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八人の魔法使い  作者: 小伽華志
サトラ・ミナ編
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自己紹介




「はーい、ちょっと痛いよー。」


 「痛っ!」


 外れた肩がはまった瞬間、激痛が走った。


 「あとはー、湿布貼ってー、包帯を巻いてっと、はい終わり。」


 「ありがとうございました。」


 お礼を言い、立ち上がるとちょうど静藍が入って来た。


 静藍は、ミディアムに切り揃た黒髪を揺らしながら歩いてきた。顔には銀縁の眼鏡をかけており、眼鏡の中におさまった瞳は、黒に近い深い青色をしていた。先生たちも着ている灰色のローブの上から白衣を羽織っていた。


 「おー、終わったか。」


 「はい、この調子なら二週間で腫れも引くでしょう。」


 「そうか、良かったな永遠、案外早いぞ。」


 「はい。」


 包帯を巻いた肩を動かさないように気を付けながらグレーのローブを着た。


 「ちょうど良かった、ちょっといいか?」


 「はい。」


 永遠は静藍に牽かれて保健室を後にした。


 「入るぞ。」


 静藍がノックをしてから扉を開けると、そこにはあの時いた七人の少年少女がいた。


 「すまん、待たせたな。」


 静藍は永遠を招きいれ、扉を閉めると、全員椅子に座っているのを確認して、近くにある椅子を引いて

座った。


 「ところで、おまえら顔見知りか?」


 唐突に聞かれ戸惑いながらも首を振った。


 「まあ、そうだろうな。じゃあ自己紹介から始めるとするか。手短に頼むぞ。」


 永遠はわけが分からず顔を見合わせた。


 「じゃ、僕からいきまーす。」


 まず、赤毛少年が手を上げた。


 その少年は、両目に渡るように包帯を巻いていて、柔らかそうな赤い髪はあちこちにはねていた。


 「僕の名前は紅玉でーす。よろしくお願いしまーす。」


 「んじゃ、次は私達だね。」


 白髪少女が名乗りあげた。


 少女は、白い肌に艶やかな白い髪をしており、ボブヘアで顔の周りだけ少し長く、その髪には鈴が付けられており、くっきりとした二重の瞳は淡い黄緑色をしていた。


 「私は陽。陰の双子の姉。よろしくね」


 「僕は陰。陽の双子の弟。よろしく。」


 黒髪少年も名乗る。


 陰と名乗った少年は、白い肌に艶やかな黒髪を耳にかけており、その耳には陽とおそろいの鈴のイヤリ

ングが付けられていた。また、くっきりとした二重の瞳は淡い黄緑色をしていた。


 「菫青、よろしく。」


 いきなり灰色の髪の少年が名乗った。


 菫青と名乗った少年は、灰色の髪を肩より少し長く伸ばしており、一つに結んでまとめていた。また、耳には黒いヘッドフォンを付けていた。涼しげな一重の瞳はアイオライトのような青紫色だった。


 「僕の名前は翡翠です。よろしくお願いします。」


 茶髪少年が名乗った。


 翡翠と名乗った少年は、さらさらの髪を肩まで伸ばし、前髪は眉で切り揃えられていた。また、一直線

に引き結んでいる口元から少し八重歯が飛び出していた。垂れ目気味の瞳は翡翠のような緑色をしていた。


 「で、こいつは瑠璃。」


 静藍は鳶色の髪の少女を手で示し、


 「こっちは琥珀。仲良くしてやってくれ。」


 その手を滑らし、金髪少女を示した。


 瑠璃と呼ばれた少女は、つやつやと光る鳶色の髪を一つの三つ編みにして左の肩に垂らし、少々つり目気味の瞳は瑠璃のように青かった。


 琥珀と呼ばれた少女は、煌く金髪を腰まで伸ばし、同じ長さの前髪を真ん中でざっくりと分けていた。ほっそりとした首もとには、似つかわしくない白い首輪をしていた。小柄なためか、ローブがだぼっとしていた。視線をおどおどとめぐらしているアーモンド形の瞳は、琥珀のような黄色をしていた。


 「永遠です。よろしくお願いします。」


永遠は名乗り、お辞儀をした。


 「よし、これで全員終わったか。」


 腕を組みながら静藍は言った。


 「で、聞きたいことはもう分かっているように、さっきのいじめの事だ。永遠、おまえ心当たりとか無

いのか?」


 静藍に聞かれ、考えながらも首を振った。


 「そうか…じゃあ、大体いつ頃から始まった?」


 今度の質問は即答出来た。


 「大体、中学部に進級してからだったと思います。」


 「それじゃあ、原因とか分かるか?」


 少し考えてから答えた。


 「原因は分かりませんが、どうして私が永遠という名前なのかとか、先生達に気にかけてもらえるのか

とは言われました。」


 静藍は意味が分からないといった表情で首を傾げた。


 「そうか、原因不明っと。じゃあ、次は順番に聞いていこう。」


 そう言うと、静藍は一番右端にいた紅玉を指差した。


 「紅玉、おまえはどうしてあの場にいった?」


 「えーと、最初は廊下を歩いてて、そうしたら琥珀さんが横をすり抜けていって、それで気になって追

いかけました。」


 「なるほど、翡翠は?」


 静藍は、納得したように頷きながら翡翠に尋ねた。


 「僕は、涼君と談笑しながら廊下を歩いていました。涼君と別れると、瑠璃さんのホイッスルの音が聞こえたのであの場に駆けつけました。」


 「そうか、陽と陰はどうだ?」


 次に静藍は陽と陰に問いかけた。


 「あの場の二階にいたんですよ。そうしたら瑠璃さんのホイッスルの音が響いて…」


 陰が続けた。


 「それで階段から身を乗りだしたらなんかもめてるのが見えたのでそこから飛び降りました。」


 「おい、飛び降りるなよ。まあその気持ちは分かるけどな。えーと、聞く必要はほぼ無いと思うが、菫青は?」


 あきれたように聞きながら菫青を指した。


 「僕は、廊下を歩いていたら先生が琥珀さんの事を尋ねたので、探して先生と一緒にその場へ向かいま

した。」


 「と、いう事は中心人物は、瑠璃と琥珀か。そうだ、おまえらは紙に書け。」


 静藍はそう言うと瑠璃に紙と鉛筆を渡した。


 瑠璃は頷くと紙に書き始めた。


「私は最初、練習をするために階段を駆け下りていました。すると、話し声が聞こえてきたので立ち止まりました。角から覗き込むと零さんが魔法を使っているのを見ました。永遠さんが苦しそうだったので零さん達の前に姿を現して、先生から渡されていたホイッスルを吹きました。その後、取り巻きの一人と見られる人に髪を引っ張られました。すると、陽さんと陰さんが飛び降りてきて、あとは以下同文です。」


瑠璃が書き終わって鉛筆を置き、紙を静藍に見せると、静藍は満足そうに頷いた。


 「そうか、これで糸が繋がったな。琥珀はどうだ?」


 琥珀はおずおずと鉛筆に手を伸ばすとカリカリと紙の端に書いた。


 「なんか、頭に声が聞こえた。」


 琥珀が書き終わると静藍は「なんじゃそりゃ。」と呟いた。


 「お前は、いったいどんなスピリチュアルな体験をしたんだ。まあ、いいとしよう。これで質問は終わ

りだ。少し遅れたが各自授業に出ろ。事情は話してあるから安心しろ。」


 この一言で皆がたがたと椅子を鳴らして教室に向かった。


 「紅玉、みんなにすぐ行くから静かに待てと伝えておいてくれ。永遠はちょっと話がある。」


 静藍に呼ばれて立ち止まると、静藍が耳に囁いた。


 「お前、いい加減フードを取れ。その頭にどんな傷があろうとそのフードが悪目立ちしてる。」


 静藍に言われてフードの端を握った。


 「…まあ、強制はしない。いちおう耳を傾けてくれよ。」


立ち尽くす永遠を置いて静藍はドアから出て行った。



 「…そんな事、分かってるよ…」



 永遠は誰もいない部屋に向かって搾り出すように呟いた。




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