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終幕:四;『闇』の中の光

 数十分後、リアは部屋に戻ってきた。その姿を見てレンナ、リズは何も言わない。

「………………。」

 何も告げずにベッドに横になり眠りに着くリア。二人は何も言わない。

「………………。」

 静かに眠るリアを見つめ続けるレンナ。彼女は何も言えない。

「………………。」

 窓の外の空を見続けるリズ。彼は何もしない。

「あなたたちは…人間ですか」

 不意に聞こえたリアの声は怒りを孕んでいた。彼は怒っている。

 何に対してかは不明だが明らかにその感情は怒りをもっている。

「どうだろうね。リアはどう思う?」

 素っ気無く返すリズ。その答えに更に腹を立てたのかリアはベッドから起き上がり口を開いた。

「質問に質問で返さないでください! 僕が聞いているんです…!」

「何に対して起こってるんだ? 俺たち? レンナ? 俺? 違うよね…。」

 1オクターブ低いリズの声。その声を発するときは大体は説明などだが、時より本気で起こる際にも声は低くなる。

「………。」

「何故何も言わない。本当は気づいているんだろ、怒りの矛先を向ける相手が違うってことに。でも、結局は我が身可愛さのために相手に答えを求める。それは自分で解決する問題だ。違う?」

 鋭い視線はリアの体に突き刺さる。錯覚とわかっていてもリアは鋭い何かが喉元に突き立てられているように感じた。

「…わかっているんですよ。怒りの対象は…レンナさんでも、ましてやリズでもないことなんて。でも……そうでもしないと…」

「潰されちゃダメだよ…」

 レンナは左腕だけでリアを抱き寄せる。豊満な体は良質なクッションのように感じた。

「自分を責めちゃいけない。あんたは誰も殺しちゃいないんだろ。だから、今回の経験はこの上なく辛いものだと思う。でも、罪の意識に潰されちゃダメだよ。人生の先輩としてのアドバイスをあげる」

 レンナは更に強く、だが優しくリアを抱きしめる。

「泣きたいときは泣けばいいんだよ」

「そんな……当たり前のこと」

 リアは静かに眠りについた。

「ごめんねレンナ。俺はリアを怒らせることしかできなかった…」

 珍しくリズは自分から他人に謝った。よほど自責の念があったのだろう。

 それを見てレンナは微笑んでいた。

「何いってんのさ。あたいらは仲間だろ? 時には怒ってやることも必要さ」

「そうだね♪ ……よし! 今日はもう寝よう」

「そうね。そうしましょう」

 レンナはリアをベッドに寝かせ自分はリズのベッドを占領した。

「おやすみ〜♪」

「あ! ずるい…俺もベッドがいい!」

「もう遅いよ♪」

 レンナはベッドに潜りこんだ。それを見ていたリズは渋々、壁に背をつき眠りに入った。

「おやすみ…リア。おやすみ…レンナ」


 * * *


 真夜中、光はなく闇しかないワノールの噴水広場。そこには一つの人影があった。

「大変ですね。この時間は誰もが寝ている。なのに僕は起きている。本来いてはいけないはずの僕が……。さて、僕はいつ『到達』したんでしたっけ? 急ぎましょうかね…フフフ」

 光無き広場には不気味な笑い声が響いていた。

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