序章:死による開幕劇
後書きには毎回キャラクターたちの会話劇があります。
暇な人は読んでやってください。
「ふっ! でぇりゃ!」
力強い声が部屋に響き渡る。そこにいるのは12歳の少年リア・ロウズとその兄、ライア・ロウズだ。
リアの拳はライアの顔をかすめ、続けざまに放った脇腹への蹴りは空を切る。
「どうしたリア? こんなんじゃ俺に1発も当たんないぞ?」
「なんだよ…さっき、顔に…掠った…だろ…」
肩で呼吸しなんとか会話を続けるリア。一方のライアは余裕の表情でリアを見ている。
「こうなったら………」
リアはおもむろに懐から一枚のカードを取り出した。カードには『人形を紐で操っているピエロ』の絵が描いてあった。
「『詭計道化』!!」
リアが叫ぶとカードは光り、消滅した。視界を遮られるほどの光が収まるとリアの服装が変わっていた。先ほどまで道着だったリアはサーカスに登場するピエロの服装になっていたのだ。白と黒のチェックの服、頬には赤い涙と黒い星のペイント。頭には赤と黒のチェックで二股の帽子。
喜劇の語り部、闇の嘲笑者。そんな異名がライアの頭に沸いた。その光景には一瞬戦慄を覚える。
「これなら勝てる! 行くよ!」
「おいおい…ちょっとま―――」
ライアの言葉は最後まで出ずにリアは突貫する。低空で跳び両腕を振り上げ、一気に振り下ろす。ライアはまともに喰らい頭が地面に近づく。リアは着地と同時に体を反らしバック宙をする。その際に振り上げられた両足はライアの顎に当たり、ライアも同じく体を反らす。
ライアが倒れ、リアが立ち上がるとリアは口を開いた。
「やった! 俺の勝ちだね兄さん」
「舞踊道化だな…ガクッ」
「うわ〜…ガクッて効果音は普通自分から言わないって」
リアの服装は前の道着に戻りライアを起き上がらせる。二人は部屋の隅で座り会話を続けていた。
「お前は強くなったな…」
「うん…そうだね。自分でもわかるよ」
「けど、強くなったからといって…お前は誰も殺すなよ」
「うん…わかってる。誰も殺さない」
俯くリアに対してライアは小指をたてて手を出してきた。
「これは?」
「『ユビキリ』だ。だいぶ昔の契約方法だな。嘘ついたら針千本飲んでもらうぞ?」
「ユビキリ…」
リアはライアの手の形を真似した。小指以外の4本の指を折り曲げ拳に入れる。そして小指だけを立てライアの小指に絡ませる。
「ユービキリゲンマン♪ 嘘ついたら針千本飲ーます♪ 指切った♪ これで契約完了だ。約束だから。な?」
「うん。約束!」
ビー!! ビー!!
部屋に警告音が鳴り響く。リアは驚いて立ち上がったがライアは座ったままだった。
「ショケイセントウシュウリョウ! ショケイセントウシュウリョウ! ハイシャハショケイスル!」
機械的な音声が終わると部屋の入り口から数人の男が入ってきた。
「来たか…」
「兄さんどういうこと!? 今日は処刑戦闘の日じゃないのに!!」
「もう俺たちしかいないんだよ『落ちこぼれ』はな」
ライアの表情はどこか寂しげだった。しかし、リアは納得がいかずライアの前に立ち男たちの壁になった。
「今日は処刑戦闘はされない日だよ! 僕たちを殺す意味がない!」
「わからんか? お前らは所詮は『似非人間』。いらなくなれば殺し、また次を作ればいいんだ。どけ『R-1A』貴様は邪魔だ」
「何がアールワンエーだよ! 僕はリアだ!!」
バン
乾いた発砲音。放たれた弾丸は無情にもリアの心臓を貫通した。
「リア…俺を助けてもいいことはなかったのにな…」
「安心しろ『RA-1A』。貴様もすぐにあの世逝きだ。義弟の後を追わせてやる」
「あいにく…俺はあいつには会えないな。あいつは天国、俺は地獄行きだ」
バン! バン
銃声は二発。ライアは両腿を打たれ地面に倒れた。痛みに堪え、呼吸は荒くなっている。
バン! バン!
また二発。今度は両肘。完全に四肢の動きを封じられ身動きが取れないライア。一人の男はライアへ近寄り銃口を頭へと突きつける。
「何か言うことはあるか? 『作り物』よ」
「道化は狂い、踊りだす…狂った道化は泣き出して…涙で海を創ったよ…溺れ溺れたピエロさん…怒り怒ったピエロさん…最後は笑って死にました…」
バン
最後の銃弾はライアの脳を貫通し彼を絶命させた。
「くだらん最後だったな。行くぞ。撤収だ」
「隊長! それは…」
一人の男は何かを指差していた。それはリアが先ほどまで持っていたカードだった。
カードの絵柄は骸骨。しかしただの骸骨ではなかった。血の涙を流し、何かを喋っていた。唇を読むと…
『サヨウナラ兄サン。約束ハ守ルヨ』
と言っていた。言い終わるとカードは消え、男たちはその部屋を後にした。残されたのは虚空を見上げる少年と地面に伏した兄だけだった………。
リア(リ)「はい始まりました!『遠き日の約束』! 司会のリア・ロウズです! そしてぇ〜こちらはアシスタントの!」
ライア(ラ)「ライア・ロウズだ。よろしく」
リ「兄さん兄さん」
ラ「何だ?」
リ「一話目から主人公死んじゃったよ!!」
ラ「誰が主人公だよ?」
リ「僕だよ僕!!」
蒼炎鬼「違います」
リ&ラ「今の誰だ!!?」
ラ「お。もう時間がないな。今回はここまで! じゃあ次をお楽しみに〜」
リ「あ〜! 兄さんずるい! おいしいところだけ持っていった!!」