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髙城由良が神さまになるまで

作者: 伊崎てんり

私のもとに『神託』がくだりました。


そっと目をつむって考える。

なにが最善なのか

いまの僕に必要なものは何か


言うまでもなく最善なのは倉間仁奈を消すことで

僕に必要なのは仁奈が居なくても価値のある世界を作ることだった。


『神託』というお節介なモノがこの国に降りかかるようになって36年の月日が流れた。


この国というかこの世界では人は生まれつき何かしらの能力を持っている。

それは未来を視る能力や物体を創造する能力、果てはただスプーンを曲げるだけと人それぞれなのだが。


『神託』がくだされるようになるまで人々は能力に頼りつつ平和な暮らしをしていたのだが、『神託』がくだるようになってからは『神託』を信仰する者が現れ始め混乱した。


しかし最初は『神託』を疑っていたものも

『神託』がなした数々の奇跡を目の当たりにして

信仰をせざるを得なくなった。


今では初等教育から『神託』の重要性を教えられている

曰く『神託』が下されたら確実に実行しなければならない。

『神託』はそれがどうして実行されなければならないのか僕たちに絶対に教えることはしない。


実行しても実感は得られない。

後から『神託』がこの奇跡の為だったと気づくぐらいだ。


しかし、実行しなければ確実に苦しむことになる。

その苦しみは人それぞれで

僕の知っている人は

「いっそ殺してほしいと願ってしまう」

ほどだと言っていた。


『神託』は個人にくだされるもので

なんの前触れもなくある日突然来る。


僕のときもそう


家のソファでまどろんでいるときに

『神託』はくだされた。


『倉間仁奈をこの世界から消すこと』


僕は下された『神託』の意味を理解するのに

しばらく時間がかかった。


大事な仁奈。

誰の目にも触れさせたくないくらい

愛している僕の仁奈。


心の底から大切な仁奈を僕は殺さなくてはならないのか

なにか、いい方法はないのだろうか。


仁奈を失うかもしれない恐怖から僕は動けなくなった。


考えろ。

考えるんだ。

僕が仁奈を失わない方法を。


頭を抱えるほど悩んでも答えなんて出ない。

この『神託』を実行するには僕は払う代償が大きすぎる。


僕にとって最大の苦しみは仁奈を失うこと

仁奈がいない世界に意味も価値もない

仁奈がいないならいっそ殺してほしいと僕は願うだろう。


『神託』通りに仁奈をこの世から消せたとしても

『神託』を実行しなくても

結局、僕は仁奈を失うことになる。


仁奈とこのまま生きていたい。

『神託』がくだされてから自分の願いをはっきりと認識できた。


だから、答えなんて出なくても

ない答えを探して僕はひたすらに思考を重ねる。


しかし慣れないことに頭を使ったからか

だんだんと眠気が襲ってきて僕はそのまま眠ってしまった。





「由良くん起きて、由良くん」

仁奈の声が聞こえる。


「由良くん、今日はお休みの日だけどそろそろ起きないとダメだよ!」

仁奈が僕を起こしてくれる。


そんなありふれた休日のお昼前


「仁奈、おはよう」

僕が起きると嬉しそうな顔をして


「お昼ご飯、由良くんが大好きなオムライス作ったのに起きないからどうしようかとおもった」

なんて言ってくれて


「そっか、ありがと仁奈」

仁奈のはにかむ顔を見て


絶対に仁奈の温もりを離さないと誓った。


その為には僕は『神託』の意味を噛み砕かなければいけない。


『神託』に殺せとは書いていない。

ただ仁奈をこの世界から消せばいいだけ。


なら簡単だ。

昨日は全く思いつきもしなかったアイディアが僕の身体中を駆け巡る。


仁奈がこの世界からいなくなればいい

つまり、仁奈をどこか別の世界にうつしてしまえばいいのだ。


幸い僕にはそれを実行できるだけの能力を持っている

僕は『概念を結合させる』ことができる。


点と点を繋げれば線という概念になる

線と線を繋げれば二次元を創る事が可能になる。

これを繰り返していけば

新世界を創造することが出来る。


前々から考えてみたことはあったが、

ここで使えるとは思わなかった。


仁奈を守ることができる。

僕が失わなくてすむ。


点と点を結び

線と線をつなげ

二次元を重ねて

三次元が世界になるように積んでいく

最後に世界と異空間を融合させてしまえば

異世界ができあがる。


あちらの世界でも仁奈が不自由ないように

人という概念を与える。

原初の人類をつくり、ときの流れをはやめる


異世界を創ってちょうど六日目

人類は僕らの知っている世界になった。


七日目

僕は仁奈に引越しを持ちかける。

不思議そうではあったが、僕の話す向こうの世界が魅力的に聞こえたようで快諾してくれた。


その日のうちに僕達は異世界へと引越した。


仁奈も最初はあちらの生活に驚いていたけれど今はなんだかんだ楽しんでいる。


異世界の人類と僕達の時間の流れは違う

異世界の人類にとって永遠と称されるだけの命を僕達は持っている。

まさしく僕と仁奈の為の世界。

僕に与えられた奇跡。


僕は僕達のいた世界から倉間仁奈を消した。















ジャンル設定どれにしたら良いか分かりません

これはSF(空想科学)じゃないと思ったら、教えてください

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