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八人の魔法使い  作者: 小伽華志
サトラ・ミナ編
17/29

後、貝?






 ギッと軋んだ音を立てたドアに、心臓が飛び上がってドッドッドッとけたたましい音を立てながら狂ったように鼓動を刻むのが分かった。


 ローブ越しに胸を掴んで心臓を宥めながら、慎重にドアを閉めた琥珀は恨めしげにドアを睨んだ。


 現在の時刻は九時半過ぎ。一緒の部屋に住んでいる静藍は九時に就寝して六時に起きるという規則正しい生活を送っている為、もうとっくに熟睡している時間帯だ。


 静藍を起こさないようにと気を使ってドアを開けたのに、この古びた建物には無意味だったようだ。


 琥珀はドアを睨むのを止めると、テーブルに先程染太郎に貰ったおにぎりをどさどさと置いた。


 彼女だけはその場で食べずにテイクアウト(意味あってる?)したのだ。


 おにぎりから目を上げた琥珀は、ギョッとして闇に慣れた瞳を見開いた。


 琥珀のいる向かい側の席。そこに、うつ伏せで突っ伏している静藍の姿があった。


 耳を澄ませば微かな寝息も聞こえる。


 おそらく、琥珀が帰ってくるまで待っていようと思っていたが、睡魔に耐え切れずに寝オチした。というところだろう。


 実は、静藍には割とこういうことがあるのだ。


 真夜中にふと琥珀が目覚める時がある。大抵そういうときは、静藍が寝オチしている時だった。


 昨日は、テーブルの上にディスプレイの光り輝くパソコンが放置されていた。(パソコンの操作はよく分からない為、蓋だけ閉じといた)


 先週は、琥珀には何が何だか分からない書類が散乱していた。(勝手に触ると何か言われそうだったので、静藍の腕の下でくしゃくしゃになっている書類だけ救出しといた)


 先月は、生温くなったコーヒーと、虚しく決め台詞を叫んでいる主人公の描かれた漫画が開かれていた。(なんとなく白けた為、そのまま放置しといたら、翌朝テーブルの上に倒れたカップと無残にも茶色く湿った漫画が発見された)


 今日も琥珀は目覚める気配の無い静藍を見下ろし、ベットから毛布を引き摺って彼女の肩に被せた。


 春とはいえ、まだまだ冷え込む時期だ。


 何度かずり落ちた毛布を引き摺り上げ、どうにか静藍の肩に引っ掛けることに成功した琥珀は、ふと静藍の手元に気が付いた。


 テーブルに投げ出された右手の近くに、楕円形のペンダントトップが置いてある。


 窓から覗く月の光を跳ね返すペンダントトップから伸びた鎖は、静藍の首にかかっていた。


 それは、握っていたものが滑り落ちたとでもいうような、ごく自然な格好だった。


 琥珀は、それが中に写真を入れて使う者だということを知っている。


 「・・・あ・・・と・・・・・・かい・・・・・」


 ふいに静藍が身じろぎをして、寝言を呟いた。


 ・・・・・・後、貝?


 静藍の言葉を変換した琥珀の頭の中には、しばらく貝料理の数々が乱舞していった。







しばらく更新を中断させていただきます。

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