beautiful flower is soon plucked.
「そんなことしても指輪の跡がついてて、ちょっとへっこんでんのでバレバレなのにね。」
レイはテレビで女優やスポーツ選手が結婚記者会見をする際にキメるお決まりの、指をピンっと立てて手の甲を見せびらかすように掲げるポーズをとって笑っている。
「へ、へー、そんなの俺全然気付かなかった。」
言えば、レイは片眉をあげて
「イセーを見る時、指輪チェックは基本のキよ!」と得意気に言った。
それがセオのモノマネであることは明らかで、そのアドバイスも受け売りなんだろうな
……ということは俺も、初対面でチェックされてたのか。
と思い至れば、何も疚しいことはないんだけど、何故か左手がムズムズするような感覚に陥る。
「ったく、妙な野郎ばっか引っ掛けんだから手に負えねーよ。」
「別にさー、引っ掛けようとしてるわけじゃないんだけど。」
レイが不満げに口を尖らせてトラを見やる。
「いやいやいやいや……。」
心底から否定する勢いで連呼するトラ。
数分前まで部屋に居座っていた骸骨男の事は、言おうかどうしようか迷っていたけど何も触れずにおくのが正解かな。
だってこの人、今迄耳にしたレイとの話を聞くと、
恐らくよっぽどレイに寄ってくる男がらみで苦労をしてきたっぽいし。
これ以上心労をかけるのはどうか、という同情心が湧いてくる。
「多分さぁ、見た目にみんな騙されるんだよねー、わたしって背も低いし。
ホイホイヤレるって思われてんの。」
レイは眉を寄せながら呟いた。
――ヤレる、とか。
一見可憐な17歳からペロリと吐き出される生々しいボヤキに、一瞬目を疑う。
そんなこと言うんじゃありません、つっても、女子同士ならこういうトークも通常運転なのか?
男同士なら全然アリ、だとしたら異性間の友情に俺がただ不慣れなだけなのかもしれない。
うーむ……、と大昔から議論されている
“男女の友情”“異性との距離感”等について頭をこんがらがせ、思考の渦に陥って行きそうになったのをトラが現実に引き戻す。
「まあな、オマエのその雰囲気はなぁ……。俺らも乗っかってるとこあるし。」
それは恐らくバンドにとって、ということなんだろう。
そうだそうだ、確か食堂で声をかけて来た八柳も、restrandについて話す時にヴォーカルが美少女で、と紹介してたし、ライブの時にもレイ固定の男ファンみたいなのが結構いたように思う。
好かれる、とか異性を惹きつける魅力ってのは、コイツらの商売には絶対必要なんだから。
むしろそう言う浮いたハナシの一つも無い奴が人気者になりたい、売れたい、なんて言う場合には相当な才能や努力が必要なんだろうし、
最初のスタートラインでルックスが良い奴は、優位に立てて当然、むしろ好都合なんだよなー。
トラもセオも、俺らの周囲にいる奴らに比べたら明らかにオーラがある。
そう考えると2人がなんだか自分とは遠く懸け離れた価値観の世界に位置するニンゲンだという事がまざまざと思い起こされて不思議な感情になる。
何の実力もないし、フッツーの自分が、異空間にでも放り込まれたような。




