幕間 別れと修行
突然来た彼女は、突然姿を消した。
僕に、何も言わずに。
ピヨピヨ金城 幕間
修行がしたいというとダンは、
「弱いから鍛えるってか?ピヨ金。ま、付き合ってやるよ。がんばんな。うおおおおお。」
ガラガラと音を立て崩れてゆくピヨ金の後ろの岩。
ピヨ金の魔剣ルーザヴァをかすめる。
しかし根っからの気弱のピヨ金は思わず、赤ん坊のように尿をもらしてしまった。【ピヨ子に見られたら・・・とその晩思うと、とてつもなく死んでしまいたいような感情になった。ピヨ金THE後日談】
「ひーん怖いいいいい。」
心の中ではピヨ子を呼び続ける情けない彼氏だった。
そしてそのだらしないボーイフレンドのガールフレンドは・・・・・涼しげな森林にいた。
誰か来た。そう感じるとすうううっと空気を吸って決心をすると、
「出てきなさい。われに会いに来たのじゃろう。天空の城の回し者めが。われと対等に話していいと思うておるのか。たわけものが・・姿を現せ。それとも何か。先日のピヨ金抹殺の指令を果たせぬこのプリンセスを貴様流のやり方で殺しにでもきおったか?あいにくじゃが、われが貴様に殺されるとでも。お父上のお考えになる事はいまいちわからん。しかしわれのこの命に代えてもピヨ金はまもうて見せるぞ。」
草木が揺れ、そして木々がその者を避けるかのようにしてそれは姿を現した。紙のようにも見えた。
そちか。ライデインか。とピヨ子は思ったが、彼が現れると何もいえなくなってしまう。昔からの癖だ・・・。
天空の城ジュピターに居た古いころからの・・・。そうじゃ。童がいたのは天空の城なのじゃ。ふとライデインを見るとゆっくり、ゆっくりと口を開いた。その声は小さかったが、はっきりと聞こえた。仮面の鳥、ライデインの声が。
「来てもらいましょうか。われらが天空の城のプリンセス。ブウウヒェフグイッユ・ピヨ子様。天空の城主、フィマナ様のただ一人の実子にて、われらが天空の城の次期後継者。」
「嫌じゃ。」
「いえ。あなたに行く、行かないの決定権はありません。私は、フィマナ様に従うものであり、ピヨ子様。あなたに仕えているわけではありませんので。さあ。いきましょうか。」
ニヤ・・と不気味な笑いを浮かべるライデインにピヨ子は背中を捩じらすかのような寒気を感じた。その寒気の元が大切な仲間を襲うなどという事はまだ、ピヨ子にも知るヨシも無かったのである。
まさか追ってきてくれるなどという事も・・・。
「ピヨ・・・金。」
「さあ。参りましょうピヨ子姫。」
「さようなら。ピヨ金
イマまでありがとう。こんな私を」
「空残烈覇。」
ピヨ子の意識はどんどん、どんどん暗闇へと消えていった。そしてその目にピヨ金が映ることなど無いだろうと、ピヨ子は薄れ行く意識の中で考えたのであった。
ピヨ金たちの前から、ピヨ子は消えた。
そしてピヨ子の居た森林はサアアアアと誰も居なかったかのようにまた風で草木が揺れた。
ピヨ金は、さよならと言う誰かのメッセージを聞いたような気がした。
「そら耳か・・。」
それが、ピヨ子の最後の言葉だった。
そして・・・・・ピヨ子は最後まで抵抗したが、連れ去られた。そしてきずいた。彼も、私もお互いが好きなのだと。ライデインは私を、私はライデインを・・・
一方、同時刻ピヨ気の修行中のピヨピヨ金城はというと・・・
ガラガラがらがら・・・音を立て崩れて崩れる大岩は、ダンの崩している大岩の方向とは違った。まさか・・ピヨ金は額から、修行の成果でやっと出す事の出来たピヨ気の炎が出ていた。
「がーらがらがら!ピヨ金、今宵こそ、貴様の命をもらう。そして今頃われらが姫ピヨ子様は・・・おおう。そうだ。知っていたか?お前を愛するピヨ子様はわれらがフィマナ様のただ一人の実子だ。そして貴様の暗殺を指令された一人の哀れな女なのだよ・・・」
くははははははと高らかに声を上げるイパヴァ。
「黙れえええええ!」
絶叫ともなんともいえぬ大声がその場の気を揺らした。だが、そうは言ったものの初めて知る事実にピヨ金は頭の中が無になった。
ギリリッと歯軋りをするピヨ金に対しダンは、
「やはり・・・あの女・・・最初から九代目頭領ピヨ金さんを狙って。」
息を出来る限り大きくすって、出る限りの大きい声で言った。ピヨ子がはじめてピヨ金を愛してくれたから?ピヨ子が僕に優しくしてくれたから?いや。それ以前の事だ。ピヨ子は、助けるんだ。僕が・・。
オレが、ボーイフレンドとして。僕が!!!!!!
「違う!ピヨ子はいいやつだ。助ける理由はピヨ子が、僕を信じて、僕を暗殺するという指令をせずに、自分の意思で僕とイマまで一緒にいてくれたからだ。だから僕は、ピヨ子がしてくれたように僕は自分の意思でピヨ子を助けて見せる!そして戦わねばならないやつが、ピヨ子の両親だとしても、ロードだとしても、僕は必ず、ピヨ子を助けるんだあ!」
もう二度と大切な人を失わないために。
ゴウウウゥゥゥと地をうならせて、ピヨ金の消えかけていた額の火炎が再び、業火となり燃え上がった。目の色すらも今までのピヨ金と違い、曇りの無いすんだ瞳になった。その心にある思いは「自分自身の力でピヨ子を助けてみせる」という思いだった。そして曇りの無い眼は事実を運んできたイパヴァただ一人に向けられていた。
「じゃ、君の出番だよ。ロード三大幹部ギルフィ」
「ふん。「お前ごときに呼び出されるくらいなら」などと思ったがフィマナ様の指令だ。仕方が無い。こいつがピヨ金か。どれ、あたしがお手並み拝見しようじゃあないか。逝きな!地獄にね。疾風セカンドコア開放。続いてサードコア開放更にフォースコア開放そしてラストコア、開放!ファイナル・オン・ザ・ライブスタート。おいで。坊や。」
バビュウン!風がうなる音。地が風を受け砂嵐を巻き起こす。ピヨ金は、急遽、力を出した。全快で。修行も始めたばかりで力加減を知らなかったピヨ金は力を全て出した。
「魔剣ルーザヴァコア第一開放。ピヨ気の業火発動。」
ガコンがキン、がシャン
周りの岩がどんどん崩れてゆく。
そのどちらかの疾風はダンの手を握った。
「おう!?強引ですな。譲ちゃん。」
ダンは勝手にその手をギルフィと勘違いした。しかしその手は実は、ピヨ金だった
「僕だ。ピヨピヨ金城だ。」
少しがっかりするダン。ピヨ金つまんねーの。」
「このまま逝こう。」
「きさまっ!死んでどうする。」
「ごめん。間違えちった。てへへ。とにかくピヨ子の所に行くよっ。」
ピヨ金は走り出した。疾風のごとくギルフィとは別の方向へ。ピヨ子のいる天空の城の方角へ。僕が、ピヨこを助け出すんだ。
「ピヨ子ぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉおおおぉ。」
ピヨ金はたまっていたもやもやとともに、叫んだ。
彼女を守りたい。僕が、守って見せる。