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旧作3-1  作者: 智枝 理子
Ⅰ.王都編
27/149

26 ただいま

『ちょっと行ってくるよ』

 イリス?

『エル、イリスが消えた』

「は?」

 なんだって?

「どうした?エル」

『たぶん、リリーに呼び出されたんじゃないかしらねぇ』

 リリーに呼び出された?

 なんで?

 ……リリーに何かあった?

「おーい」

「どうしたの?エル」

「予定を変更するかも」

『イリスを呼ばないの?』

「変更?今から?」

『すぐに呼び出しても仕方ないだろう』

『エル、イリスが魔法を使っているかわからないか?』

「わからない」

 俺の魔力を使って魔法を使うならわかるかもしれないけど……。

 リリーが王都でイリスを呼び出したなら距離がありすぎる。

「わからないって何よ」

 っていうか、ちゃんと王都に居るのか?リリーは。

『何があったのかな……』

 緊急の用事があるってことなんだろうけど……。

「エル、聞こえてるか?」

『予測がつかない状況で考えても無駄だ。エル、先に食事を終わらせろ』

「……ん」

 食べかけのパンを口に放り込む。

 少し硬すぎるパンだ。

「エルっていっつもこうなの?全然人の話し聞かないわよね」

 目の前で、ジャムをたっぷり塗ったパンをエレインが食べている。

「いつものことだよ」


 ※


 先に朝食を終えて、部屋に戻る。

「イリス、来い」

 ……あれ?

『来ないねぇ』

「なんで?契約者が呼び出したら必ず召喚できるんじゃないのか?」

『オイラたちは、契約に従って呼びかけに応えるんだよー』

 ってことは、召喚自体に強制力はないのか?契約に従った強制力があるぐらいで。

 精霊が呼び掛けに応えてくれないこともある?

「俺の召喚に応えられない状況ってことか?」

『おそらく』

「イリス!応えろ!リリーに何があったんだ」

 目の前に、イリスが現れる。

『ただいま、エル』

「おかえり、イリス。リリーに何があったんだ」

『伝言。今すぐ転移の魔法陣で王都に飛んで。アレクが魔法陣を作って待ってる』

「は?」

 なんで、アレク?

「リリーは?」

『リリーも一緒に居るよ。ルイスがやばいんだって』

「ルイスが?」

 ルイスに何かあった?

 それでリリーが俺を呼ぶためにアレクに助けを求めたってことか?

『ボクが聞いたのはそれだけ。とにかく急いでるみたい』

 詳しく聞きたければ来いってことか。

『王都まで飛べるの?』

『未知数だな』

 カミーユに杖を借りよう。

 部屋を出て食堂に向かうと、途中でカミーユとエレインに会う。

「どうした?」

「カミーユ。杖を貸してくれ」

「杖?」

 カミーユが出した杖を受け取る。

「王都に飛ぶ」

「飛ぶ?」

「飛ぶって、まさか……」

 部屋に戻って、転移の魔法陣を描く。

 描いてる途中で、カミーユとエレインが部屋に入って来た。

「ルイスに何かあったらしい。アレクが俺を魔法陣で呼んでるから、王都に飛ぶ。……カミーユ、黒炎とエレインは頼んだぜ」

 魔法陣を描き終わって、カミーユに向かって杖を投げる。

「大剣と盾はどうするんだ?」

「持って行く」

 リュヌリアンとアレクの盾を背負う。

「飛べるのか?」

「わからない」

 魔法陣に手をつく。

「ブレスト、顕現してくれ」

『了解』

 カミーユの雷の精霊か。

「エル、ブレストを連れて行ってくれ。明日呼び出す」

「わかった」

 集中……。

 広範囲過ぎて。わかるのか、これ?

 そうだ。リリー。

 リリーが目印になるはず。

 同じ力……。

「何してるの?エル」

「静かに」

 だめだ。わからない。

 遠過ぎる。

 遠くの位置を把握する方法がわからない。

 砂の精霊が居ればわかったのかもしれないけど……。

 俺には少し難しい。

 ほかに、把握する方法は?

 あれ……。

「スタンピタ・ディスペーリ」

「え?」

 これの意味。結局わからないけど。

 目的地は。

「リリーシア」

『えっ?』

 そして、閉じる言葉。

「メタスタード」

 転移の魔法陣が起動する。

 ……本当に?


 転移する……?


 ここは、アレクの書斎?

「……飛べた」

「エル」

「リリー、アレク」

『エル、平気?』

「あぁ」

 魔力を使った気がしない。なんで?

 いや、それよりも。

「ルイスがどうしたって?」

「錬金術研究所に行こう」

「研究所?」

 ルイスは研究所に居るのか?

 聞くより先に、アレクが書斎の扉を開く。

「ツァレン、出かけるよ」

「御意」

 ツァレンも連れて行くなんて珍しいな。

「ちょっと待て」

 アレクが描いた転移の魔法陣を消して、違う魔法を込めて崩す。

 この魔法陣、誰でも使える可能性があるからな……。

「アレク、変装しなくて良いのかよ」

「変装が必要なのはエルじゃないかな」

「フードを被れば十分だ」

「じゃあ、行こうか」

 アレクがバルコニーに向かう。

 バルコニーから行くなら、リリーは抱えて行かないと。

「わっ」

 俺に抱えられたリリーが、俺の首に腕を絡める。

「ただいま」

「おかえりなさい。あの……?」

 状況が解ってないのか。

「バルコニーから飛ぶんだよ。その方が早いから」

「飛ぶ?」

 バルコニーに向かうと、アレクが先に庭の木に飛び移りながら、城壁の上に向かっている。

 その後に続いて、風の魔法で跳躍する。

「ちゃんと捕まってろよ」

 リリーを抱えたまま、いくつかの木を過ぎて城壁の上へ。

「アレクシス様、おでかけですか?」

 俺が城壁の上に着いてすぐに、ツァレンが到着する。

「内緒にしておいてくれるかな」

「また内緒ですか?」

 まぁ、いつものことだ。

 アレクに続いて歩きながら、王都を見下ろす。

 ……え?

 城の周囲を巡る堀が、凍ってる?

「おい、これは何だ?」

『ボクも気になるんだけど』

「この前、えっと……、八日の日にルイスが堀に落ちた時に、凍ったの」

「ルイスが堀に落ちた?」

「ジニーの帽子が落ちて、それを取ろうとした私をかばって……」

 そういえば、八日に一緒に出掛けるって言ってたな。

 ルイス、リリーを助けてくれたのか。

「堀が凍った原因は不明。誰が凍らせたのかわからないままだ。堀が凍った直後から、謎の病が流行したと報告を受けている」

「謎の病?」

「今、王都で流行っている病だよ」

 王都で流行している病気?

「出かける前は、そんな話し聞いたこともなかったぞ」

「急に流行ったみたいだからね。発汗を促すような具体的な要因、つまり発熱等がないにも関わらず、汗が止まらない病気らしいよ」

「なんだそれ」

 聞いたことのない病気だな。

「それ以外の特徴は?」

「ないね」

「……それ、病気なのか?」

「原因が不明で健常と呼べる状態ではないのだから病気と判断するだろう。研究所では因果関係のありそうな堀の氷を調査しつつ、患者を受け入れて検査や治療を試みていると聞いている。命にかかわる病ではないと報告を受けていたんだけど、その汗の主成分が血液であることをルイスが調べたそうだ」

「血液だって?汗の成分が?」

 つまり、血が流れ続ける病気?

「ルイスは……」

「その報告を兼ねて研究所に行ったものの、昨日から目覚めないらしい。血液を大量に失ったことによる昏睡だろうけれど、実際に見てみないと何とも言えないかな」

 アレクに続いて城壁から飛び降り、風の魔法で着地する。

「エル、降ろして」

 リリーを降ろすと、ツァレンが城壁から降りてきた。

 氷漬けになった堀。何か関係があるのか?

 氷を切り出す作業を行っている人間が何人か居る。

 仮に堀の氷が関係あってルイスが感染したなら……。

 俺が出発した直後から流行ってる病?

「エル、置いてくぞ」

 アレクとツァレンを追って、リリーと一緒に歩く。

「病の発症報告はいつからなんだ?」

「十日頃から、お店に相談に来る人が居たよ。汗が止まらないのは病気なのかって」

「十日から症状が現れ始めてるってことか?」

「症状が現れ始めたのは数日前からって言ってたけど……」

 そうだよな。普通、ただ汗をかいてるだけで病気を疑ったりなんてしない。

 症状が続いて、少し不安になって。医者に行くほどでもないから俺の店に相談に来たんだろう。

 だとしたら、病の正確な発症時期はいつからだ?

 八日より前だとしたら、堀の氷は関係ない。

 ……いや。ちょっと待て。

「リリーとキャロルは感染してないのか?」

「大丈夫だと思う。キャロルは今、ルイスのところに居るはずだよ」

 良かった。

「ルイス、結構前から病気について知ってたみたい。自分が感染してるのも……。十日に来たお客さんにも、新種の病気かもしれないから研究所に調べてもらってって言っていたし、最近、私たちのことも避けてたみたいだから……」

「あの、馬鹿……」

 何やってるんだよ。

 それで自分が倒れたら何の意味もないだろ。


 ※


 錬金術研究所。

 所内では慌ただしく人が走り回っている。

「アっ、アレクシス様っ?」

 アレクに気づいた受付嬢が叫んで、ロビーに居た全員が動きを止める。

「状況を説明してくれるのは誰かな」

「はい!私!私がします!」

「ジニー」

 ジニーが俺たちの前まで走ってくる。

「アレクシス様、ルイスはこっちです!」

 ジニーが俺たちを案内する。

「汗の成分が、血液と全く同じ成分ってルイスが調べてくれたんです。アリシアさんが患者の血液型を全員調べて、重症患者から順に輸血を開始しています」

「アリシアが来てるのか」

「はい。すごく助かってます。あんなに血液に詳しい人、うちには居ませんから」

 そういえば、アリシアはずっと、血について研究していたな。

「輸血って?」

「えっと、血液を失った人へ、同じ血液型の血を投与する治療方法です。重症じゃない人には増血剤を投与して経過を観察しています。今、医療機関に呼びかけて、血液を集めてるところです。おかげで状況はかなり改善されました」

「意識障害の原因は、血液を大量に失ったことによるもので間違いないのかな」

「はい。輸血によって意識障害が回復した人も居ます」

「感染源は?」

「堀の水と考えられています。堀の氷を切り出す作業を行っていた数名が、怪我をした際に感染したみたいなんです」

 ってことは、ルイスは堀に落ちた八日に感染したのか?

「氷の切り出し作業を中断しない理由は?」

「感染経路は必ず傷口です。この病原が必ず血液から侵入することが判明しています。氷を食べても問題ありません」

 問題ないって。……まさか。

「誰か食ったのか?」

「ナルセス教授が、感染経路は血液だけで、病原を飲んでも平気だって証明する為に食べました」

 それで感染したらどうするんだよ。

「ですから、病原に触れても、怪我をしなければ問題ありません。ただ、人から人へ、血液を介した感染が在り得るので、今朝から守備隊に頼んで感染者を研究所に集めてもらっています。でも、病原が何かの特定には至っていないので、病原を含んでいる氷の調査と、感染者の血液の調査を進めているんです」

 それなら、直に病原もわかって薬も開発されるだろう。

『アレク、帰ってちょうだい』

 ユール?

「どういうことかな」

『この病にかかれば死ぬわよぉ?』

「え?」

「なんだって?」

 今の話しをまとめると、治療方法の確立は近いはずだ。

「帰るつもりはないよ」

『困った皇太子ねぇ。あなたの替えはないのよぉ?この国を潰すつもりなのぉ?』

「あの……?」

 治療できない病だって言いたいのか?

 ん?

 ユールが知ってて、ユールが作れない薬の病気?


「ここです」

 ジニーに案内されたのは仮眠室。

 ベッドと流し台のある部屋だ。

 ルイスがベッドに寝ている。ルイスに繋がれている管が、輸血を行っているものか。

「エル……、帰って来てくれたの……?」

 ルイスのそばに居たキャロルが俺の方に走ってくる。

「ただいま、キャロル」

 真っ赤な目で泣いているキャロルを抱きしめる。

「おかえりなさい……。待ってた……」

 ルイスの方を見る。

 顔色は良くない。

「なんだ?この怪我。火傷?」

 ルイスの右手の甲に、酷い傷跡がある。

「薬品の火傷みたい。七日の夜に怪我したみたいなんだけど……」

 七日の夜?

「包帯、私が巻いたの……。その時から、ちっとも良くなってないわ。……病気と関係あるの?」

 おそらく、この傷に病原が触れて感染したんだろう。

「今の時点じゃ何とも言えないな」

「ルイス、薬塗らなかったみたいだよ。何か実験するからって」

「実験?」

「病気のこと、調べてたのかも……」

「ルイス……」

『リリー。ジニーとキャロルを外に連れ出してくれなぁい?』

「キャロル、ルイスの様子を見たいから外で待っててくれるか?」

「ジニー、キャロルをお願いできる?」

「はい」

「エル、ルイスをお願いね?」

「あぁ。まかせておけ」

『ツァレンは外の警備してねぇ。ここ、立ち入り禁止よぉ』

「ツァレン。人払いをしてくれるかい」

「御意」

 キャロル、ジニーを連れて、ツァレンが部屋の外に出る。

『リリーにも出て行って欲しかったんだけどぉ』

「私、一緒に居るよ」

『ふふふ。何を見ても、知らないわよぉ』

 何を始めるんだ?

 ユールが顕現する。

「真空の精霊か」

『エル、あたしはこの病気について詳しいわぁ。今すぐ病気を治す方法も一つだけ知ってる』

『……』

「本当か?」

『でも、これはとても危ない方法なのぉ。治すのはルイスだけって約束してくれるぅ?』

「この病気、蔓延してるんだろ?治療できるなら全員治療した方が良い」

『だめよぉ。約束できないなら、力は貸せないわぁ』

 なんで?

「ユール」

『エル、約束したじゃなぁい?薬を作ってくれるって』

 ユールから頼まれていた薬。

「その薬って、この病気の薬なのか?」

『そうよぉ。あたしにも作れない薬。今の技術なら、きっと作れるわぁ。その為のサンプルを、ルイスから取り出すのぉ』

「病原を取り除けば良くなる病気なのか、これは」

『すぐに良くなるわぁ』

「わかった。ルイスの治療を行おう」

『約束よぉ?他の人にはしないってぇ』

「わかったよ。薬を開発すれば良いんだろ?」

『ふふふ。そういうことぉ。ちょっと準備するからぁ、エルはルイスの傍で待っててねぇ』

 ルイスの傍の椅子に座って、ルイスの蒼白な頬に触れる。

「ルイス……」

 絶対、助けるから。

 ……大丈夫。

 死なせたりなんかしない。

 ルイスを救って。

 必ずこの病の治療方法を確立させる。

 死人なんて絶対に出さない。

 リリーがバケツを持って俺の横に来て、水差しの水をコップに注ぐ。

「エル。……ルイスが感染したの、私のせいなの」

 リリーのせい?

「なんで?」

「私が、堀に落ちた帽子を無理に取ろうとしてなければ、ルイスは……」

 あぁ、そういうことか。さっき言ってたな。

「ルイスはリリーを助けたんだろ?」

「うん」

「リリーが無事で良かった。ルイスが起きたら礼を言わなきゃな」

 リリーを守ってくれてありがとう。ルイス。

「あの……」

「心配しなくても、ルイスは俺が治す。リリーが倒れてたら、俺はここに来れなかったんだ。知らせてくれて感謝してる」

「……うん」

 どうやってここに来れたのかの検証は済んでないけど。

 何の力で飛んだんだ?遺跡の魔法陣と同じ力?

 だったら、どこへでも飛べる魔法陣ってことなんだけど。

 なんか、違う気がするんだよな。

 言葉の意味が解れば、もう少し……。

『アレク、綺麗な短剣持ってなぁい?』

「一度も使ってないって意味なら、あるよ」

 アレクが短剣を俺に渡す。

『流石アレクねぇ。ちなみに今、怪我してる人は居ないわねぇ?』

「あぁ」

「していないよ」

「私も大丈夫」

『じゃあ、みんな離れて』

 アレクとリリーが流し台の方に行く。

 短剣なんて何に使うんだ?

 離れてなきゃいけない理由って?感染の可能性があるから?

『バニラ、手伝ってくれるぅ?』

「バニラ、顕現してくれ」

『了解』

 バニラが顕現する。

「癒しの精霊が必要なら私も貸そう」

 アレクの光の精霊と水の精霊が、バニラの近くで顕現する。

『エル。今から言うことを全部やってねぇ。……まず、ルイスの首を短剣で切るのよぉ』

「は?」

 ユールが切るように示した場所は……。

『それから、血を吸いだすのぉ』

「……何、言ってるんだ?」

『絶対に、血は飲んじゃだめよぉ。バケツに出してねぇ。後はぁ、あたしが補助するわぁ』

「ルイスを殺す気か」

 首に傷なんて。

『救う方法はこれだけ。エル。今、この病を治療できるのはエルだけなのよぉ』

「なんで?」

『あたしと契約してるからぁ』

 治療には真空の精霊の補助が不可欠?

『じゃあ、始めましょうか』

 やるしかないのか。

 呼吸を整えて。

 ルイスの首に短剣を近づける。

「ユール、頼んだぜ」

 そして、首筋を斬る。

 血が溢れる場所に口を近づけて、吸い込む。

 むせ返るような血の匂いが……。

『エル、吐いて』

 すぐそばのバケツに向かって、口の中の血を全部吐きだす。

『まだまだよ』

 また、首の、血に……。

『吐いて』

 吐く……。

 もう一度……。

 血を……?

「……これ、エルは大丈夫なの?」

『吐いて』



『みんな、ルイスを治療してぇ』

『了解』

『エル、全部吐いて、口をゆすいでねぇ』

「ん……」

 もう、終わり?

 机の上にあるコップの水を口に含む。

 味が……。

『だめよ!吐いて!』

「エル!」

 急に背中を叩かれて、口の中のものをバケツに吐く。

 なんで?

『アレク、さっきの、エルに飲ませてくれるぅ?』

 さっきのって?

「エル。飲んでいいよ」

 俺の背を撫でているアレクが、俺に何か飲ませる。

 美味しい。

 そうだ、喉が渇いてたから。

 アレクからコップを受け取って、コップの中身を飲む。

「エル、大丈夫?」

「ん……」

 もっと飲みたい。

 飲んでも、飲んでも、潤されなくて……。

 あれ?この、味?

「……んんっ?」

 気持ち悪い。

 周囲を見回して、流し台を見つけて、流し台まで走って、飲んだものを吐く。

 何、飲ませたんだ、アレクの奴。

 持っているコップを見る。

 違う、これ、ビーカーだ。

 この匂い。

 ショコラ?

 これ、濃いココアじゃないか。

 しかもすごく甘い奴。

 ……気持ち悪い。

 胸焼けが酷い。

 吐いても、吐いてもおさまらない。

 なんで?

 気持ち悪い……。

 っていうか、バケツが傍にあったんだから、バケツに吐いても良かったんだ。

『大丈夫か?エル』

「ん……」

 無理。

 気持ち悪い。

「エル?」

 リリーの声が聞こえて、振り返る。

「リリー」

 リリーを抱きしめる。

「大丈夫?」

 首筋に……。

『エルっ!』

『リリー!』

「!」

 噛みつく。

『馬鹿者!』

 いってぇ……。

 何か強い衝撃を受けて。

 意識が、遠のく……。

 


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