The relationship of R and S.
ただ偶然出会って、家に泊めて。
翌日には関東と関西で離れたまんまの赤の他人という関係性で終わらせたくない、という願望が心の底に燻っている。
「だな、俺も特に予定ないし、行こっかな。」
俺がそう言うと、セオがホッとした表情で「じゃあお言葉に甘えちゃおうか。」とレイを見やった。
「やったねー。」
レイが悪戯に成功した子供のように肩を竦めてイシシ、と笑う。
「ほんと、色々すみません。」トラが眉を下げて咲乃にお辞儀すると、咲乃は
「いいってコトよー、可愛い子に着て貰えるならこっちもラッキー。」と笑った。
遅い朝食が完全に済んだ頃にはもう12時を過ぎていて、咲乃は
「先に師匠に挨拶してくるから。」と家を出ていった。
何度か忘れっぽい姉に頼まれて届け物をしているので、工房の場所は把握している。
俺は部屋を振り返り
「30分くらいで準備できる?」と残った奴らに伝える。
「あ!」
そこでセオがポケットをごそごそ探りながら何かに思い至ったらしく叫んだ。
「レイの靴!」
その手には筆文字で“は 3”と書かれた、俺の良く知る木札が握られている。
居酒屋ならではの靴箱の鍵。
「あー、入れたままだったのか。」
いくらなんでも女子に裸足で歩け、と言える筈がなく、かと言って姉の足のサイズと明らかに違う小さなレイにぴったりの靴がこの家にあろうわけもない。
「この時間だったら店長が仕込みしてると思うから、取りに行ってくるわ。」
俺はマフラーを首に巻きながらスニーカーを履いた。
「もー!!ほんっと、何から何までごめんなさい!!!」
セオが泣きそうな顔で謝る隣で、レイはなぜ自分が靴を履いていなかったのか皆目見当がつかない、といった間抜けな表情で俺を見ていた。
「オレもついてく。」
トラがどういう風の吹き回しかしらないがお供することを宣言し、俺たちはなんとなくそのまま部屋を出た。
「色々、世話んなるな。」
マジありがと。マンションの階段を降り道路へ出ると、早速ジッポで煙草に火を点けながらトラが礼を述べた。
それにしてはあまりにもライトな物言いに、俺の口調も砕けたものとなる。
「いや、何か面白そうだったし。こんな経験なかなか無いなー、と思って。」
「はは、俺らもこういった形で他所の家に泊まったことねーわ。しかもマジメな高校生ん家。」
トラが煙を吐き出しながら笑った。
マジメな高校生、という言葉が引っかかる。
そう言えばセオもレイも十七歳だが高校には通っていなさそうだ
……まあ、あんな髪色とピアス、タトゥを受け入れる高校など、いくら大都会東京をくまなく探してもありえないだろうな、というのが俺の見解だった。
「バンドのメンバーって何繋がり?」
だとしたら、どういう切っ掛けでメンバーが集結したのか興味がわいて聞いてみる。
「俺が、別バンドにいたセオと打ち上げで仲良くなって誘って、レイ坊は、セオの姉。」
はあ、姉、ね。
姉と弟、うちと同じ。
姉………
レイが、セオの姉?
「えぇ!?」
俺は言われた言葉を理解するまでに時間を要し、そして想像しえなかった衝撃的事実に叫んだ。
「あはは、驚くよなあ、普通。」
トラは何度もこういう場面に遭遇しているのだろう、俺の反応を見て当然当然、と頷いている。
「これ言うと、全員ビックリするもんなあ。」
「どっちも十七、って聞いたけど?あれ双子?」
「いや、レイが4月でセオが2月生まれ。」
なるほど…まあ、無くは無い、のか。
妊娠周期の詳しい計算方法など男の俺には全く解らないが、そこは女性の身体の神秘的なあれこれがあれこれなっているんだろう。
そうこうしている内に、俺がバイトしている居酒屋の前へ辿りついた。
“丹精込めて支度中”と筆文字で書かれた板が店頭に下がっているのを見て、俺は従業員出入り口へ向かい、その後からトラは当然のようについてきた。




