he love oldies.
「じゃあ、何か一本観てみる?」
俺が言うと、レイは「みたいみたい!」と、犬なら尻尾をぶん回す勢いで食い気味に答えた。
でも初めて映画を見る10代女子にお勧め出来るもの、となると……と、棚の中を流し見して適当なタイトルを探す。
取り敢えずの名作とうたわれる『ショーシャンクの空に』『フォレストガンプ』はどちらも2時間22分(偶然にも!)で長尺過ぎ、『ニューシネマパラダイス』はちょっと若い女子には硬派すぎるかもねー…。
社会風刺モノや戦争映画は女子に合うかと言われれば微妙な線、残酷な殺人描写は見慣れてなければトラウマ化、名作でも下ネタがやたら出てくるのは俺の品格に関わるな…。
やはり此処は無難に、道徳の授業で教師が見せる定番、『スタンドバイミー』。もしくは少し時間はかかるが巧妙な面白さで攻める『バックトゥザフューチャー』、バンドをやってる奴らが好きそうな『レオン』、ティーンでも観れて音楽をテーマにした作品幾つか、をレイの前に差し出した。
どれも古いが名作と名高い。
「これとかが良いと思う。」
さっき話をした『パルプフィクション』は個人的には滅茶苦茶お勧めだけどfワードがやたら乱発され、そんな下品さがイカすぜ!という特殊な作品だから“何でこんなの見せたの?”と引かれる可能性を考えてそっと棚から抜いた。
レイは数枚のDVDをしげしげと眺めた後に、「これ」とその中のひとつを指さした。
リビングに戻って、正座をしながら口に笑みを称え、俺がデッキを操作する様子をワクワクした顔で見詰めるレイに「楽な体制でいいから」と笑いながら言ってやる。
「じゃ、ポップコーン準備してくるよ。」
リモコンを持って立ち上がるとレイは驚いて「ポップコーンはどうやって使うの?」と不思議そうに尋ねてきた。
「……映画を見るときは、部屋を暗くしてポップコーンを食べるんだよ。」
どうなんだろう。他の家ではしないかもしれないけど、この習慣は俺の流儀だった。
「部屋を暗くするの?寝ないんだよね?」
レイは子供のように聞いてくる。
「明るいと集中できないでしょ。」
「そっか。じゃあ、ポップコーンはなんで?
あ、そう言えば、映画してる店の前を通るとする匂い?全部同じだよね?
うんうん、あれポップコーンっぽい。じゃあみんな映画を見るときは食べてるってこと?法律?」
なんでなんで、と首をかしげるレイ。
「何でだろうねー。昔から皆映画館で食べてるよ。
マイケルジャクソンも映画みながら食べてたよ。」
俺は、暗いから白い物が目立つこと、咀嚼音が静かで迷惑がどうたらこうたら……という諸々の説明をするのが面倒で、適当に答えた。
「そっか、マイケルが食べてるなら絶対食べた方が良いね。」
レイはそれで全て納得したように数度頷いた。
俺は脱力してリモコンの再生ボタンを押し、黒い画面に月が現れるのを神妙な面持ちで眺める姿を横目にキッチンへ向かい、塩味とキャラメル味の二色混合イトスペシャルポップコーンを作ってやる。
戻るとレイはまだ映画が始まって10分もしないというのに「えぇ!」や「うそっ!?」等と小さく声をあげ、主人公に衝撃がかかるシーンでは同じように身体をビクッと揺らしてのけ反らせるという超単純な反応を見せ、監督はじめ制作者が見れば大喜びするだろうな、と思えるくらい画面に釘付けになっていた。
このままではクライマックスに到達するまで体力や集中力が持たないんじゃなかろうかと心配するとともに俺は“ほんとに初めてなんだ……”と驚愕しながら出来立てのポップコーンが入った木製のボールをローテーブルに置く。
「食べていいよ。」
「わあ、映画の匂いだねー。」
レイは一瞬だけ、俺の目を見てにこりと笑いかけた。




