72 見た目は同じ
料理を食堂に運ぶと、カミーユがルイスとジニーのグラスに何か注いでる。
「おい。それはなんだ」
「グレープエードだよ」
「料理が揃う前に乾杯してるんじゃねーよ」
「硬いこと言うなよ。ほら、お前も食え」
「なんだ、これ?」
焼き菓子?
形も厚さもいびつだし、こんな菓子なんて知らないけど。
……違う。菓子じゃなかった。
「どうですか?」
「ジニーが作ったのか」
「はい。美味しいですか?」
「食感の悪さはどうにかした方が良いだろうけど、こんなもんじゃないか」
「お前の味覚、どうなってんだ?」
「ほら!カミーユさんも食べて下さいよ!」
「遠慮しとく」
「食ってないのかよ」
「カミーユさんったら食べもしないで酷いこと言うんですよ」
「今日はちゃんと砂糖入れたのかい」
「甘さが足りないなら、ジャムでもつければ良いだろ」
「は?」
「え?」
「ジャム?」
「お前、これが何か分かってるのか?」
「スコーンだろ?」
ルイスとカミーユが笑って、ジニーが頬を膨らませる。
「何言ってるんですか。サブレですよ!サ・ブ・レ」
「は?……これのどこがサブレなんだよ。どう考えたってスコーンだろ」
「いたって普通のプレーンサブレです!」
……どこが?
「カミーユ。サブレの作り方ぐらい教えてやれ」
「レシピは何度も教えたぜ」
「確かにスコーンっぽいね、これ」
「ルイスまで!」
「ほら、フランボワーズジャムをつけて食べてごらんよ」
ルイスが木苺ジャムを塗ってジニーに渡す。
「あ。美味しいかも」
「ね?」
「サブレにジャムを後載せするなんて新しい……。今度はそういうのが流行るかも」
ジャムを載せたサブレは、どこかで見たことあるけど。
それ以前の問題だ。
「スコーンだって言ってるだろ。配合見直して来い」
「え?間違ってないはずですよ」
はずってなんだ。
そんな曖昧な言い回しをするってことは、間違ってるんだろ。
「カミーユ、こいつ本当に錬金術研究所の人間か?」
「魔法科卒業で錬金術研究所に入った珍しいタイプだよ」
「……なんで?」
「ナルセス教授から声をかけられたからです。数学が苦手でも研究所に入れるんですよ」
珍し過ぎるだろ。それ。
っていうかレシピを間違ってる自覚、あるのか。
「リリー、サブレあるか?」
「うん」
リリーに声をかけると、リリーがサブレの入った皿を持って来る。
「台所にもう少しあるけど、持って来る?」
「いや。それで良いよ」
そっちは後で食べよう。
「ほら、ジニー。これがサブレだ」
「同じじゃないですか」
リリーが首を傾げる。
『何の話し?』
『ジニーが作った食べ物の話しよぉ』
サブレじゃないけど、食べられる物には違いないか。
「おー。ロッシェ・ココじゃないか。良く作ったな」
「ロッシェ・ココ?……って何ですか?」
「メレンゲのサブレだよ」
ジニーの作ったスコーンが、リリーのロッシェ・ココと同じだって言いたいなら、根本から違うものだ。
「良い具合だな。美味いぜ」
「ありがとうございます」
「わぁ。美味しい」
「こっちのは?」
ルイスが取ったのは……。
「ペッパルカーコル。スパイシーなサブレだよ」
「香ばしいね」
「これがサブレって言うんだよ」
「美味しい。もう少し焼けば、これぐらいサクサクするのかな?」
「だから……」
「おい。料理を運んでる途中じゃなかったのか」
「シャルロ」
「シャルロさん」
シャルロがテーブルにピッツァを置く。
給仕を手伝ってるなんて珍しいな。
「手伝います」
「あ、私も行きます」
リリーとジニーが、キャロルとブリジットの方に走って行く。
「何持って来たんだ?」
シャルロが持ってるのはワイン?
「今年リリースされたばかりの、ロマーノ・ベリル・ブラッドだ」
「もう出回ってるのか」
「イレーヌが持って来た」
そういえば、王都に来る時にワインの包みを持ってたっけ。
あれ?ってことは、このワイン……。
「エル。後で話がある」
エレインとイレーヌのことかな。
それとも、フランカの様子を見て来たのか。
「わかったよ」
「また何かやってるのか?お前」
クレアのことは二人にも話しておいて良いか。
「お前も残れ」
「はいはい」
あ。言うの忘れてた。
「ルイス、今日から皆でガラハドの家に居てくれ。フランカが怪我してるんだ」
「怪我?そんなに酷いの?」
「あぁ。ブリジットにも頼んでるけど、絶対安静だ。俺が次に来るまで様子を看てくれ」
「店はどうするの?」
「休みにして構わない」
「わかった。薬は足りてる?店の戸締りはちゃんとして来た?」
「最後に出たのがリリーとキャロルだから大丈夫だろ」
『エルの子供って、しっかりしてるわね』
「あ。喧しいのが来たみたいだぜ」
言われた方を見ると、マリーとポリシアがリリーたちと話してるのが見える。
「何故、ポリシアが居るんだ?」
シャルロは知らないのか。
……知るわけないよな。俺だってさっき、リリーから聞いたばっかりなんだから。
「黄昏の魔法使いが死んだって噂を聞いて、リリーシアちゃんが心配で戻って来たらしいぜ」
「ご苦労なことだな」
ポリシアは、セルメアから刀の国へ向かう予定を変更して、ラングリオンに引き返して来たらしい。
どこで噂を聞いたんだか知らないけど。セルメアから王都までは普通に移動しても一か月はかかる距離だ。これでも、最短のルートで戻って来たんだろう。
そういえば、アリシアが王都に急いで来たのも、噂を聞いてリリーが心配になったからだよな。本当に仲が良い姉妹だ。
「これで全員か?」
「あぁ」
「ようやく揃ったな。エル、開けてくれ」
「ん」
魔法でワインの栓を抜いて、カミーユに渡す。
「良い香りだな」
サービスはカミーユに任せて、リリーの方へ行く。
クリームの絞り袋を持って、何やってるんだ?
「リリー」
「エル」
『エルに頼んで氷を出してもらえば?』
「氷?」
「クリームは後でケーキに飾ろうと思ってるんだけど、このままじゃ溶けちゃうかもしれないと思って」
「それなら……」
ワゴンから出したサラダボウルに、魔法で出した氷を入れる。
それから、フルート型のグラスにクリームの絞り袋を入れて、グラスを氷に埋めながら斜めに置く。
「ついでに花でも飾っておくか」
テーブル装花を引き抜いて、花弁を氷の上に散らす。
『お洒落ね』
「綺麗」
これでケーキの傍に置いても見栄えが良いだろう。
テーブルには、香ばしい焼き色のついたポワールのタルトタタンが三つ並んでる。
「ほら。エル、リリーシアちゃん」
カミーユが持って来た乾杯用のグラスを受け取る。
「乾杯しようぜ」
「ん」
全員にグラスが行き渡ったみたいだな。
ルイスたちは……。色がオレンジだからオランジュエードかな。
「ルイス、誕生日おめでとう」
「ありがとう」
「責任ある行動をとるように。この前みたいに、危ない事には首突っ込むなよ」
「エルに言われたくないよ」
「まだ子供だ」
「エル。手短にしろ」
「なんで乾杯の音頭で説教してるんだよ」
「本当、エルって駄目ね。ルイス、誕生日おめでとう。祝福するわ。乾杯!」
「乾杯!」
マリーの合図で、皆がグラスを合わせる。
ルイスとキャロルと会って、二年。
二人とも初めて会った時よりも背が伸びて、王都でも楽しそうにしてる。
だから、きっと。二人を王都に連れて来ることにした、あの時の選択は間違ってなかった。
……いや。そう結論を出すのはまだ早いか。
視線を感じて隣を見ると、リリーと目が合う。
「リリー」
「うん?」
「一緒に来てくれてありがとう」
リリーが笑う。
「ルイスに言いたかったことって、本当はそれだったの?」
え?
……あぁ。そうかもしれない。
「家族にはいつも感謝してるよ」
※
ルイスと一緒にフランカの様子を見た後、書斎へ行く。
マリーとポリシアはオルロワール家に帰って、リリーとキャロルは厨房で後片付けの手伝い。まだ残っていたジニーは、ルイスがロドリーグと一緒に送って行った。
夜中だけど、ここはセントラルだ。フランカの侵入騒動で一番隊の警戒も続いているし、ロドリーグが一緒なら大丈夫だろう。
ブリジットが持ってきたコーヒーとリリーのサブレを食べながら、カミーユとシャルロにクレアについて説明をする。
ガラハドのことは……。まだ、言わなくて良いだろう。
「クレア、ねぇ。……ドラゴン王国時代に使われていたもう一つの言語って、エレインちゃんとイレーヌは知ってるのか?」
「魔法陣の意味も知らないみたいだし、知らないんじゃないのか?」
「ここまで違う種族が居たとしたら、もう一つの言語はクレアの言葉って気がするけどな」
「クレアの言動を真に受けて良いとは思えないが」
「二人が嘘を吐いてるって?」
「クレアはブラッドに対して敵意に近い感情を持っているだろう」
「……魔法陣を設置する時にゴタゴタがあったからな」
クレアが付けてきた注文か。
「イレーヌはロマーノ・ベリルのワイン商だ」
「え?産地を知ってるワイン商なのか?」
「そうだ。ロマーノ・ベリルの産地はクレアの里である可能性が高い。イレーヌは流通前のワインを持って来た上に、ロマーノ・ベリルの産地はガラじゃないとはっきり言った。ガラとはワインの製法が似ているだけらしい」
同じロマーノワインでも、ロマーノ・ガラは手に入りやすいワインだ。
「ブラッドとの交流を嫌がってる癖に、王都に転移の魔法陣を作ってまでブラッドと交流する必要があったのは、この時期の商売が重要だからってことか?」
「おそらく。ロマーノ・ベリルは里の貴重な収入源なんだろう。ワイン商として外に出る以上、イレーヌはブラッドと関わる上での知識を深く持っている。ブラッドに語って良い情報と隠す情報ぐらい把握しているだろう」
「エレインちゃんは?」
「エレインは何も知らない可能性が高いんじゃないのか?イレーヌの他にも里の人間が探し回ってたらしいし」
「そうだよな。初めて会った時のあのパニックっぷりは、演技とは思えないからな」
「今はイレーヌの監視下にあるようだが。……クレアの話しはこの辺で良いだろう。次。……エル。フランカの怪我は何が原因だ」
「ちょっと待て。ガラハドが預かってる子供の話しは全然聞いてないぞ。二人はグリフが引き取った子供じゃないのかよ」
「二人は、以前、エルが摘発した人身売買組織の被害者だ」
「そんなのが、なんで今さら?」
「大元締めがラングフォルド家だとわかった。伯爵は今、陛下に召喚されて王城に軟禁されている。モール子爵とカンタール子爵も別件で勾留中だ」
あれから色々動いてるんだな。
「ラングフォルド辺境伯って、慈善家で有名な伯爵じゃなかったか?」
「貧困や戦争による孤児を受け入れる孤児院を作り、養い親や里親探しを積極的に行っていた慈善家で知られている。……こちらは法に乗っ取った方法で行われていたみたいだが」
「養子の斡旋か……」
「なんつーか。微妙なところだな」
里子、養子制度と、子供の人身売買は、似通った性質をしている。
どちらも血の繋がりのある親を失った、あるいは親と引き離された子供を、第三者の意思で別の場所に移動させる行為だから。
せいぜい目的の違いがあるぐらいだろう。
子供の保護か、子供の搾取か。
「ラングフォルド辺境伯は、子供に暗殺者と密偵としての教育を施していたんだ。フランカとファルは俺が最近関わった事件で保護した子供だ。二人が実態解明の糸口になってくれたんだよ」
「って言っても、人身売買での立件じゃないんだろ?」
「今は皇太子暗殺未遂での立件を目指している」
皇太子暗殺未遂で立件なら、爵位の剥奪だけじゃ済まないだろう。
「被害者についてどこまで公表するかは未定だ」
「なかなか公表できることじゃないからな」
「話しを戻すぞ。エル。フランカの怪我の原因は?」
「ベーリング家の屋敷に仲間が入って行くのを見たらしい。尾行を続けて屋敷に侵入したところを発見されて、不意打ちを食らったんだ」
「え?」
「一番隊が周辺を警戒してたのはそのせいか」
「あぁ。だから、ベーリング家に今日出入りしていた人間を調べて欲しいんだ」
「わかった。調べておこう」
「それさ、どういう状況だったんだ?フランカって絶対安静の大怪我なんだろ?」
「いきなり足を斬られたって言ってたけど」
「それ、おかしいぜ。衛兵が不審者を見つけたら大声を上げて周囲に知らせるのが先だ。ましてや相手は子供だぜ。いきなり攻撃してくるか?」
「……確かに」
「攻撃した奴はフランカと同じ暗殺者じゃないのか」
「違う。フランカは教官をしてたから、子供の顔はかなり知ってるんだ。フランカの知ってる仲間じゃない」
「その話しは初耳だな」
シャルロが知らない?
「戦争後、貴族に買い取られた子供の詳細は?」
「本家で調査中だ」
「フランカの話しだと、子供がどこにいるかの詳細な情報を記録した書類が存在するらしいんだ。子供が移動先で別の場所に移動したとしても、ラングフォルド家で管理してる。……たぶん、買った方も記録されてることは知ってるんだろうな」
「っていうか。この時期に暗殺者連れて王都に来てるって、やばいんじゃねーの?」
剣術大会は国内外から人が集まっていて、大会の会場にもあらゆる人間が出入りする。暗殺を狙うには良い環境だ。
でも。
「捕まる可能性の高い場所で暗殺を行う可能性は低いんじゃないか?」
「そうか?」
「そうだな。ラングフォルド辺境伯が陛下に召喚されたという噂は広まっている。子供がどの貴族に買われたか知られる可能性がある以上、暗殺者を使うことはリスクが高い。暗殺さえ起こさなければ、孤児を引き取っただけと言い逃れができるからな」
「だったら、ラングフォルド伯爵の件は、これで終わりなのか?」
終わり?
「そうは思えないけど」
捕まってる以上、何もできないはず。
でも、それで終わりな気がしない。
「悪足掻きぐらいしそうな気がする」
「悪足掻き?」
「陛下やアレクの信用を落とすような嫌がらせとか」
「嫌がらせか……。考えられないこともないな」
「え?出来るのか?」
「グラシアルの姫、メルリシア姫の暗殺」
「それ、洒落になんねーぞ。国際問題だ」
「オルロワール家には暗殺者にも警戒しておくように言っておいた方が良いな」
「それなら、嫌がらせの対象ならまだ居るんじゃないのか?」
「誰だ?」
「アレクシス様が婚約者にしようとしている相手」
「ロザリーか」
「今はヌサカン子爵と共に王城に居るはずだ。彼女の存在を伯爵がどこまで知っているかはわからないが……」
そういえば、クロエ誘拐はラングフォルド辺境伯の指示のはずだよな。
―その皇太子の、唯一といっても良い弱みがここに在るんだ。
―彼女さえ手に入れば、望みはいくらでも叶うんだぞ。
ドーラ子爵はあんなこと言ってたけど。
今となっては、誘拐の目的がアレクを自分の思い通りに操作することだったとは思えない。アレクがそんな脅しや取引に屈する相手だなんて考えるわけないだろう。
だったら、クロエ誘拐の目的は何だったんだ?
そもそもロニーがドーラ子爵に協力したことを伯爵は知ってたのか?知っていたなら、ロニーがアレクを裏切るわけないことだって予測可能なはずだと思うけど。
……いや。
―主君がクロエを大切にするのは構わないけれど、クロエが将来の王妃になるなんて考えられない。
―だから、同じ考えの子爵に協力を頼んだんじゃないか。
ラングフォルド辺境伯の本来の目的は、吸血鬼種をアレクの婚約者にさせないことだった?
これじゃあ、他の貴族と目的は変わらない。王家と国の為にやったことだと言われても筋が通ってしまう。
「おい。聞いてるのか?」
「え?」
顔を上げると、シャルロとカミーユが俺の方を見てる。
「心配するだけ無駄か」
「メラニー、頑張れよ」
『ご指名よぉ』
『二人はメラニーのこと知ってるの?』
『付き合いが長いからな』
「エル。気になることでもあるのか?」
「ん……」
ドーラ子爵の話し。
―剣術大会でお前たちは勝てない!絶対にだ!
「ドーラ子爵がさ。剣術大会で俺たちは絶対に勝てないって言って来たんだ」
「なんだそれ」
「陛下の御前で行われる剣術大会で、不正が入り込む余地はない。勝敗は公正な判断で決まる」
「俺もそう思うけど。ガラハドは、ルールの穴でもついて来るってことじゃないのかって言ってたんだ」
「ルールの穴?そんなものあるか?」
「思い当たることはないが……」
これまでの大会でも見つかってないルールの穴。
「ブラフじゃないのか」
「そうは聞こえなかったけど」
少なくとも、ドーラ子爵は確信してたみたいだ。
「他に何らかの仕掛けを施せる仲間が居るってことか?」
「アレクの敵がまだ居るって?」
「アレクシス様の敵?」
「あぁ。グリフとロニーは、アレクの敵を炙り出して捕まえる為の計画を立ててたんだよ。それで釣れたのが今回捕まった連中」
「何の話しだ?」
知らないのか。
まぁ、あれは急に決まったことで、計画もロニーが立てて慌ただしく行動したみたいだし。
―でも、ロニーが急いでいた理由もわかるからね。
「なんだか計画を急ぐ必要があったみたいなんだよ。アレクは急いでた理由を知ってるみたいだけど、教えてくれなかったな」
「なんか嫌な感じだな」
「他に、アレクシス様が言っていたことで不自然な話しはないか?」
不自然な話し……。
アレクっぽくない話し。
―そうだね……。これが実現したら、私の負けかな。
「あぁ、負けって言ってたな」
「は?」
「アレクシス様が?」
「今回の剣術大会の目玉は、アレクの婚約者探しだろ?その為に娘を会わせに来てた貴族連中が急に来なくなったんだ」
「その方がアレクシス様にとって都合が良いんじゃないのか?」
「そうなんだけど。他家に影響力を与えられる貴族なんて限られるだろ」
「オルロワール伯爵かノイシュヴァイン伯爵?」
「こういうことをやるのはオルロワール伯爵だろう。アルベールあたりが首謀者の可能性が高いな」
「俺もそう思う」
「アレクシス様が望まない婚約をしない為に?」
「その気があるなら、陛下が大会で婚約者を決めると仰った直後から行動は出来たはずだ。ここまで大会の熱が過熱した後にやる意味が解らない。何故、今なんだ」
「アルベールが何をしてるか知らないけど、実現すればアレクが打てる手がないから負けって言ってたんだよ」
「……まずいんじゃないのか、これ」
「そうだな。アレクシス様の手の内が見えない」
「エルはわからないのか?」
「さぁ?アレクは楽しそうだから良いんじゃないのか」
「手の平で遊ばれてたまるかよ」
「あ」
まだ聞きたいことがあったんだ。
「このブローチ、見たことないか?」
襟に付けていたブローチを二人に見せる。
「ビオラか?」
「変わった配色だな」
知らないみたいだな。
「アレクが配ってるブローチだ。ブローチを持っているのは、高い情報共有能力を持った団体。その目的は不明」
「不明?」
「明確な目的があるみたいなんだけど、俺は知らない。それが王都に集まってる。団長はアレクじゃない。アレクは主と呼ばれていて、団員の選定を行うだけ。団員同士はブローチと合言葉で仲間であることを確認する」
「合言葉って?」
「知らない」
「お前は団員じゃないのか」
「アレクからは何も聞いてない。でも、近衛騎士もブローチを持ってるんだ。確認したのはロニーとツァレンだけだけど」
「お前が知ってる情報は誰から聞いたんだ?」
「シリル。このブローチを持った団員だ」
「アレクシス様が持ってる外部団体か。情報を集めるだけが目的じゃなさそうだな。……少し調べてみるか」
シャルロが溜息を吐く。
「やることが多過ぎる。この忙しい時期に、どうしてお前は厄介ごとを持ち込むんだ」
「好きで巻き込まれてるんじゃない」
「聞き飽きたな」
「本当に」
……わかってるよ。
「本題はフランカの仲間探しだからな」
「あー。暗殺者がうろうろしてるんだっけ」
「剣術大会が終われば貴族連中は地元に帰る。その前に子供を保護しなきゃいけないんだ」
「本当に探せるのか?」
「監禁されているわけでもなく外にも出歩いているんだ。公式に連れて来ている子供と見て間違いない。もう少しフランカから話しを聞く必要はあるが、探し出せるだろう」
良かった。
「今日は解散だ。エル、お前は絶対に大会で勝ち進め。場合によっては負けてもらう必要があるかもしれない」
「なんで?」
「お前が優勝した時のアレクシス様の願いが気がかりだ」
「ロザリーとの婚約じゃないかもしれないって?」
「わからない。今の時点では何も言えない」
―好きな人がいる。
―その子を婚約者にする為に、協力して欲しい。
「俺は、アレクの願いはロザリーと一緒になることだと思うけど」




