swayed by the fate.
そんな風に考えながら、懐かしい元・級友たちの顔を思い浮かべる。
今でもたまにメールのやり取りをしていて、この間ゲームや新作映画のネタばれについて、mixiでもコメントし合った面子の内の一人だったら、
何度か家に泊まらせてもらったこともあるし大丈夫だろう。
俺の親類のゴタゴタ事情は知っていても、直接クソババアと顔を合わせている人間じゃないから面倒なこともない。
「なーんだ、用事は明日なんじゃん。
だったら来れるよね、えっと…時間ってなんじだったっけ?」
安心した声色のレイが考えを阻んでくる。
まだ、今日、俺を誘うという希望は捨てていないらしく、懲りずにトラへ確認する。
「レイ坊、やっぱオレの事スケジュール帳だと思ってんだろ。
23時からでしょーが。」
「23時!?って夜の11時!?」
あまりの衝撃に声が出る。
目の前の2人は“だけど何か”というようなそれが至極当然であるかの如く平坦な目で急に叫び出した俺を見詰めている。
終わんの何時?何処でやんの?そっから開始だと終電無いよな。
――バンドマンって皆そんな感じなのか?
夜行性、っての?
頭の中で次々と湧いてくる疑問符。
ロックンロール、イコール不良だというイメージはもう俺ら若者からは消し去られているけれど、
不良っつーかそれって“不健康”まっしぐらじゃん。
あー、だからライブ会場の控室にはデブかガリしかおらんかったんや……
俺は明らかなレイの発育不良、そして目の前のトラやセオの痩せ細り具合を改めて眺め、勝手に納得した。
「23時からって、いつ寝んの。」
そして心配しながら呟いた。
「しっかり寝ておかないと、練習に身が入らないんじゃないの。」
まるで健康を気にする母親だ。
「だな、レイ坊いつも始発待ってる間ウトウトして危ねーんだよ。
ホームから転落しそうなくらい、キワキワ歩いたりすんだから。今から寝とけ。」
トラもお馴染み過保護っぷりを発揮しての援護射撃。
いやいやお前も何時寝てるんだよ、とは言えずに俺は頷いた。
「でも…」
レイがトラに首をかしげて何かを乞うような表情を向け、心配そうに言う。
一体何が『でも』なのか、不思議に思っているとトラは盛大に溜息を吐き、まるでその眼差しだけで己に求められていることを察したようだった。
「わーかったわーかった。
――イト君、コイツの我儘に付き合ってやってほしいんだけど。」
観念しました、とポーズは取っているが、俺へ突然に向けられた眼光には、有無を言わせぬ鋭利さが潜んでいる。
つまり、俺に「来るべし」と。
「ど、うかな。夜中の11時に家を抜け出るなんて、ちょっと驚かれるかも。」
当たり障りのない返答でごまかす。
俺はそっち側じゃないんだよ、確かに人のことは言えないくらい不健康でルーズな生活を送るインドア美術系学生だけど、夜中に街で集合して朝までロックを掻き鳴らす輩とは、ねえ?違うんザマスけど。
「……だよな、じゃあ俺のウチに来てくれても良いんだけど。
親戚の人にはトモダチの家に泊まるって事に出来ねぇかな?」
トラは新しい煙草にジッポで火を点けながら言った。
「あー、じゃ、迷惑じゃなかったらそうしようかな。」
つい、だ。
つい。
勢いに任せてそう言い放ってしまった。
この展開は一体何度目だってくらい学ばない俺。
どうやらレイ含めこのrest landの面々にぶん回されて踊り狂うコマになるしかない宿命でも背負っているのだろうか。




