good morning rest land。
俺がレイと同じ制作グループのメンバーだったら、ヤル気あんのかと一喝ぐらいしそうなところだが、ライブに関する話はそれで終わったらしく、セオとレイは黙々と絶妙なコンビネーションで自分たちの寝ていた布団からシーツを剥がして、元々それが入っていた圧縮袋へ丁寧に畳んで仕舞ってくれた。
美術系学生で、夜間帰ってこない姉がいるという好条件が揃った俺の家には、たまにクラスメイトや友人が徹夜で課題をしに来たり、ゲームの為に遊びに来ることが度々あったが、此処まで何も言わずともキチンと後始末をしてくれる奴らはあんまりいない。
「意外とちゃんとすんだね。」褒め言葉のつもりでそう言うと、セオは
「わたし達、色んなお家にお世話になってるから、お泊まり検定2級なの。」と含み笑いで言った。
「テキトーだけど、食べな。」
未だ布団に丸まって眠っている入れ墨はそのままだが、スペースが広くなったリビングにお人好しの咲乃が人数分作ってくれた朝食を持って現れる。
トーストと、いつの間にか焼かれたベーコンエッグ。レタスとトマトが添えられてそれなりの見栄えがする。
俺も冷蔵庫に常備してあるイチジクのジャムとクリームチーズを出してやった。
「えー、やだあすっごい嬉しいー。」セオが感激した声を出す。
「おいしそう。」レイも目を輝かせている。昨晩居酒屋のテーブルに乗り上げて啖呵を切り、料理の入った皿を蹴散らしていたのと同じ人間だとは思えないその姿に拍子が抜ける。
そのタイミングで入れ墨が
「何か良い匂いすんねぇ。」と言いながら目を覚ました。
俺を視界に入れると、「お、昨日はどうも」と簡単な挨拶を投げかけ、俺も首を軽く曲げるだけのリアクションを返す。
「「おはよう。」」レイとセオが同時に言い、入れ墨は「おう。」と呟いた。
全員がL字型ソファの上に座って、今まさに朝ご飯、(というかブランチ)を食べる寸前だということを彼は認識したらしく、「なになに、俺の分もあったりする?」とワクワク顔で尋ねてくる。
「今追加で焼いてるからもうちょっと待っててー。」咲乃がキッチンから声をあげた。
「ああ、どうもー」入れ墨は中腰になって半分立ち上がりながら姉の顔を確認し、聊か小声になりながら
「キャバのネーさん?」と俺に聞いた。
それに対し無言で頷けば「やっぱ京都だから清楚系なのかな」と弟の俺にはコメントしづらい台詞を投げかけてくる。
「一応、昼の仕事もやってるからねー。」
それに今スッピンだし。姉が明るく朗らかに答えた。
「それよりトラちゃん、清水さんからメール返ってきた?」セオが急かすように入れ墨に聞く。
「あ、そだな。」
さっきから何度か出てくる“トラちゃん”が入れ墨の名前らしい。
関西だと虎イコール野球チームで、その名を冠する子供の親は大概タイガースファンというのが定説だが、東京人のこいつもそういう類だろうか等と考えている内に入れ墨、もといトラはスマホを確認し終えたらしく晴れやかな顔を上げた。
「清水さん、諸々オッケーだって。エイスケにも車内の荷物の件、連絡してくれるってよ。」
「よかったわぁ。」
セオが心底安堵した声を出して、肩の力を抜いた。
「でも、この服のままだとライブになんて出れないよね」
レイが静かに呟いた。
まるでどこかで聞いた科白だな。
……そうだシンデレラだ、と俺は心の中の解答ボタンを押した。




