face of afternoon
「そ、そうねえ……」
セオが自分たちの出で立ちを確認するように見まわした。
俺もつられて眺めたが、男どもは兎も角、レイの汚らしさは群を抜いている。
ブラウスは皺だらけ、店を飛び出る前は膨らんでいたはずのスカートは不格好にくたびれ、料理のソースか何かのシミがくっ付いているのが一目瞭然。
裸足だったから黒いタイツは破れたのだろう、脱いでいた。
「この際レイ坊は裸で立てよ。」
大事な部分はギターで隠せ、とトラが笑いながら言う。
「上はどうすんの。」「上なんてねーだろ。」
眉をしかめて言うレイに容赦ないトラの暴言がとび出した。
またしても男の本能発動。
ちらと目を伏せてそこを伺えば、確かに全く膨らみがない、と俺は素直に納得する。
唖然とし、むくれるレイを同じ女としてフォローしてやるかのように冗談めかして笑ったのは咲乃だった。
「あははー、じゃあちょっと提案なんだけど。」
バターナイフを動かしていた手を止めて咲乃は話題を逸らす。
「うちが作ってるヤツさ、ちょっと着てみてよ。」
「ああ、」そうだそうだその手があったか。
俺は姉の昼間の職業を思い出して手を打った。
「おねえさん、服屋の店員さんだったりするの?」
レイが期待を込めた眼差しで咲乃を見詰める。
「んー、服屋ってワケじゃないんだよね。
うち、着物の絵付け職人の弟子なんだぁ。」
「おお……」派手な風貌のバンドマン3人が一斉に感嘆する。
「流石京都って感じだわー」うっとりしてセオが呟き、
「じゃあ、この部屋にあるこれとかっておねーサンのですか」とトラが部屋に幾つかインテリアとして飾ってある布や小物を指して言った。
「そだよ。」
「へえ、立派すねぇ…」
「でね、もし良かったらこの後師匠の工房に見に来ない?
うちがちょっと試作品で作ってるやつとか置いてるし。」
「行きたいなー」
レイが舌足らずな口調で、甘えるようにトラの腕をつかむ。
「いやいや、これ以上迷惑かけるわけにはいかねーだろ?」
しかしトラは意外にも常識人なようで、初対面の俺ら姉弟に対し遠慮する姿勢を見せた。
「良いよ良いよ、今日は暇だし、夜の仕事もないしね。
イト、アンタも来なよ。」
「え、俺も?」
突然咲乃に振られた俺は喉にパンを詰まらせそうになり、慌ててカフェオレを飲み干す。
「あんたのトモダチでしょ?」
「いやいや、だからさ……」
昨日会ったばっかって言ったよな、と続けそうになった言葉を飲み込む。
何だかんだで、このメンバーに興味を持ってしまっていることに気付いたからだった。
今迄バンドや音楽をやっている人種と友人関係になりたいなんて微塵も思わなかった俺だけど、
17歳で同い年のレイとセオ、年上だけど気安いトラとは何か、通じるものがある気がした。




