スキルのLvを偽装、または隠蔽出来る。(所持していないものは表示出来ない)
・実際のステータスを偽装出来る。
『神眼Lv2』
・『鑑定』の最上位スキル。
・神に愛されたも者だけが得ることが出来る。
・隠されたステータスが見れる。
・無効化はユニークスキルによるものだけ。
・瞳が金色になる。
こんな感じだった。だが、スキルを鑑定しても表示されない。
スキル取得と同じく、知識だけが入ってくる。
特に問題は無いので、気になるところを見ていこう。
『身体操作』に関しては、実感したので優秀さが際立った。
イメージ通りに動けると言うのは、考えてから動くのではない。
考えると同時に体が動く。
細かい動きが分からなくても、イメージの通りにスキルが再現してくれるというちょっと訳の分からないスキルだ。
次に『全属性耐性』だ。
俺は、補助系の魔法も軽減される事を懸念していた。
だが、魔法による「害」のみを軽減されるようなので安心できた。
『特殊隠蔽』は、何が特殊なのかだ。
偽ったり隠したりは、普通の『隠蔽』スキルにもある。
だが、このスキルは表示だけでなく実際の能力までも偽ることが
出来るのだ。
これは、Lvが上がった後に手加減する場合や、実力を隠したい時に必要だろう。
後は、今の俺はステータスとスキルにものを言わせた戦闘方法なので、技術向上するための修行なんて事にも使えるだろう。
最後は『神眼』なんて、自己主張の強いスキルが出てきた。
基本的には『鑑定』が強化されたものだ。
だが、隠されたステータスを見ることが出来る。
身長から体重、スリーサイズ、現在の状態に関する情報まで。
さらに、親や細かい種族(例えばハーフなら〇〇と〇〇が5:5など)を知ることも出来る。
あと何故か、瞳が金色に変わっているらしい。
厨二病かな?と思ったが、そこは諦めることにする。
……カッコイイなんて思ってないぞ?
でも、イケメンになってるとしたら似合うんだろうなぁ。
こればっかりはシエラの好みだから祈る事しか出来ない。
これで、分からないスキルはとりあえず無くなった。
後は取得に関することだ。
どうやら戦闘中はスキルLvが上がらないように出来ているみたいだ。
恐らく、急に感覚が変わるのを防ぐためだろう。
取得はまた別でその場で使えるようになるみたいだな。
俺の場合は知識も一緒に入ってくるので、出来るだけ安全な所で取得する必要がありそうだ。
それから、スキルの種類は通常、ユニーク、エクストラとある。
通常は誰でも使えるスキルだ。
ユニークは基本的には生まれつき持っている自分だけのスキル。
エクストラは特別な才能によるものか、誰かに与えられたスキルなんかの希少性が高いもの。
鑑定結果はこんな感じだった。
これらの事をふまえて、新しいスキルをSPを使って取得していく。
『刀術Lv5』『身体強化Lv5』『生活魔法』
『アイテムボックス』『HP自然回復Lv5』
『MP自然回復Lv5』『MP増加Lv5』
『危機察知Lv5』『重力魔法Lv5』
こんな感じで増やしてみた。
Lvは必要SPが増えないLv5までにしておいた。
所持SP
493→418
まだまだあるが、これはまた必要になってから使うことにする。
ちなみに、刀は無限収納に入っていた神刀・黒薔薇という名前通り真っ黒なこれを使う。
小烏造と呼ばれる造りで切っ先が両刃で刺突と斬撃のどちらもこなせるらしい。
柄の部分に黒薔薇が少女に巻き付いた意匠があって微妙に使うのを躊躇う。
そして、黒薔薇の花言葉を思うと少しこの刀を作ったであろうシエラが怖くなってくる。
次は何しようかな〜と何気なしに横を向いた俺は、固まる事になる。
別に魔法とかじゃない。
単純に見たものに驚いただけだ。
「……その、さっきは……あなたのおかげで助かった…」
薄汚れ、それでも分かるほど白く艶やかな髪をした美少女が俺の横に立っている。
「…あ、あの?」
だが、それだけで固まる事はない。
シエラを知っているからだ。
ならば何故、こうなったのか?それは……
「……ど、どうして、耳を…触るの?…ふにゃぁ…」
「そこに猫耳があったからだ!」
そう、美少女は猫耳少女だったのだ。
と、そこで我に帰る俺。
『ユニークスキル【モフモフ】を取得しました。』
なんと、例外である後天性のユニークスキルを手に入れてしまった。
しかもかなり特殊なやつ。
「えっと、獣人を初めて見たんだ。勝手に触って悪かった。」
固まっても無意識に動いていた腕を戻して、頭を下げて謝る。
そこで気付いたのだが、首輪をしているということは奴隷だろう。
馬車の中は、布で仕切りがされているだけなので向こうから簡単に来れるようになっている。
「…だ、大丈夫…れす…」
そう言うが、スキルになるほどのモフモフはかなり効いていたようで、猫耳少女がふにゃふにゃと女の子座りで崩れ落ちる。
そんなにすごい触り方をしていたのだろうか?
無意識にやっていたので分からないが、とりあえず微妙に蕩けて赤くなった顔をしている猫耳少女を鑑定する。
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ステータス
名前:フィエナ・エリオール
性別:女
種族:猫獣人
年齢:16
職業:剣士見習いLv2
レベル:3
HP 800/800
MP 200/200
STR 170
VIT 150
AGI 350
DEX 225
INT 120
【所持スキル一覧】
通常スキル
『獣神の加護LvMAX』『生活魔法』『身体強化Lv2』『魅力上昇Lv4』
ユニークスキル
『???』
エクストラスキル
『素早さ補正Lv4』
【称号】
〈エリオール獣王国 第1王女 〉〈獣神の加護〉〈箱入り猫〉
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お姫様なのかー、そうかそうか。
……え?マジで?確かにさ、普通にこんな可愛い子が奴隷なのはありえないとは思うぞ?でも、だからって第1王女ってのはおかしいと思うんだが。
ユニークスキルの???も気になるし。
いや、それはまた今度考えよう。
今は話の途中だからな。
「あー、それで?何の用だっけ?」
『ポーカーフェイス』のスキルで動揺を隠して、少し落ち着かない様子の猫耳少女改めフィエナに質問する。
「……お礼を言いに来たの…助けてくれて…ありがとう。」
見たところ他の奴隷は見当たらない。
という事は、代表としてって所だろうか?
「俺にも得はあったし気にしなくても良いけどな。でも、どういたしまして。」
そう言いながら、微笑む。
そうやってお礼を言われると嬉しくなって自然と顔が緩むのだが、スキルで隠しはしなかった。
するとさらに顔を赤くして、驚いてもいる。
『スキル【魅力上昇】を取得しました。』
何故かフィエナと同じスキルが手に入った。
まだ確認していないが、俺の顔は良くなってるのかも知れない。
まあ、それは置いといて。
「…どうかしたのか?」
自分の顔の事も気になるのだが、それよりも何故驚いたのか気になる。
「……だって、獣人を相手に…嫌そうな顔をしないし、優しいし…」
「あー、もしかしてこの国だと差別されてるとか?」
「…うん。…だから、初めて…人間に優しくしてもらったの…」
「そう…なのか。」
自分達と違う見た目だからと差別するってのは、よくある話だ。
猫耳がある方が絶対可愛いと思うのだが。
あれ?俺こんな猫耳好きだったっけ?
何故猫耳がこんなに可愛く見えるのか不思議なので何か分かるかと思い、ステータスを開くと…
〈モフモフを愛する者〉という称号が追加されていた。
早速鑑定する。
・獣耳を持った少女に好かれやすくなる。
ケモ耳特攻が出てしまっているが、俺が猫耳…というか、猫が好きなのは元からって事みたいだ。
飼っていなかったので、知る機会がなかっただけなのだろう。
そう、断じて獣耳が生えた少女だけが好きな訳では無いのだ!……たぶん?おそらく?きっと?
だんだん自信が無くなってきたな。
そんな風に余計なことを考えていたせいだろうか。
うっかり、こんな事を聞いてしまう。
「……なぁ、言いたくなかったら別に良いんだけどさ、どのくらいの期間奴隷なんだ?」
我ながら無神経な質問だと思う。
だが、俺と1歳しか変わらない身で奴隷になっている目の前のフィエナという少女の事が気になってしまった。
「……多分…2年くらい…かな…獣人だし…雑用とかも全然出来ないから…買われても売られた…」
俺は驚いてしまう。
何故なら、フィエナはそう言いながらも俺に笑いかけて来たのだ。
気にしているのを分かっているのだろう。
だが、大丈夫だと言わんばかりの表情をする意味が分からない。
もしも、立場が入れ替わっていたなら迷いなく助けを求める確信がある。
そこまで信用されてないだけなのか、助けを求める事が出来ない状況なのか。
だが、それを聞こうとした俺の耳にジンの声が。
「もうすぐ着くぜ。そろそろ準備しておけよ?」
「あ、ああ、分かった。わざわざありがとな。」
そう言っている間も、横をチラ見する俺。
だが、そこにいたフィエナはジンの声が聞こえた直後に戻ってしまったようだ。
奴隷商には行くんだし、後で会えるハズだ。
「そういえば、この街の名前を教えてなかったよな?」
「ん?そう言えば、そうだな。」
だんだん街が見えてくる。
列になって順番待ちをしているであろう、馬車や人、ファンタジーらしい大きく分厚い壁。
門の向こうに見える多くの人達。
そして、ジンは俺の方を向き芝居がかった口調でゆっくりと口を開く。
「冒険者の街ハングラーへようこそ、恩人殿―――」
白猫姫出てきました。
先にいっておくとケモ耳ヒロイン多くなるかもです。