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なつやすみは家に
「蛍くん、校長先生の話って長いよね。」
夏休み前の集会中、つぐみは小声で蛍に話しかける。
「世の中、犯罪がなくならないのと、人が死ぬのと、校長先生の話が長いのは変えようのない理だからね。」
「そのレベルで変えようがないならしょうがないね。」
つぐみは神妙な顔つきでうんうんと頷く。
「じゃあ、暇だから夏休みの予定決めようよ。どこデートしたい?」
「お家デート。」
「いつも通りじゃん。冷房の効いた部屋に居たいだけでしょ?」
「正解。」
そう言いながら蛍はつぐみの頭を撫でる。
「むぅ……でも、せっかくの夏休みなんだからどこかに行こうよ。」
「僕はつぐみと一緒なら、そこが満員電車でもセール中のデパートでも地獄でも自宅でも幸せでいられると思うよ。」
「そっか。じゃあお買い物に……」
「前言撤回。自宅なら幸せ。」
「えー、どこか行こうよ~。」
そうつぐみは言うが、蛍は「暑いからヤダ」を繰り返していた。
もうこんな季節ですね。




